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Alice in Chains(アリス・イン・チェインズ)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方

シアトル・グランジシーンの「四天王」の一角として、Nirvana、Pearl Jam、Soundgardenと並び称されるAlice in Chains。ヘヴィメタルの重厚さとグランジの陰鬱さを融合させた唯一無二のサウンドは、1990年代のロックシーンに深い爪痕を残しました。レイン・ステイリーとジェリー・カントレルによる不穏なハーモニーは、聴く者の心を揺さぶり続けています。本記事では、Alice in Chainsの概要からおすすめアルバム5選、オリジナル盤の見分け方、中古レコード購入時の注意点までを詳しく解説します。アナログレコードでこそ味わえる彼らの音楽の深淵に、ぜひ足を踏み入れてみてください。

バンドの概要

Alice in Chainsは、1987年にワシントン州シアトルで結成されました。レイン・ステイリー(ボーカル)、ジェリー・カントレル(ギター・ボーカル)、マイク・スター(ベース)、ショーン・キニー(ドラムス)という4人で活動を開始し、1990年にColumbia Recordsからデビューアルバム『Facelift』をリリースします。「Man in the Box」のヒットによりバンドは一躍注目を浴び、グランジムーブメントの主要バンドとしての地位を確立しました。

他のグランジバンドがパンクロックの影響を強く受けていたのに対し、Alice in ChainsはBlack SabbathやMetallicaといったヘヴィメタルからの影響を隠さず、それをグランジの枠組みの中で独自に昇華しました。最大の特徴は、レイン・ステイリーとジェリー・カントレルによるツインボーカルのハーモニーです。不協和音すれすれの緊張感を帯びた二人の声の重なりは、薬物依存や孤独、死といった暗いテーマを扱う歌詞と相まって、他のどのバンドにも真似できない独特の世界観を生み出しました。

1993年にベーシストがマイク・アイネズに交代した後も、バンドは精力的に活動を続け、『Dirt』『Alice in Chains』といった名盤を世に送り出します。しかし、レイン・ステイリーの深刻な薬物依存により活動は次第に困難となり、1996年のMTV Unplugged出演を最後にバンドは事実上の活動休止状態に入りました。2002年にレイン・ステイリーが他界し、一つの時代が終わりを告げます。

2006年、ウィリアム・デュヴァルを新ボーカルに迎えてバンドは再始動し、『Black Gives Way to Blue』(2009年)、『The Devil Put Dinosaurs Here』(2013年)、『Rainier Fog』(2018年)をリリース。オリジナルメンバーの精神を継承しつつ、新たな章を刻み続けています。

おすすめアルバム5選

1. Dirt (1992)

Alice in Chainsの最高傑作として広く認められている2ndアルバムです。プロデューサーにデイヴ・ジャーデンを迎え、Columbia Recordsからリリースされました。「Rooster」「Would?」「Down in a Hole」「Them Bones」「Angry Chair」など、バンドの代表曲がこれでもかと詰め込まれた圧巻の内容です。

薬物依存の苦しみを赤裸々に綴った歌詞と、スラッジメタル的な重さを持つリフの応酬は、レコードで聴くとその迫力が一層際立ちます。アナログ盤ではギターのダウンチューニングの低音が豊かに響き、デジタルでは感じにくい音の厚みを体感できます。

おすすめポイント: グランジとヘヴィメタルの理想的な融合。全曲が名曲と呼べる完成度の高さ。レイン・ステイリーのボーカルが最も充実した時期の記録です。

中古相場: オリジナル米盤(Columbia C 52475)は状態の良いもので8,000〜15,000円程度。180g重量盤リイシューは3,000〜5,000円前後で入手可能です。

2. Facelift (1990)

記念すべきデビューアルバム。「Man in the Box」「We Die Young」「Bleed the Freak」「Sea of Sorrow」など、初期衝動が詰まった楽曲が並びます。Nirvanaの『Nevermind』に先駆けてリリースされており、グランジをメインストリームに押し上げた先駆的作品の一つと言えます。

デビュー作ならではの荒削りなエネルギーと、すでに完成されていたツインボーカルのハーモニーが聴きどころです。レコードで聴くと、録音のライブ感がよりダイレクトに伝わり、バンドの初期の勢いを追体験できます。

