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Buzzcocks(バズコックス)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方

1976年、マンチェスターで産声を上げたBuzzcocksは、パンクロックの荒々しいエネルギーに甘く切ないポップメロディを融合させた先駆的なバンドです。Sex PistolsThe Clashがパンクの政治性や反抗精神を前面に押し出したのに対し、Buzzcocksは恋愛の苦悩や孤独、日常の焦燥感をテーマに据え、2〜3分のコンパクトな楽曲に凝縮しました。Pete Shelleyの書くメロディは時代を超えて色褪せることなく、後のパワーポップやインディーポップに計り知れない影響を与えています。本記事では、Buzzcocksのバンド概要からおすすめアルバム、オリジナル盤の見分け方、中古レコード購入時の注意点まで、アナログ盤で楽しむための情報を網羅的にお届けします。

Buzzcocksとは?バンドの概要

Buzzcocksは1976年、マンチェスターでPete Shelley(ヴォーカル/ギター)とHoward Devoto(ヴォーカル)を中心に結成されました。結成のきっかけは、1976年6月4日にマンチェスターのレッサー・フリー・トレード・ホールで行われたSex Pistolsの伝説的なライブです。この公演には後にJoy Divisionを結成するメンバーや、The Fallのマーク・E・スミスも観客として居合わせており、マンチェスターの音楽シーンを一変させた歴史的な夜でした。

Steve Diggle(ベース、後にギター)とJohn Maher(ドラムス)が加わり、バンドは急速に形を成していきます。1977年1月には自主制作EP「Spiral Scratch」をNew Hormones レーベルからリリースしました。これはイギリスのパンクシーンにおける最初期のDIYリリースの一つであり、インディペンデント・レーベルの先駆けとして音楽史に刻まれています。わずか1,000枚のプレスでしたが、瞬く間に完売し、パンクのDIY精神を体現する象徴的な作品となりました。

Howard Devotoは「Spiral Scratch」リリース直後にバンドを脱退し、後にMagazineを結成します。Devoto脱退後、Pete Shelleyがメインソングライターおよびフロントマンとしてバンドを牽引することになります。Shelleyの書く楽曲は、パンクのスピードと攻撃性を保ちながらも、The Beatlesやフィル・スペクター的なポップセンスを兼ね備えた独特のものでした。恋愛における不安や葛藤、性的アイデンティティへの問いかけなど、当時のパンクシーンでは異色のテーマを扱い、「Ever Fallen in Love (With Someone You Shouldn't've)」に代表される名曲の数々を生み出しました。

1977年にUnited Artists Recordsと契約し、メジャーデビューを果たします。1977年から1979年にかけて3枚のスタジオアルバムと数多くのシングルをリリースし、パンクシーンの最前線で活躍しました。しかし、1981年にバンドは解散。Pete Shelleyはソロ活動に移行しますが、1989年にオリジナルメンバーで再結成を果たし、以降も精力的に活動を続けました。2018年12月6日、Pete Shelleyが63歳で急逝するという悲報がファンに衝撃を与えましたが、Buzzcocksの音楽はポストパンクニューウェイブ、インディーロック、パワーポップなど、幅広いジャンルのアーティストに今なお影響を与え続けています。

おすすめアルバム5選

1. Another Music in a Different Kitchen (1978)

Buzzcocksのデビューアルバムにして、パンクポップの原型を確立した記念碑的作品です。United Artistsからリリースされ、UKアルバムチャートで15位を記録しました。プロデューサーはMartin Rushentで、パンクの生々しいエネルギーを損なうことなく、各楽器の分離が明瞭なクリアなサウンドに仕上げています。

冒頭の「Fast Cars」から疾走感全開で、「No Reply」「I Don't Mind」「Autonomy」と、2分台のキャッチーな楽曲が次々と繰り出されます。Pete Shelleyの甘くナイーブなヴォーカルとSteve Diggleのエッジの効いたギター、John Maherの正確無比なドラムが一体となり、パンクでありながらポップという独自の世界を切り拓きました。ジャケットはショッピングバッグの写真で、消費社会への皮肉が込められています。初回プレスにはインナースリーブにバンドのプロモーション写真が含まれています。

2. Love Bites (1978)

デビューアルバムからわずか半年後にリリースされた2ndアルバムです。前作の勢いをそのままに、楽曲のクオリティはさらに研ぎ澄まされています。「Ever Fallen in Love (With Someone You Shouldn't've)」は、Buzzcocksの代表曲であると同時に、パンクロック全体を代表する名曲の一つです。切迫感のあるギターリフとShelleyの切ない歌声が織りなすこの曲は、UKシングルチャートで12位を記録しました。

