Iggy Pop(イギー・ポップ)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方¶
「パンクのゴッドファーザー」と呼ばれるIggy Pop(イギー・ポップ)は、The Stoogesでの破壊的な活動を経て、ソロアーティストとしても長く輝かしいキャリアを築いてきました。David Bowieとの共同制作から始まったソロ活動は、ポストパンク、ニューウェーブ、さらにはジャズやシャンソンまで取り込みながら、常に新しいサウンドを追求し続けています。本記事では、Iggy Popのソロ作品を中心に、レコードで聴くべきおすすめ盤とその選び方を紹介します。
Iggy Popとは?アーティストの概要¶
Iggy Pop(本名:James Newell Osterberg Jr.)は1947年、アメリカ・ミシガン州マスキーゴン生まれ。アナーバーで育ち、地元のバンド活動を経て1967年にThe Stoogesを結成しました。The Stoogesは『The Stooges』(1969年)、『Fun House』(1970年)、『Raw Power』(1973年)という3枚のアルバムで、プロトパンクの金字塔を打ち立てました。
ソロキャリアの変遷¶
The Stooges解散後、Iggyは薬物依存からの回復期を経て、盟友David Bowieの力を借りてソロキャリアを本格始動させます。以降、数十年にわたって独自の道を歩み続けてきました。
| 時期 | スタイル | 代表作 |
|---|---|---|
| 1977年 | エレクトロニック / ポストパンク(Bowieとの共作期) | The Idiot, Lust for Life |
| 1979〜1982年 | ニューウェーブ / パワーポップ | New Values, Soldier, Party |
| 1986〜1990年 | ハードロック / ポップロック | Blah-Blah-Blah, Instinct, Brick by Brick |
| 1993〜1999年 | オルタナティブ / パンク回帰 | American Caesar, Naughty Little Doggie, Avenue B |
| 2003〜2013年 | The Stooges再結成 / フランス文化への傾倒 | Skull Ring, Préliminaires, Après |
| 2016〜現在 | ジャズ / アートロック / 実験的作品 | Post Pop Depression, Free, Every Loser |
Iggy Popの魅力は、70歳を超えてなお新しい音楽的挑戦を続けるその不屈の姿勢にあります。2016年の『Post Pop Depression』ではJosh Hommeとタッグを組み、2023年の『Every Loser』ではパンクの原点に回帰するなど、キャリア後期にも名盤を生み出し続けています。
The Stoogesとの関係¶
The Stooges時代の作品については、The Stoogesのレコードガイドで詳しく紹介しています。本記事ではソロキャリアに焦点を当てますが、Iggy Popの音楽を理解するうえでThe Stooges時代は欠かせない前史ですので、あわせて参照されることをおすすめします。
おすすめアルバム5選¶
Iggy Popのソロ作品は30枚を超えますが、レコードで聴くべき5枚を厳選しました。
1. The Idiot(1977年)¶
Iggy Popのソロデビュー作にして、ポストパンクの原型を作り上げた歴史的名盤です。David Bowieがプロデュースと共同ソングライティングを担当し、ベルリンで録音されました。Bowieの『Low』より先にリリースされたこのアルバムは、冷たく機械的なビートとダークな歌詞が融合し、従来のロックの枠を大きく超えた作品です。「Nightclubbing」「China Girl」「Funtime」といった楽曲は、Joy DivisionやDepeche Modeなど後続のアーティストに決定的な影響を与えました。
- おすすめポイント: ポストパンクの源流、BowieのベルリンサウンドをIggyの声で体験できる
- 中古相場目安: 国内盤 3,000〜6,000円、USオリジナル盤(RCA) 5,000〜15,000円
2. Lust for Life(1977年)¶
