R.E.M.(アール・イー・エム)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方¶
R.E.M.(アール・イー・エム)は、1980年代のアメリカン・アンダーグラウンドシーンから登場し、オルタナティブロックをメインストリームへと押し上げた先駆者です。マイケル・スタイプの謎めいた歌声とピーター・バックの煌めくアルペジオが紡ぐサウンドは、レコードで聴くことでより一層その奥行きと温かみが引き立ちます。本記事では、R.E.M.のおすすめアルバムからオリジナル盤の見分け方、中古レコード購入時の注意点までを詳しくご紹介します。
R.E.M.とは?バンドの概要¶
R.E.M.は1980年にアメリカ・ジョージア州アセンズで結成されました。メンバーは以下の4人です。
- マイケル・スタイプ(ヴォーカル) — 抽象的かつ詩的な歌詞と、囁くような独自の歌唱スタイルで知られるフロントマン
- ピーター・バック(ギター) — リッケンバッカーによるジャングリーなアルペジオを特徴とし、バンドのサウンドを決定づけたギタリスト
- マイク・ミルズ(ベース、キーボード、コーラス) — メロディアスなベースラインと美しいハーモニーでバンドの音楽性を支える
- ビル・ベリー(ドラムス) — 堅実かつダイナミックなドラミングでバンドのリズムを担当(1997年に脱退)
R.E.M.の音楽的な歩みは、大きく2つの時期に分けることができます。前期はI.R.S. Recordsに在籍した1980年代で、ジャングルポップやカレッジロックと呼ばれるサウンドを確立した時代です。後期はWarner Bros. Recordsに移籍した1988年以降で、よりスケールの大きいオルタナティブロックへと進化し、世界的な成功を収めました。
その影響力は計り知れず、Nirvanaのカート・コバーンやRadioheadのトム・ヨークをはじめ、数え切れないほどのアーティストがR.E.M.を敬愛しています。2007年にはロックの殿堂入りを果たし、2011年に惜しまれつつ解散しました。
おすすめアルバム5選¶
R.E.M.はスタジオアルバム全15枚をリリースしています。その中からレコードで聴くべきおすすめの5枚を厳選してご紹介します。
1. Murmur(1983年)¶
I.R.S. Recordsからリリースされた記念すべきデビューアルバムです。プロデューサーのミッチ・イースターとドン・ディクソンによる霧がかかったようなサウンドプロダクションが特徴で、ピーター・バックのリッケンバッカーが紡ぐアルペジオとマイケル・スタイプの判然としないヴォーカルが絡み合い、幻想的な世界を作り上げています。「Radio Free Europe」「Talk About the Passion」「Perfect Circle」など、初期R.E.M.の魅力が凝縮された1枚です。
発売当時、ローリング・ストーン誌の年間ベストアルバムでマイケル・ジャクソンの『Thriller』を抑えて1位に選ばれたことでも知られています。レコードで聴くと、リヴァーブの深い空間表現やベースの柔らかな低域がより自然に広がり、アルバムの夢幻的な空気感を存分に味わうことができます。
- おすすめポイント: R.E.M.の原点にして最高傑作との呼び声も高い、ジャングルポップの金字塔
- 中古相場目安: USオリジナル盤(I.R.S. SP-70604) 3,000〜8,000円、再発盤 2,000〜4,000円
2. Automatic for the People(1992年)¶
R.E.M.のキャリアにおける最高到達点と評される名盤です。アコースティックギターとストリングスを軸にした内省的なサウンドが特徴で、ジョン・ポール・ジョーンズ(レッド・ツェッペリン)がストリングスアレンジを手がけたことでも話題になりました。「Everybody Hurts」「Man on the Moon」「Nightswimming」「Drive」と、シングルカットされた楽曲はすべてが名曲です。
レコードで聴くと、ストリングスの繊細な響きとマイケル・スタイプの感情を抑えた歌声が、温かみのあるアナログサウンドで美しく溶け合います。特に「Nightswimming」のピアノの音色は、レコードの柔らかい質感で聴くと格別です。