他にも「Just Lust」「Nostalgia」「Walking Distance」など、恋愛の苦悩と日常の焦燥を3分以内に凝縮した楽曲が並びます。Martin Rushentのプロダクションはさらに洗練され、パンクの荒々しさとポップの甘美さが絶妙なバランスで共存しています。レコードで聴くと、Steve Diggleのギターの歪みとShelleyのクリーンなヴォーカルのコントラストが際立ち、スピーカーから溢れ出すエネルギーを存分に味わえます。

3. A Different Kind of Tension (1979)

3rdアルバムにして、Buzzcocksの最も実験的な作品です。前2作のストレートなパンクポップ路線に加え、より複雑な曲構成やシンセサイザーの導入など、音楽的な幅を広げようとする意欲が随所に感じられます。「You Say You Don't Love Me」「I Believe」は従来通りのキャッチーなパンクポップですが、タイトル曲「A Different Kind of Tension」やアルバム後半の楽曲では、不協和音やテンポチェンジを大胆に取り入れています。

パンクの枠を超えようとするバンドの野心と、それに伴う緊張感がアルバム全体を貫いており、タイトルの「異なる種類の緊張」はバンドの当時の状況を象徴しています。商業的には前2作ほどの成功は収められませんでしたが、音楽的な深みと実験精神はコアなファンから高く評価されています。オリジナル盤はコレクター市場でも評価が高まっている一枚です。

4. Spiral Scratch EP (1977)

バンドの原点であり、イギリスのDIYパンク史における最重要アイテムの一つです。New Hormonesレーベルから自主制作でリリースされた7インチEPで、「Breakdown」「Time's Up」「Boredom」「Friends of Mine」の4曲を収録しています。Howard Devotoがヴォーカルを務めており、Shelley期とは異なる荒削りな魅力があります。

特に「Boredom」はパンクアンセムとして広く認知されており、退屈な日常への怒りをシンプルなリフに叩きつけた痛快な楽曲です。初回プレスの1,000枚はすぐに売り切れ、後に追加プレスが行われましたが、初回盤は現在非常に高値で取引されています。パンク精神の結晶ともいえるこのEPは、レコードコレクターにとって垂涎のアイテムです。

5. Singles Going Steady (1979)

厳密にはコンピレーション盤ですが、Buzzcocksを語る上で欠かすことのできない必聴盤です。1977年から1979年にかけてリリースされたシングルのA面・B面を時系列順に収録しており、「Orgasm Addict」「What Do I Get?」「Ever Fallen in Love」「Promises」「Everybody's Happy Nowadays」「Harmony in My Head」など、バンドの全キャリアを代表する楽曲が網羅されています。

パンクバンドのベスト盤としては史上最高峰との呼び声も高く、全16曲が捨て曲なしの圧巻の内容です。アメリカでは本作がBuzzcocksの実質的な入門盤として親しまれており、レコードコレクションの最初の一枚としても最適です。オリジナルはI.R.S. Recordsからアメリカでリリースされ、後にUK盤も発売されました。

オリジナル盤の見分け方

Buzzcocksのレコードは、リリース時期やレーベルによって複数のバリエーションが存在します。ここでは主要作品のオリジナル盤を見分けるための重要なポイントを解説します。

Spiral Scratch EP

New Hormones オリジナル盤の特徴:

  • カタログナンバー: ORG 1
  • レーベル: New Hormones(手作り感のあるデザイン)
  • 初回プレス: 1,000枚限定、1977年1月リリース
  • ジャケット: 白黒のフォトコピー風スリーブ
  • マトリクス: 手書き刻印

初回プレスと追加プレスではラベルデザインに若干の違いがあり、初回盤はより素朴な印刷です。後年にはさまざまなレーベルから再発されていますが、New HormonesのORG 1番号を持つものがオリジナルです。初回1,000枚は極めて希少で、状態の良いものは高額で取引されます。

Another Music in a Different Kitchen

United Artists UK オリジナル盤の特徴:

  • カタログナンバー: UAG 30159
  • レーベル: United Artists(UA)のブルーとシルバーのラベルデザイン
  • マトリクス: 初回プレスは「A-1U/B-1U」など若い番号
  • インナースリーブ: バンドのプロモーション写真を掲載した専用インナー付き
  • ジャケット: ショッピングバッグの写真、光沢仕上げ

後に Liberty や EMI 傘下で再プレスされたものはラベルデザインが異なるため、UA時代のブルー/シルバーラベルであることが最も確実な判別ポイントです。

Love Bites

United Artists UK オリジナル盤の特徴:

  • カタログナンバー: UAG 30197
  • レーベル: United Artists のブルー/シルバーラベル
  • マトリクス: 初回プレスの若い番号を確認
  • ジャケット: Malcolm Garrettによるタイポグラフィデザイン

Buzzcocksのジャケットデザインを手がけたMalcolm Garrettは、Factory RecordsにおけるPeter Savilleと同様に、パンク/ポストパンク時代を代表するグラフィックデザイナーです。オリジナル盤のジャケットは印刷品質が高く、再発盤との色味の違いで判別できる場合があります。