おすすめポイント: グランジの黎明期を記録した貴重な一枚。「Man in the Box」のトーキングボックスを使ったイントロは、アナログの太い音で聴くと鳥肌ものです。

中古相場: オリジナル米盤(Columbia C 46075)は5,000〜10,000円程度。比較的流通量が多いため、状態の良いものを選びやすい部類です。

3. Alice in Chains (1995)

セルフタイトルの3rdアルバムで、通称「トライポッド」(三本足の犬のジャケットアートに由来)とも呼ばれています。前作『Dirt』よりもさらにダークでスロウな楽曲が多く、「Grind」「Heaven Beside You」「Over Now」「Again」など、絶望と諦念が滲む名曲が収録されています。

制作時、バンドメンバー間のコミュニケーションは困難を極めていたと言われていますが、そのテンションがかえって作品に異様な緊張感と美しさをもたらしました。レコードで聴くと、ダークアンビエント的な音の奥行きとレイヤーの繊細さが際立ちます。

おすすめポイント: バンドの最も実験的で内省的な作品。2枚組LPならではの没入感があり、アルバム全体を通して聴くことで真価を発揮します。

中古相場: オリジナル米盤(Columbia C2 67248)は2枚組のため、10,000〜20,000円とやや高額。リイシュー盤は4,000〜7,000円程度です。

4. Jar of Flies (1994)

全7曲収録のEP作品ですが、EPとして初めてビルボード200の1位を獲得した歴史的なリリースです。「No Excuses」「I Stay Away」「Nutshell」など、アコースティックを基調とした楽曲が並び、バンドのヘヴィな側面とは異なる繊細な表情を見せてくれます。

アナログ盤で聴くと、アコースティックギターの響きやストリングスの温かみが格別です。わずか1週間で書き上げられたとは思えないほど完成度が高く、Alice in Chainsの楽曲の幅広さを証明する一枚となっています。

おすすめポイント: 短いながらも完璧な構成。静謐でありながら深い感情が宿った楽曲群は、レコードの親密な音場で聴くのに最適です。

中古相場: オリジナル米盤は6,000〜12,000円程度。EP扱いのため流通量がアルバムより少なく、良好な状態のものは見つけにくい傾向があります。

5. MTV Unplugged (1996)

1996年4月10日に収録されたアコースティックライブ盤。レイン・ステイリーの生前最後の公式パフォーマンスを記録した、歴史的にも非常に重要な作品です。「Nutshell」「Down in a Hole」「Rooster」「Would?」「Over Now」など、バンドの代表曲がアコースティックアレンジで演奏されています。

痩せ細り、声にも衰えが見えるレイン・ステイリーが、それでもなお圧倒的な存在感で歌い上げる姿は、音源からも伝わってきます。レコードで聴くと、会場の空気感やオーディエンスの息遣いまでもが伝わり、その場に居合わせたかのような臨場感を味わえます。

おすすめポイント: 音楽史における貴重な記録。バンドの楽曲がアコースティック編成でも色褪せない強度を持っていることを証明した一枚です。

中古相場: オリジナル盤(Columbia C2 67703)は10,000〜18,000円程度。近年のリイシュー盤は3,000〜6,000円前後で入手可能です。

オリジナル盤の見分け方

Alice in Chainsのオリジナル盤を見分けるには、以下のポイントを押さえておきましょう。

レーベルとカタログナンバー

初期4作品(『Facelift』『Sap』『Dirt』『Jar of Flies』)および『Alice in Chains』『MTV Unplugged』は、いずれもColumbia Recordsからリリースされています。オリジナル米盤にはColumbiaのロゴが印刷され、各作品固有のカタログナンバーが付与されています。

  • Facelift: Columbia C 46075
  • Dirt: Columbia C 52475
  • Jar of Flies / Sap: Columbia C2 57528(2in1再発もあるため注意)
  • Alice in Chains: Columbia C2 67248
  • MTV Unplugged: Columbia C2 67703

