AC/DC(エーシー・ディーシー)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方¶
AC/DC(エーシー・ディーシー)は、1973年にオーストラリアで結成され、半世紀以上にわたりハードロックの頂点に君臨し続ける伝説的バンドです。シンプルかつ強烈なリフとリズムで構成されるサウンドは、アナログレコードとの相性が抜群であり、レコードに針を落とした瞬間から体を揺さぶるようなエネルギーが溢れ出します。本記事では、AC/DCのおすすめアルバムやオリジナル盤の見分け方、中古レコード購入時の注意点をまとめてご紹介します。
AC/DCとは?バンドの概要¶
AC/DCは、スコットランド出身のヤング兄弟、マルコム・ヤング(リズムギター)とアンガス・ヤング(リードギター)を中心に、1973年にオーストラリアのシドニーで結成されました。バンド名は家庭用電化製品に記されていた「AC/DC」(交流/直流)の表記から取られたもので、そのエネルギッシュな音楽性を象徴する名前となっています。
初代ボーカリストのボン・スコットは、野性的でブルージーな歌声とカリスマ性でバンドの黄金期を築き上げました。しかし1980年2月、アルバム制作の最中にボン・スコットが急逝するという悲劇に見舞われます。後任としてブライアン・ジョンソンが加入し、直後にリリースされた『Back in Black』が世界的な大ヒットを記録。バンドは新たな黄金期を迎えました。
リズムセクションを支えるのは、フィル・ラッド(ドラムス)とクリフ・ウィリアムズ(ベース)です。フィル・ラッドの堅実で重厚なビートと、クリフ・ウィリアムズの安定したベースラインが、ヤング兄弟のギターリフを強固に支えています。
AC/DCの音楽的特徴は、徹底したシンプルさにあります。ブルースを基盤としたパワーコード主体のリフ、ストレートなロックンロールのリズム、そして歌いたくなるようなキャッチーなメロディ。複雑なプログレッシブ・ロックやテクニカルなプレイとは対極にありながら、そのシンプルさこそが唯一無二の爆発力を生んでいます。アンガス・ヤングのスクールボーイ姿でのステージパフォーマンスもバンドの象徴として広く知られています。
おすすめアルバム5選¶
1. Back in Black(1980年)¶
ボン・スコットの死という悲劇を乗り越え、新ボーカリストのブライアン・ジョンソンとともに制作された本作は、世界累計5,000万枚以上を売り上げた音楽史上最も売れたアルバムのひとつです。タイトル曲「Back in Black」、「Hells Bells」、「You Shook Me All Night Long」、「Shoot to Thrill」など、全曲がキラーチューンといえる圧巻の内容です。全面ブラックのジャケットは亡きボン・スコットへの追悼を表現しています。
おすすめポイント: AC/DC入門として最適な1枚。レコードで聴くと、マット・ランジのクリアなプロデュースと相まって、ギターリフの一音一音が驚くほど鮮明に響きます。中古相場はUSオリジナル盤(Atlantic SD 16018)で3,000〜8,000円程度、状態の良いものはそれ以上になることもあります。
2. Highway to Hell(1979年)¶
ボン・スコット在籍最後のスタジオアルバムであり、バンドが国際的な成功を手にした決定的作品です。プロデューサーにマット・ランジを迎え、それまでのラフなサウンドに洗練さが加わりました。タイトル曲「Highway to Hell」は、ロック史に残る永遠のアンセムです。「Touch Too Much」「If You Want Blood (You've Got It)」など、ボン・スコットの魅力が存分に発揮された楽曲が並びます。
おすすめポイント: ボン・スコット期の最高傑作として必聴。アナログレコードで聴くと、ボンのハスキーで力強い歌声が生々しく蘇ります。中古相場はオーストラリア盤(Albert Productions APLP 040)で5,000〜15,000円程度。USオリジナル盤は3,000〜7,000円程度です。
3. Let There Be Rock(1977年)¶
バンドの原始的なエネルギーが最も凝縮されたアルバムです。タイトル曲「Let There Be Rock」は9分を超える長尺ナンバーで、アンガス・ヤングの炸裂するギターソロが圧巻です。「Whole Lotta Rosie」「Bad Boy Boogie」など、ライブでの定番曲も多数収録されています。荒削りで飾り気のないサウンドは、まさにロックンロールの原点を体現しています。
おすすめポイント: 初期AC/DCの魅力を堪能できる名盤。レコードならではの温かみのある音で、ブルースに根ざしたリフの迫力を体感できます。中古相場はオーストラリア盤(Albert Productions APLP 022)で8,000〜20,000円程度。USオリジナル盤(ATCO SD 36-151)は2,000〜5,000円程度で比較的入手しやすい価格帯です。
4. Powerage(1978年)¶
ファンやミュージシャンの間で「最も過小評価された名盤」として高い支持を得ている作品です。「Riff Raff」「Sin City」「Down Payment Blues」など、ブルースフィーリング溢れるギターリフとボン・スコットの渾身のボーカルが光ります。派手なヒットシングルこそないものの、アルバム全体の完成度は非常に高く、通好みの1枚です。
おすすめポイント: バンドの音楽的深みを知りたい方に最適。レコードで通して聴くことで、アルバム全体の流れと構成の妙を味わえます。中古相場はオーストラリア盤で5,000〜12,000円程度。USオリジナル盤は2,000〜5,000円程度です。
5. For Those About to Rock We Salute You(1981年)¶
『Back in Black』の大成功を受けて制作された本作は、タイトル曲のキャノン砲(大砲)のSEが印象的なアルバムです。「For Those About to Rock (We Salute You)」はライブのクライマックスで演奏される定番曲となりました。「Inject the Venom」「Evil Walks」など、重厚感のあるサウンドが全編にわたって展開されます。