Singles Going Steady

本作はアメリカのI.R.S. Recordsから最初にリリースされたため、US盤がオリジナルとなります。

I.R.S. Records US オリジナル盤の特徴:

  • カタログナンバー: SP 001
  • レーベル: I.R.S. Records のロゴ
  • 1979年リリース
  • ジャケット: バンドメンバーの写真を使ったデザイン

UK盤は後にUnited Artists / Liberty からリリースされましたが、こちらも初期プレスはコレクター価値があります。

中古レコードの選び方と注意点

Buzzcocksのレコードを中古市場で探す際に知っておきたいポイントをまとめます。

コンディションの確認

パンクロックのレコードは、当時のリスナーによって繰り返し激しく再生されたものが多く、盤面のスクラッチやノイズが目立つものが少なくありません。購入前には盤質のグレーディング(用語集参照)を必ず確認しましょう。VG+(Very Good Plus)以上の盤質であれば、再生時のノイズは最小限に抑えられ、Buzzcocksの楽曲が持つスピード感とメロディの美しさを十分に楽しめます。

ジャケットのコンディションも重要です。Malcolm Garrettによるグラフィックデザインはバンドの世界観と密接に結びついており、ジャケットの状態が良好な個体は価値が高くなります。リングウェアや角の潰れ、背割れなどがないか確認してください。

再発盤という選択肢

オリジナル盤にこだわらなければ、再発盤でも十分に高音質でBuzzcocksの音楽を堪能できます。特に近年の180g重量盤リイシューはリマスタリングが施されており、音質面では優れている場合もあります。音楽を純粋に楽しむ目的であれば、コンディションの良い再発盤を選ぶのも賢明な判断です。コレクターズアイテムとしての価値を重視するか、リスニング体験を優先するかで、選ぶべき盤は変わってきます。

価格相場の把握

Buzzcocksのレコードの価格は、作品やプレスによって大きく異なります。「Spiral Scratch」の初回プレスは数万円以上の高値で取引される一方、United Artists期のスタジオアルバムのオリジナル盤は比較的手頃な価格帯で入手可能です。「Singles Going Steady」も流通量が多いため、状態の良いものが妥当な価格で見つかることがあります。DiscogsやeBayの過去の取引履歴を参考に、適正な価格を把握してから購入に臨むことをおすすめします。

シングル盤の魅力

Buzzcocksはシングルバンドとしても高い評価を受けており、7インチシングルの収集は大きな楽しみの一つです。「Orgasm Addict」「What Do I Get?」「Ever Fallen in Love」「Promises」「Everybody's Happy Nowadays」「Harmony in My Head」など、名シングルが多数存在します。ピクチャースリーブ付きの7インチは、Malcolm Garrettのデザインワークを小さなキャンバスで楽しめる魅力的なコレクターズアイテムです。レコードの購入先については、信頼できるショップやオンラインストアの選び方を別記事で解説していますので、あわせてご参照ください。

プレス国による違い

UK盤がオリジナルですが、日本盤も見逃せない存在です。日本盤には帯や日本語ライナーノーツが付属しており、プレス品質も高いため、リスニング用としては優れた選択肢です。帯付きの日本盤はコレクター市場でも一定の人気があり、特に「Love Bites」や「Another Music in a Different Kitchen」の帯付き美品は希少性が高まっています。

まとめ

Buzzcocksは、パンクロックにポップメロディの美学を持ち込んだ先駆者として、音楽史に揺るぎない地位を確立したバンドです。Pete Shelleyが紡いだ楽曲は、恋愛の切なさ、日常への苛立ち、自己への問いかけといった普遍的なテーマを、2〜3分の完璧なポップソングに凝縮しています。その影響はパワーポップ、インディーポップ、オルタナティブロックと多岐にわたり、後続の無数のバンドにインスピレーションを与え続けています。

レコードコレクターにとって、Buzzcocksの作品はパンクポップの歴史を手元に収める喜びを与えてくれます。「Spiral Scratch」のDIY精神が詰まった7インチEP、United Artists期の3枚のスタジオアルバム、そしてシングル群の数々は、アナログレコードならではの温かみと迫力でバンドの魅力を伝えてくれます。Malcolm Garrettのアートワークを12インチサイズで楽しみながら、ターンテーブルに針を落とす瞬間は、1970年代マンチェスターのパンクシーンを追体験する贅沢なひとときとなるでしょう。

まずは「Singles Going Steady」や「Love Bites」の手頃な再発盤から始めて、Buzzcocksの世界に触れてみてください。そこから気に入った作品のオリジナル盤を少しずつ揃えていく楽しみは、レコード収集の醍醐味そのものです。


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