- おすすめポイント: ストリングスとアコースティックの美しい融合、アナログとの相性が抜群
- 中古相場目安: USオリジナル盤(Warner Bros.) 5,000〜12,000円、再発180g重量盤 3,000〜5,000円
3. Document(1987年)¶
I.R.S.時代の最終作にして、バンドがメジャーシーンへ飛躍するきっかけとなったアルバムです。プロデューサーにスコット・リットを迎え、それまでの霧がかったサウンドから一転、よりシャープでエネルギッシュな音作りに仕上がっています。「It's the End of the World as We Know It (And I Feel Fine)」「The One I Love」は全米チャートでも大きなヒットを記録しました。
政治的なメッセージ性も強まり、バンドの新たな方向性を示した重要作です。レコードでは、ギターのエッジの効いたサウンドとリズム隊の力強さがダイレクトに伝わってきます。
- おすすめポイント: R.E.M.がメジャーへ飛躍した転換点、エネルギッシュなロックサウンド
- 中古相場目安: USオリジナル盤(I.R.S. IRS-42059) 2,000〜5,000円、再発盤 1,500〜3,000円
4. Reckoning(1984年)¶
2ndアルバムにして、前作『Murmur』の幻想性を引き継ぎつつも、よりダイレクトでエネルギッシュなサウンドに進化した作品です。「(Don't Go Back To) Rockville」「So. Central Rain」「Pretty Persuasion」など、メロディの美しさが際立つ楽曲が並びます。
ミッチ・イースターとドン・ディクソンのプロダクションはデビュー作同様に繊細ですが、バンドの演奏はよりタイトで自信に満ちています。レコードでは、ピーター・バックの12弦ギターの煌めきとマイク・ミルズのメロディアスなベースラインが、アナログならではの温かみで美しく再現されます。
- おすすめポイント: 初期R.E.M.の清々しいエネルギーが凝縮された傑作、12弦ギターの美しさが際立つ
- 中古相場目安: USオリジナル盤(I.R.S. SP-70044) 2,000〜5,000円、再発盤 1,500〜3,000円
5. New Adventures in Hi-Fi(1996年)¶
ツアー中のサウンドチェックやライブ会場でのレコーディングを中心に制作された異色の作品で、ビル・ベリーが参加した最後のスタジオアルバムです。「E-Bow the Letter」ではパティ・スミスがゲスト参加し、荘厳な雰囲気を醸し出しています。「Electrolite」「Leave」「Bittersweet Me」など、多彩な楽曲が収録されています。
ライブ的な臨場感とスタジオワークの緻密さが同居した独特の質感を持つアルバムで、レコードで聴くとその空間の広がりとバンドの生々しい演奏が一体となって迫ってきます。近年再評価が進んでおり、隠れた名盤として注目されています。
- おすすめポイント: ライブ感と実験性が融合した隠れた名盤、オリジナルメンバー4人最後の作品
- 中古相場目安: USオリジナル盤(Warner Bros.) 3,000〜8,000円、再発盤 2,500〜4,500円
オリジナル盤の見分け方¶
R.E.M.のレコードをコレクションするうえで、オリジナル盤の見分け方を知っておくことは大切です。以下のポイントを押さえましょう。
レーベルとカタログナンバー¶
R.E.M.のディスコグラフィーは、大きく2つのレーベル期に分かれます。
| 時期 | レーベル | 主な作品 | カタログナンバー例 |
|---|---|---|---|
| 1982〜1988年 | I.R.S. Records | Murmur, Reckoning, Fables of the Reconstruction, Lifes Rich Pageant, Document | SP-70604(Murmur) |
| 1988〜2011年 | Warner Bros. Records | Green, Out of Time, Automatic for the People, Monster, New Adventures in Hi-Fi 他 | 9 25795-1(Green) |
