Massive Attack(マッシヴ・アタック)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方¶
Massive Attack(マッシヴ・アタック)は、ダブ、ヒップホップ、ソウル、エレクトロニカを融合させた独自のサウンドで「トリップホップ」というジャンルを切り拓いたイギリス・ブリストル出身のグループです。重く深いベースラインと浮遊感のあるサンプリングが織りなす音像は、レコードで聴くことで圧倒的な没入感を生み出します。 本記事では、Massive Attackのおすすめアルバム5選、オリジナル盤の見分け方、中古レコードを購入する際の注意点を詳しく解説します。 これからコレクションを始める方にも、すでにファンの方にも参考にしていただける内容を目指しました。
バンド概要¶
Massive Attackは1988年にイングランド南西部の港町ブリストルで結成されました。主要メンバーは以下の3人です。
| メンバー | 本名 | 役割 |
|---|---|---|
| 3D | Robert Del Naja | ヴォーカル、アートワーク、プログラミング |
| Daddy G | Grant Marshall | ヴォーカル、DJ、プログラミング |
| Mushroom | Andrew Vowles | DJ、プログラミング(1999年脱退) |
3人はもともと1980年代前半にブリストルで活動していたサウンドシステム/DJクルー「The Wild Bunch」のメンバーでした。The Wild Bunchはブリストルのクラブシーンでレゲエ、ダブ、ヒップホップ、パンクを自由にミックスし、後に「ブリストル・サウンド」と呼ばれる独自の音楽文化の土壌を作り上げました。Tricky(トリッキー)やPortishead(ポーティスヘッド)とともに、この街から生まれた音楽ムーヴメントの中心に位置するのがMassive Attackです。
彼らの音楽は、ダブの重低音、ヒップホップのビート感覚、ソウルやレゲエのメロディ、そしてエレクトロニクスによる音響実験を一つの作品に昇華させたもので、1990年代に「トリップホップ」という新たなジャンル名を生み出す直接的なきっかけとなりました。ゲストヴォーカリストを起用するスタイルも大きな特徴で、Shara Nelson、Tracey Thorn、Horace Andy、Elizabeth Fraserなど、アルバムごとに異なるシンガーを迎えることで作品の表情を豊かに変化させています。
おすすめアルバム5選¶
Massive Attackのスタジオアルバムは全5枚。いずれもレコードで聴く価値のある作品ですが、ここでは入手しやすさや聴きどころを踏まえて5枚すべてを紹介します。
1. Blue Lines(1991年)¶
Massive Attackのデビューアルバムにして、トリップホップの誕生を告げた歴史的名盤です。Shara Nelsonの力強いヴォーカルが映える「Unfinished Sympathy」は、オーケストラアレンジとブレイクビーツを融合させた90年代屈指の名曲として知られています。ほかにも「Safe from Harm」「Daydreaming」「Five Man Army」など、ダブとヒップホップ、ソウルを見事に融合させた楽曲が並びます。レコードで再生すると、ベースラインの重みと空間の広がりがデジタル音源とはまったく異なる質感で立ち上がります。
- おすすめポイント: トリップホップの原点、「Unfinished Sympathy」を筆頭にした完成度の高い楽曲群
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Wild Bunch Records / WBRLP 1) 15,000〜40,000円、再発盤 3,000〜6,000円
2. Mezzanine(1998年)¶
Massive Attackの最高傑作との呼び声が高い3rdアルバムです。Cocteau TwinsのElizabeth Fraserをフィーチャーした「Teardrop」は、ハープシコード風のリフと繊細なヴォーカルが幻想的な世界を描き出す代表曲。「Angel」の地鳴りのような重低音、「Inertia Creeps」の不穏なビートなど、アルバム全体が暗く深い音の海に沈み込むような体験を与えてくれます。制作中にメンバー間の緊張が極限に達し、Mushroomが事実上離脱するきっかけとなった作品でもありますが、その緊張感がサウンドに凄みを加えています。レコードの2枚組仕様で聴くと、圧倒的な低音の迫力と暗部の解像度に息を飲みます。
- おすすめポイント: 極限のテンションが生んだダークな傑作、低音再生にレコードの真価が表れる
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Virgin / WBRLP 4) 10,000〜25,000円、再発盤 3,000〜7,000円
3. Protection(1994年)¶
2ndアルバム。Everything but the GirlのTracey Thornが歌うタイトル曲「Protection」は、温かく包み込むようなメロディが印象的な名曲です。Horace Andyの「Spying Glass」、Nicoletteの「Three」など、ゲストヴォーカルの多彩さが光る作品で、『Blue Lines』のソウルフルな側面を発展させながらも、より洗練されたプロダクションが施されています。全体的に穏やかで温もりのあるトーンがレコードの特性と相性が良く、アナログならではの柔らかな音像が楽しめます。
- おすすめポイント: 温かくメロウなサウンド、レコードの柔らかい音質との相性抜群
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Wild Bunch Records / WBRLP 2) 5,000〜15,000円、再発盤 3,000〜5,000円
4. 100th Window(2003年)¶
Mushroomの脱退後、3DとDaddy Gの2人体制で制作された4thアルバムです。Sinéad O'Connorをメインヴォーカルに迎え、Horace Andyも再び参加しています。「Future Proof」「What Your Soul Sings」「Special Cases」など、エレクトロニカの要素を強めた冷たく透明感のあるサウンドが特徴で、Neil Davidgeとの共同プロデュースによるデジタルプロダクションが緻密に構築されています。レコードで聴くと、電子音の冷たさの中にアナログ特有の温かみが加わり、独特のバランスが生まれます。
