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Can(カン)- クラウトロックの最高峰バンドとレコード収集ガイド

1960年代末にドイツ・ケルンで結成されたCanは、クラウトロックというジャンルの枠を超えて、現代音楽史に不朽の足跡を残した伝説的バンドです。実験音楽の先駆者でありながら、グルーヴ感あふれるサウンドは多くのアーティストに影響を与え続けています。本記事では、Canの魅力とレコード収集における実践的な知識をお届けします。

アーティストの概要

Canは1968年、クラシック音楽のバックグラウンドを持つホルガー・シューカイ(キーボード)とイルミン・シュミット(キーボード)、ジャズドラマーのヤキ・リーベツァイト、ベーシストのホルスト・ブランド、そしてギタリストのミヒャエル・カローリによって結成されました。彼らの音楽はクラウトロックの代表格として知られていますが、その実験性はジャンルの枠組みを遥かに超えています。

バンドの大きな転機となったのが、1970年に加入した日本人ヴォーカリスト・ダモ鈴木の存在です。彼の即興的で呪術的なヴォーカルスタイルは、Canのサウンドに神秘性と予測不可能性をもたらし、バンドの黄金期を築きました。ダモ鈴木在籍時の1971年から1973年にかけては、Canの最も創造的で革新的な時期とされています。

Canの音楽的特徴は、長尺の即興演奏、反復的なリズムパターン、テープ編集技術の積極的な活用にあります。彼らのアプローチは後のポストパンク、ニューウェーブ、エレクトロニカ、さらにはRadioheadのような現代のアルタナティブロックにまで影響を与えています。

おすすめアルバム5選

1. Tago Mago(1971年)

Canの最高傑作として名高い2枚組アルバムです。18分を超える「Halleluhwah」での催眠的なグルーヴ、「Aumgn」「Peking O」における前衛的な音響実験は、ロック音楽の可能性を極限まで押し広げました。ダモ鈴木のヴォーカルが最も輝きを放った作品であり、クラウトロックの金字塔として今なお語り継がれています。

2. Ege Bamyasi(1972年)

前作の実験性を保ちながら、よりポップでアクセスしブルなサウンドを追求した傑作です。シングルカット曲「Spoon」は映画『Das Messer』のテーマ曲として使用され、ドイツでヒットしました。「Vitamin C」のファンキーなグルーヴや、「Soup」の浮遊感あふれるサウンドスケープは、Canの多彩な音楽性を示しています。

3. Future Days(1973年)

ダモ鈴木が参加した最後のスタジオアルバムであり、バンドの音楽性が最も洗練された作品です。タイトル曲「Future Days」は10分を超える穏やかで瞑想的なサウンドで、後のアンビエントミュージックやポストロックに多大な影響を与えました。環境音楽的な要素が強まり、Canの新たな方向性を示した重要作です。

4. Monster Movie(1969年)

Canのデビューアルバムには、20分を超える「Yoo Doo Right」が収録されており、バンドの実験精神が既に全開です。当時のヴォーカリストはマルコム・ムーニーで、彼のシャウト系のヴォーカルはダモ鈴木とは異なる荒々しさを持っています。プリミティブでありながら洗練されたサウンドは、クラウトロックの原点を体感できる貴重な作品です。

5. Soundtracks(1970年)

映画音楽を集めたコンピレーション的な位置づけですが、Canの多面性を知る上で欠かせない1枚です。ダモ鈴木とマルコム・ムーニー両方の楽曲が収録されており、「Mother Sky」はライブでも定番となった名曲です。実験性と大衆性のバランスが絶妙で、Canの入門編としても最適です。

オリジナル盤の見分け方

Canのレコード収集において、オリジナル盤の特定は重要なポイントです。初期作品の多くはドイツのUnited Artistsレーベルから、後期作品はバンド自身のSpoonレーベルからリリースされました。

United Artistsオリジナル盤の特徴

1968年から1973年頃までの作品はUnited Artistsから発売されました。オリジナル盤には「UAS 29 211」「UAS 29 283」などのカタログナンバーが記載されており、ジャケットの印刷品質が非常に高いのが特徴です。特に『Tago Mago』のオリジナルは、ゲートフォールド仕様で重厚な紙質を使用しています。