おすすめポイント: ブライアン・ジョンソン期の力強さを堪能できる1枚。レコードの広いダイナミックレンジで聴くと、大砲のSEの迫力が格別です。中古相場はUSオリジナル盤(Atlantic SD 11111)で2,000〜5,000円程度と比較的手頃です。
オリジナル盤の見分け方¶
AC/DCのオリジナル盤を見分けるうえで最も重要なのは、初期作品がオーストラリアのAlbert Productionsからリリースされているという点です。海外盤との違いを理解することが、コレクションの第一歩になります。
オーストラリア盤(Albert Productions): 1970年代の初期アルバム(『High Voltage』から『Powerage』まで)は、オーストラリアのAlbert Productionsからリリースされたものが真のオリジナル盤です。ラベルにはAlbert Productionsのロゴが入っており、カタログ番号は「APLP」で始まります。オーストラリア盤は国際盤とトラックリストが異なる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。特に初期2作『High Voltage』と『T.N.T.』は、オーストラリア盤と海外盤で収録曲が大きく異なります。
UKおよびUS盤(Atlantic / ATCO): 国際市場向けにはAtlantic RecordsまたはATCOからリリースされました。UK盤のオリジナルプレスは、赤と緑のAtlanticラベルが特徴です。US盤はATCO(初期)またはAtlanticレーベルからのリリースで、マトリクス番号やラベルの細部で初回プレスかどうかを判別できます。
マトリクス番号の確認: レコード盤のデッドワックス(ラベル周辺の無音溝部分)に刻印されたマトリクス番号を確認しましょう。オーストラリア盤ではAlbert Productionsのプレス情報が刻まれています。US盤では、プレス工場を示す刻印(SP:Specialty Records、MO:Monarch Recordsなど)が初回プレスを判別する手がかりになります。
ジャケットの確認: オリジナル盤はジャケットの紙質が厚く、印刷品質も高い傾向があります。再発盤やリイシュー盤では、紙質が薄くなったり、色味が若干異なったりすることがあります。また、バーコードの有無も判別ポイントのひとつです。初期のオリジナル盤にはバーコードが印刷されていません。
中古レコードの選び方と注意点¶
AC/DCのレコードは世界中で大量にプレスされているため、中古市場でも比較的入手しやすいアーティストです。ただし、状態やプレスの違いによって価格と音質に大きな差があるため、購入時にはいくつかのポイントを押さえておきましょう。
盤質を最優先に: AC/DCの音楽は、ギターリフとドラムのアタック感が命です。盤面にキズやスレがあると、その迫力が損なわれてしまいます。中古レコードショップで購入する場合は、盤面の状態を丁寧に確認し、可能であれば試聴させてもらいましょう。グレーディングでVG+以上のものを選ぶことをおすすめします。
プレス国による音質の違い: AC/DCのレコードは、プレス国によって音質傾向が異なります。オーストラリア盤はバンド本来の意図に最も近いとされ、厚みのある音質が特徴です。UK盤はクリアで解像度の高い音、US盤はやや低音寄りのパワフルなサウンドになる傾向があります。日本の国内盤は、帯付きであればコレクターズバリューも高く、丁寧なプレス品質で安定した音質を楽しめます。
再発盤・リマスター盤の活用: オリジナル盤にこだわらない場合は、2003年や2009年のリマスター盤、さらに近年の180g重量盤リイシューも良い選択肢です。特に180g重量盤は、現代のオーディオ環境で再生することを前提にリマスタリングされており、手頃な価格で高品質なサウンドを楽しむことができます。
ジャケットとインサートの確認: AC/DCのアルバムには、アンガス・ヤングのスクールボーイ姿やバンドのロゴなど、象徴的なアートワークが使われています。ジャケットの状態もコレクション価値に大きく影響しますので、リングウェアやシームスプリット(背割れ)がないかも確認しましょう。『Highway to Hell』や『Back in Black』にはインナースリーブにメンバーの写真や歌詞が印刷されているものがあり、これらの有無も確認ポイントです。
価格相場の目安: AC/DCのレコードは、人気作でもUS盤やUK盤であれば2,000〜8,000円程度で良質な盤を見つけることができます。オーストラリアのAlbert Productionsオリジナル盤は希少性が高く、状態が良いものは10,000〜30,000円以上になることもあります。Discogsなどのデータベースで事前に相場を調べておくと、安心して購入できるでしょう。
まとめ¶
AC/DCは、50年以上にわたりハードロックの王道を貫き続ける不滅のバンドです。シンプルでありながら圧倒的なパワーを持つサウンドは、アナログレコードで聴くことでその真価が一層際立ちます。『Back in Black』『Highway to Hell』を筆頭に、どのアルバムもレコードに針を落とした瞬間から全身にエネルギーが伝わる体験を味わえます。
オリジナル盤を追求するならば、オーストラリアのAlbert Productionsプレスが最も価値が高く、初期作品はぜひチェックしてみてください。一方、US盤やUK盤、リイシュー盤でも十分に素晴らしい音質を楽しめますので、まずは気になるアルバムを1枚手に取ってみることをおすすめします。
レコードのA面に針を落とし、スピーカーから飛び出すアンガス・ヤングのギターリフに身を委ねる。AC/DCのレコードには、ロックンロールの原初的な興奮がそのまま刻み込まれています。
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