カタログナンバーがこれらと異なる場合は、リイシュー盤や海外プレスの可能性があります。

マトリクス番号の確認

レコード盤のランアウト・グルーヴ(最内周の無音部分)に刻印されたマトリクス番号は、プレス工場や製造時期を示す重要な情報です。オリジナル盤は初回プレス特有のマトリクスを持っており、リイシュー盤とは異なります。購入前にDiscogsなどのデータベースで該当するマトリクス情報を照合することをおすすめします。詳しい用語については用語集もご参照ください。

ジャケットと付属品

オリジナル盤のジャケットは、紙の質感や印刷の精度がリイシュー盤より優れている場合が多いです。特に『Dirt』のジャケットは、オリジナル盤では色の深みや質感が異なります。インナースリーブや歌詞カード、ポスターなどの付属品が揃っているかどうかも、オリジナル盤を判別する手がかりになります。

プレス国の確認

Alice in Chainsは米国のバンドであり、Columbia Recordsの米盤がファーストプレスとなります。欧州盤やカナダ盤など、各国でのプレスも存在しますが、コレクターが最も重視するのは米国オリジナル盤です。レーベル面の製造国表記やバーコードの体系を確認しましょう。

中古レコードの選び方と注意点

Alice in Chainsの中古レコードを購入する際には、以下の点に注意してください。

盤のコンディションを最優先に

中古レコードの音質は盤の状態に大きく左右されます。スクラッチ、反り、汚れがないかを目視で確認し、可能であれば試聴してから購入しましょう。Alice in Chainsの楽曲は静かなパートと激しいパートのダイナミクスが大きいため、傷があるとノイズが目立ちやすい傾向があります。グレーディング基準を理解した上で、VG+以上のものを選ぶことをおすすめします。

オリジナル盤とリイシュー盤の使い分け

コレクションとしての価値を重視するならオリジナル盤を、音質と手軽さを重視するならリイシュー盤を選ぶのが賢明です。近年リリースされた180g重量盤のリイシューは、リマスタリングにより音質が向上しているものもあり、日常的に聴く用途には最適です。一方、オリジナル盤にはリリース当時のマスタリングが反映されており、90年代の空気感をそのまま味わえるという魅力があります。

価格相場を事前にリサーチ

Alice in Chainsのレコードは人気が高く、特にオリジナル盤は年々価格が上昇傾向にあります。Discogsやヤフオクなどで事前に相場を確認し、適正価格かどうかを見極めてから購入しましょう。相場から大きく外れた価格で出品されているものは、状態に問題があるか、逆に不当に高額な場合もあるため注意が必要です。

偽物・ブートレグへの警戒

グランジの人気バンドであるため、非公式のブートレグ盤や海賊盤が流通していることがあります。正規盤には必ずColumbia Recordsのロゴとカタログナンバーが記載されています。オンラインで購入する場合は、信頼できる販売者の評価や返品ポリシーを事前に確認してください。実店舗であれば、信頼できるレコードショップを利用することがトラブル回避の近道です。

カラーヴァイナルと限定盤

近年のリイシューでは、カラーヴァイナルや限定エディションが数多くリリースされています。これらはコレクターズアイテムとしての魅力がありますが、必ずしも音質面で通常盤より優れているわけではありません。音質重視であれば通常の黒盤を、コレクション重視であれば限定盤を選ぶとよいでしょう。

まとめ

Alice in Chainsは、グランジというムーブメントの中でも最もヘヴィでダークな音楽性を持ち、唯一無二の存在感を放つバンドです。レイン・ステイリーとジェリー・カントレルのツインボーカルが織りなす不穏なハーモニー、スラッジメタルの影響を受けた重厚なリフ、そして人間の暗部を見つめた歌詞は、聴く者に深い感情的体験をもたらします。

『Dirt』『Facelift』『Alice in Chains』『Jar of Flies』『MTV Unplugged』といった名盤は、いずれもレコードで聴くことでその真価が発揮されます。アナログならではの温かみと重低音の迫力が、バンドの音楽に新たな次元を加えてくれるでしょう。

オリジナル盤のカタログナンバーやマトリクス情報を確認し、盤質のグレーディングを理解した上で、信頼できる販売店から入手することが、満足のいくレコード体験への第一歩です。これからAlice in Chainsのレコードコレクションを始める方は、まず『Dirt』のリイシュー盤から手に取ってみてはいかがでしょうか。グランジの暗黒面に潜む美しさを、ぜひアナログの音で体感してください。


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