I.R.S.時代のオリジナル盤は、レーベル面にI.R.S.のロゴが印刷されたものが初回プレスです。後年のA&Mディストリビューション盤とは区別する必要があります。Warner Bros.期は、US盤とUK盤でカタログナンバーやプレス工場が異なります。
マトリクスナンバーの確認¶
レコードのデッドワックス(溝のない部分)に刻印されたマトリクスナンバーは、プレス情報を特定する重要な手がかりです。初回プレスには特有のマトリクスが刻まれており、再発盤とは異なる番号が記録されています。
例えば『Murmur』のUSオリジナル盤では、マトリクスに「SP-70604」から始まる刻印が確認できます。購入時にはDiscogs等のデータベースでマトリクス情報を照合することをおすすめします。
ジャケットとインサートの違い¶
オリジナル盤のジャケットは印刷品質が高く、紙の厚みや質感にも違いがあります。I.R.S.時代の作品には歌詞が記載されたインナースリーブが付属しているものが多く、これらが揃っているかどうかもコレクター的な価値に影響します。
特に『Murmur』のオリジナル盤ジャケットは、�у kudzu(クズ)の蔓が鉄道高架を覆い尽くした印象的な写真が使われており、印刷の鮮明さでオリジナルと再発を見分けることができます。
中古レコードの選び方と注意点¶
R.E.M.のレコードは根強い人気があり、中古市場でも活発に取引されています。購入する際には以下のポイントに気をつけましょう。
盤の状態を必ず確認する¶
レコードの音質は盤のコンディションに大きく左右されます。グレーディングの基準を理解し、できればVG+(Very Good Plus)以上のものを選びましょう。R.E.M.のI.R.S.時代のアルバムは1980年代のプレスですので、40年以上が経過しています。保管状態の良し悪しが音質に直結するため、購入前の確認は欠かせません。
オリジナル盤と再発盤の使い分け¶
オリジナル盤は希少価値が高く、コレクターズアイテムとしての魅力がありますが、価格もそれなりに上がります。一方で、近年リリースされた再発盤は180g重量盤でプレスされているものも多く、音質面では非常に優れています。
リスニング目的であれば再発盤でも十分に満足できますので、ご自身の予算やコレクションの方針に合わせて選ぶとよいでしょう。
I.R.S.時代とWarner Bros.時代の価格差¶
一般的に、I.R.S.時代(1980年代)のオリジナル盤はプレス数が限られていたこともあり、Warner Bros.時代の作品よりも中古市場で高値がつく傾向にあります。特に『Murmur』『Reckoning』の初回プレスは状態の良いものが少なくなっており、見つけたら早めに入手することをおすすめします。
信頼できる販売店で購入する¶
人気アーティストのレコードには、状態表記が不正確な出品や、再発盤をオリジナル盤と偽って販売しているケースも稀にあります。信頼できるレコードショップや評価の高いオンラインセラーから購入することで、こうしたトラブルを避けることができます。
まとめ¶
- R.E.M.(アール・イー・エム)は1980年代のアメリカン・アンダーグラウンドから登場し、オルタナティブロックの道を切り拓いた先駆者。最初の1枚には『Murmur』または『Automatic for the People』がおすすめです
- I.R.S.時代(1980年代)の作品はジャングルポップの煌めき、Warner Bros.時代(1990年代〜)はスケールの大きいオルタナティブロックと、時期によってサウンドが異なります
- オリジナル盤の見分けにはレーベル、カタログナンバー、マトリクスナンバーの確認が重要です
- 再発盤は180g重量盤で音質が優秀なものも多く、リスニング目的の入門用には最適です
- I.R.S.時代のオリジナル盤は希少性が高まっているため、状態の良いものは早めの入手がおすすめです
R.E.M.のレコードに針を落とすと、ピーター・バックのギターの煌めきとマイケル・スタイプの声が織りなす独自の世界に引き込まれます。デジタル音源では伝わりにくい、音の余韻や空気感をぜひアナログで体験してみてください。
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