レーベル面は白地にピンクや赤の「Liberty/United Artists」ロゴが入っており、マトリクス番号が手書きで刻印されているものが初期プレスです。西ドイツプレスの表記として「Made in W-Germany」と記載されています。

Spoonレーベルの見分け方

1975年以降、Canは自身のSpoonレーベルを設立し、過去作品の再発も行いました。Spoonレーベルのオリジナル盤には、スプーンのイラストが描かれた独特のレーベルデザインが採用されています。カタログナンバーは「CAN 1001」から始まります。

再発盤との見分け方としては、プレス国の表記、レーベル面のデザイン変更、バーコードの有無(1980年代以降は付与)が決め手となります。また、用語集で解説しているマトリクス番号の確認も重要です。

買うときの注意点

Canのレコードを購入する際は、いくつかの注意点があります。まず、オリジナル盤は非常に高価であり、特に『Tago Mago』や『Ege Bamyasi』のUnited Artistsオリジナルは数万円から十万円を超えることもあります。初めて購入する場合は、音質の良い正規再発盤から始めるのも賢明な選択です。

コンディションについては、ドイツ盤は比較的プレス品質が良いものの、経年劣化によるジャケットの色褪せやシームスプリット(縫い目の裂け)が見られることがあります。購入前には必ずコンディション表記を確認し、可能であれば試聴することをおすすめします。

また、Canのディスコグラフィーには様々な国でのプレスが存在します。レコード購入ガイドでも触れていますが、信頼できるショップや販売者から購入することが偽物を避ける最善の方法です。特にオンラインでの購入時は、出品者の評価や詳細な写真の確認が必須です。

近年、Mute Recordsから行われているリマスター再発シリーズは、オリジナルマスターテープからのカッティングで音質が非常に優れており、コストパフォーマンスの観点からも初心者には特におすすめです。オリジナル盤にこだわる前に、まずは音楽そのものを楽しむことを優先しても良いでしょう。

レコードで聴く魅力

Canの音楽は、レコードというフォーマットで聴くことで真価を発揮します。彼らの長尺な楽曲は、デジタルの途切れない再生よりも、A面B面という区切りの中で聴く方が、より深い没入感と集中力をもたらします。

アナログレコード特有の温かみのある音質は、Canのオーガニックな演奏スタイルと完璧にマッチします。特にホルガー・シューカイのベースラインの重低音、ヤキ・リーベツァイトのドラムの生々しさは、レコードの物理的な再生によってより立体的に感じられます。

また、Canのアルバムアートワークは視覚的にも魅力的で、12インチという大きなフォーマットで眺める喜びがあります。『Tago Mago』の抽象的なデザイン、『Ege Bamyasi』の鮮やかなトルコのオクラ缶のジャケットなど、音楽と視覚の一体験がレコード収集の醍醐味です。

さらに、レコードを通じてCanの音楽を聴くという行為そのものが、彼らが創造活動を行っていた1970年代の時代精神に接続する体験となります。針を落とす瞬間、プチプチというノイズ、そしてゆっくりと立ち上がるサウンド——これらすべてが、デジタル時代には得られない特別な聴取体験を提供してくれます。

まとめ

Canは単なるクラウトロックバンドではなく、音楽の実験と革新の最前線に立ち続けた芸術家集団でした。ダモ鈴木の即興ヴォーカル、バンド全体の緊密なアンサンブル、そしてテープ編集という当時最先端の技術の融合は、今なお新鮮な驚きを与えてくれます。

レコード収集の観点からも、Canの作品は非常に奥深い領域です。オリジナル盤の希少性と価値、再発盤の多様性、そしてプレスによる音質の違いなど、探求すべき要素が豊富にあります。高価なオリジナル盤から入手しやすい再発盤まで、自分の予算と目的に合わせた収集戦略を立てることが重要です。

Canの音楽をレコードで聴くという体験は、単なる懐古趣味ではありません。それは、音楽と真摯に向き合い、時代を超えた芸術性に触れる行為です。ぜひ、この記事を参考にCanのレコード収集を始め、クラウトロックの最高峰が生み出した音の世界に浸ってみてください。

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