- おすすめポイント: 透明感のあるエレクトロニカサウンド、Sinéad O'Connorの圧倒的なヴォーカル
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Virgin / WBRLP 5) 5,000〜12,000円
5. Heligoland(2010年)¶
7年のブランクを経てリリースされた5thアルバムです。Tunde Adebimpe(TV on the Radio)、Damon Albarn、Guy Garvey(Elbow)、Mazzy Starの Hope Sandovalなど、多彩なゲストを迎えた作品で、「Atlas Air」の重厚なビート、「Paradise Circus」の官能的なムードなど、バラエティに富んだ楽曲が収録されています。Daddy Gがフロントに復帰し、バンドとしての一体感が感じられる作品です。180g重量盤でのリリースもあり、音質面でも満足度の高い1枚です。
- おすすめポイント: 多彩なゲスト陣との化学反応、重量盤プレスの高音質
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Virgin) 4,000〜10,000円
オリジナル盤の見分け方¶
Massive Attackのレコードをコレクションするうえで、オリジナル盤の見分け方を押さえておくことは重要です。
レーベルの変遷¶
Massive Attackの作品は、以下のレーベルからリリースされています。
| アルバム | レーベル | カタログ番号(UK盤) |
|---|---|---|
| Blue Lines | Wild Bunch Records | WBRLP 1 |
| Protection | Wild Bunch Records | WBRLP 2 |
| Mezzanine | Virgin / Wild Bunch Records | WBRLP 4 |
| 100th Window | Virgin / Wild Bunch Records | WBRLP 5 |
| Heligoland | Virgin / Wild Bunch Records | WBRLP 6 |
「Wild Bunch Records」は、Massive Attackが自ら設立したレーベルで、Virgin Recordsを通じてディストリビューションされていました。オリジナル盤を見分ける際は、レーベル面に「Wild Bunch Records」のロゴが入っているかどうかを確認しましょう。UK盤が初回プレスにあたり、他国盤と比較してコレクター価値が高い傾向にあります。
マトリクス番号の確認¶
レコード盤面の内周部分に刻印されているマトリクス番号は、プレス工場や版の特定に欠かせない情報です。初回プレスには特有のマトリクス番号が刻まれており、再発盤やリマスター盤とは異なります。特に『Blue Lines』のUK初回盤はマトリクスに手書き刻印が含まれることがあり、これが真正性を示す重要な手がかりとなります。
ジャケットとインナースリーブ¶
3Dことロバート・デル・ナヤはグラフィティアーティストとしても知られ、Massive Attackのアートワークは視覚的な完成度が非常に高いことで有名です。オリジナル盤はジャケットの紙質や印刷のクオリティが再発盤と異なる場合があります。『Blue Lines』初回盤はマットコーティングのジャケットで、後年の再発盤とは手触りが異なります。インナースリーブの仕様もプレス時期によって違いがあるため、購入前にDiscogsなどのデータベースで照合すると確実です。
中古レコードの注意点¶
Massive Attackの中古レコードを購入する際には、以下のポイントに注意しましょう。
盤の状態を丁寧に確認する¶
Massive Attackの楽曲は、静寂と重低音のコントラストが大きいのが特徴です。そのため、スクラッチやチリノイズがあると静かなパートで目立ちやすく、作品の没入感を大きく損ないます。購入前にグレーディング(盤のコンディション評価)をしっかり確認し、可能であればVG+(Very Good Plus)以上の状態を選びましょう。
プレス国と音質の違い¶
一般的にUK盤が音質面で最も評価が高いですが、ヨーロッパ盤やアメリカ盤も十分なクオリティを持っています。予算に応じてプレス国を選ぶのも一つの方法です。ただし、UKオリジナル盤は再発盤と比較して中低域の厚みや音場の広がりに違いがあるという意見もあり、こだわりたい方は聴き比べてみることをおすすめします。
再発盤・リマスター盤の活用¶
近年、Massive Attackの主要作品は180g重量盤での再発盤がリリースされています。これらはリマスタリングが施されており、音質面ではオリジナル盤に匹敵する、あるいはそれ以上の評価を受けているものもあります。初めてMassive Attackのレコードを手にする方は、まず再発盤から始めるのが安心です。
12インチシングルにも注目¶
Massive Attackは12インチシングルでリミックスバージョンやエクステンデッドバージョンを数多くリリースしています。特にMad Professorによるダブリミックス集『No Protection』(『Protection』のダブバージョン)は単独のアルバムとしても高い評価を受けており、レコードで聴くとダブ特有の空間処理が見事に体感できます。12インチシングルやリミックス盤も視野に入れると、コレクションの楽しみがさらに広がります。
レコードの購入場所については、レコードの購入場所ガイドも参考にしてみてください。
まとめ¶
- Massive Attack(マッシヴ・アタック)は、ブリストルのサウンドシステム文化から生まれたトリップホップの先駆者。ダブ、ヒップホップ、ソウル、エレクトロニカを融合した独自のサウンドが魅力です
- 最初の1枚には『Blue Lines』または『Mezzanine』がおすすめ。温かみのあるサウンドを求めるなら『Protection』も良い選択です
- オリジナル盤はWild Bunch Records / Virginレーベルのuk盤をチェック。マトリクス番号やジャケットの紙質で初回盤を見分けられます
- 中古盤購入時は盤のグレーディング、プレス国、再発盤との違いを把握しておくと安心です
- 180g重量盤の再発盤は音質が優秀で入門用に最適。12インチシングルやダブリミックス盤にも注目すると、コレクションの幅が広がります
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