『The Idiot』と同年にリリースされた2ndソロアルバム。前作のダークなトーンから一転、エネルギッシュでポップなロックンロールが詰め込まれています。冒頭のタイトル曲「Lust for Life」は、映画『トレインスポッティング』(1996年)のオープニングに使用されたことで、新たな世代にも広く知られるようになりました。「The Passenger」の浮遊感あるメロディーも忘れがたい名曲です。Bowieとの共作の集大成ともいえる充実した内容で、レコードのA面・B面どちらにも聴きどころが詰まっています。
- おすすめポイント: Iggy Pop入門の決定盤、「Lust for Life」「The Passenger」の2大名曲を収録
- 中古相場目安: 国内盤 3,000〜6,000円、USオリジナル盤(RCA) 5,000〜15,000円
3. New Values(1979年)¶
Bowieの影響から離れ、Iggyが自身のソングライティング力を証明した3rdソロアルバムです。元Sex Pistolsのグレン・マトロックやIvanの参加により、ストレートなパワーポップ / ニューウェーブサウンドが展開されます。「Tell Me a Story」「Five Foot One」「I'm Bored」など、キャッチーなメロディーとパンクのエッジが絶妙にバランスした楽曲群は、過小評価されている隠れた名盤です。レコードで聴くと、タイトでパンチのあるギターサウンドが際立ちます。
- おすすめポイント: Bowie抜きで勝負した意欲作、ニューウェーブ好きにおすすめ
- 中古相場目安: 国内盤 2,000〜4,000円、USオリジナル盤(Arista) 3,000〜8,000円
4. Post Pop Depression(2016年)¶
Queens of the Stone AgeのJosh Homme(ジョシュ・オム)がプロデュースを手がけた、キャリア後期の大傑作です。Bowieの死と自身の晩年を意識した重厚なテーマを、ストーナーロック的な分厚いサウンドで包み込んでいます。「Gardenia」「Sunday」「American Valhalla」など、円熟したIggyのボーカルとHommeの骨太なプロダクションが化学反応を起こし、批評家からも絶賛されました。180g重量盤でリリースされており、音質も優秀です。
- おすすめポイント: 70歳目前にして到達した新たな高み、Hommeとの化学反応が絶妙
- 中古相場目安: 新品 3,000〜5,000円(180g盤)
5. Every Loser(2023年)¶
80歳目前の2023年にリリースされた、パンクの原点回帰作。Chad Smith(Red Hot Chili Peppers)やDuff McKagan(Guns N' Roses)といったゲストを迎え、ストレートで攻撃的なロックンロールを展開しています。「Frenzy」「Strung Out Johnny」「Neo Punk」など、The Stooges時代を彷彿とさせるエネルギーに満ちた楽曲が並びます。現行盤として入手しやすく、Iggy Pop入門としてもおすすめです。
- おすすめポイント: 衰えを知らないパンクスピリット、現行盤で入手しやすい
- 中古相場目安: 新品 3,500〜5,000円
オリジナル盤の見分け方¶
Iggy Popのソロ作品は複数のレーベルからリリースされているため、時期ごとにオリジナル盤の特徴が異なります。詳しくは用語集も参照してください。
レーベル別ガイド¶
| 時期 | レーベル | 主なアルバム | オリジナル盤の特徴 |
|---|---|---|---|
| 1977年 | RCA Victor | The Idiot, Lust for Life | RCA犬ラベル(Nipper)が初期プレスの証 |
| 1979〜1981年 | Arista | New Values, Soldier, Party | Aristaの青 / 白ロゴラベル |
| 1986〜1990年 | A&M | Blah-Blah-Blah, Instinct | A&Mのトランペットロゴラベル |
| 1990年 | Virgin | Brick by Brick | Virginの緑レーベル |
| 1993〜1999年 | Virgin | American Caesar〜Avenue B | 同上 |
| 2016年〜 | Loma Vista / Caroline | Post Pop Depression〜 | 現行盤、新品で入手可能 |
The Idiot / Lust for Life(RCA期)のポイント¶
Iggy Popのソロ作品でコレクター人気が最も高いのは、1977年のRCA期の2枚です。
- RCA犬ラベル(Nipper): RCA Victorの犬のマーク入りラベルが初期プレスの証拠です。のちに黒レーベルに変更されました
- US盤 vs UK盤: US盤は「AFL1」プレフィックスのカタログ番号、UK盤は「PL」プレフィックスです。音質はどちらも良好ですが、UK盤のほうがやや明瞭な音質との評価もあります
- マトリクスナンバー: デッドワックス(レコードの音溝の内側の無音部分)に刻まれたマトリクスナンバーの末尾が若い番号ほど初期プレスの可能性が高くなります
- バーコードの有無: ジャケット裏にバーコードがないものがオリジナルプレスです
New Values(Arista期)のポイント¶
- US盤: Arista AB 4237、青と白のAristaロゴラベルが初期プレス
- UK盤: Arista SPART 1092
- インナースリーブ: Arista自社のインナースリーブが付属しているものが初期プレスです
日本盤の魅力¶
Iggy Popの国内盤は、独自の帯デザインや日本語ライナーノーツが付属しており、海外コレクターからも人気があります。特に『The Idiot』『Lust for Life』の日本盤帯付きは、帯の有無で価格が大きく変動します。RCA期の日本盤はRVCレーベルからリリースされており、プレス品質も良好です。
中古レコードの選び方と注意点¶
Iggy Popのレコードを中古で購入する際に知っておきたいポイントをまとめます。
1. 盤質(グレーディング)の確認¶
1977年のRCA期のレコードは、発売から約50年が経過しています。盤質の劣化は避けられないため、グレーディングを必ず確認しましょう。VG+(Very Good Plus)以上の盤質であれば、再生時のノイズはほぼ気にならないレベルです。特に「Nightclubbing」や「The Passenger」のように静かなパートがある楽曲では、盤質の良し悪しが再生体験に大きく影響します。
2. Bowieミックスとリミックスの違い¶
『The Idiot』『Lust for Life』は、オリジナルのDavid Bowieミックスが最も評価されています。後年のリマスター盤では音圧が上げられていたり、ミックスバランスが変更されている場合があるため、購入時にはどのバージョンかを確認しましょう。オリジナルミックスの持つ空間的な広がりと冷たい質感は、レコードで聴いてこそ真価を発揮します。
3. 再発盤(リイシュー)の選び方¶
オリジナル盤に手が届かない場合、再発盤も十分な選択肢です。特に近年の180g重量盤リイシューは音質が優秀なものが多く、入門用には最適です。以下のリイシューシリーズが特に評価されています。
- Sundazed Music盤: 『The Idiot』『Lust for Life』の高品質リイシュー
- Virgin / EMI リマスター盤: 1990年代の作品のリマスター
- 現行盤: 『Post Pop Depression』『Every Loser』は新品で入手可能
4. ブートレグ(海賊盤)に注意¶
Iggy Popはライブパフォーマンスで名高いアーティストであるため、非公式のライブ録音盤(ブートレグ)が多く出回っています。正規品かどうかを確認し、信頼できるレコードショップで購入することをおすすめします。レコードの購入場所については、レコードの購入場所ガイドも参考にしてみてください。
5. ジャケットの状態にも注意¶
Iggy Popのアルバムジャケットは、アーティスト写真を大胆に使用したものが多く、コレクションとしての魅力があります。特に『The Idiot』のエーリッヒ・ヘッケルの絵画を模したポーズ、『Lust for Life』のモノクロポートレートは象徴的なアートワークです。ジャケットのリングウェアやシーム割れ(背部分の裂け)がないか、購入前に確認しましょう。
まとめ¶
- Iggy Pop(イギー・ポップ)はThe Stoogesでプロトパンクを生み出し、ソロキャリアではポストパンクからジャズまで多彩な音楽に挑戦し続けているアーティスト
- 最初の1枚には、名曲「Lust for Life」「The Passenger」を収録した『Lust for Life』がおすすめ。より実験的な作品に興味があれば『The Idiot』を
- RCA期(1977年)のオリジナル盤は犬ラベル(Nipper)が初期プレスの証。日本盤の帯付きも海外コレクターに人気
- 中古購入時はグレーディングとミックスバージョンの確認が重要。再発盤も音質が優秀で入門用に最適
- 70歳を超えてなお『Post Pop Depression』『Every Loser』といった傑作を生み出しており、現行盤も見逃せない
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