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Sigur Rós(シガー・ロス)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方

Sigur Rós(シガー・ロス)は、アイスランドが生んだ唯一無二のバンドです。弓で弾くエレキギター、造語「ホープランド語」による歌唱、果てしなく広がるサウンドスケープ——彼らの音楽はレコードの温かみあるアナログ再生と驚くほど相性がよく、聴く者を壮大な音の風景へと連れ出してくれます。 この記事では、Sigur Rósのおすすめアルバム5枚の聴きどころに加え、オリジナル盤の見分け方や中古レコード購入時の注意点をまとめました。アイスランド盤・UK盤の違いが気になる方にも役立つ内容です。

バンド概要

Sigur Rósは1994年、アイスランド・レイキャヴィクで結成されました。バンド名はアイスランド語で「勝利のバラ」を意味し、結成当日に生まれたヨンシーの妹シグルロゥス(Sigurrós)に由来しています。

メンバー

メンバー 担当 特徴
ヨンシー・ビルギッソン(Jónsi) ヴォーカル、ギター チェロの弓でエレキギターを弾く独自の奏法。ファルセットを多用した透明感のある歌声
ゲオルグ・ホルム(Georg Hólm) ベース ディレイやリバーブを駆使し、ベースを「もう一つのメロディ楽器」として扱う
オーリー・ディラソン(Orri Páll Dýrason) ドラムス(〜2018年) 繊細なブラシワークから爆発的なクレッシェンドまで、バンドのダイナミクスを支えた
キャータン・スヴェインソン(Kjartan Sveinsson) キーボード、アレンジ(〜2013年) オーケストラアレンジを担い、バンドのサウンドに壮大さを加えた

音楽的特徴

Sigur Rósの音楽を語るうえで欠かせないキーワードが3つあります。

  • ホープランド語(Hopelandic / Vonlenska): 意味を持たない造語で歌う独自のスタイル。言葉の「意味」ではなく「響き」そのものを楽器のように扱い、声を音の風景の一部に溶け込ませます。特にアルバム『( )』で全面的に使用されました
  • 弓弾きギター: ヨンシーはチェロの弓でエレキギターの弦を擦るという独特の奏法を用います。これにより、ギターとは思えない持続音や倍音豊かなドローンが生まれ、オーケストラのような厚みを持つサウンドスケープが形成されます
  • 壮大なサウンドスケープ: ストリングスセクション、ホーン隊、クワイア(合唱)を大胆に取り入れたアレンジが特徴です。静寂からゆっくりとビルドアップし、圧倒的なクライマックスへと到達する楽曲構成は、アンビエントやクラシック音楽の影響を感じさせます

これらの要素が組み合わさることで、国境も言語も超えた普遍的な感動を聴く者に届けてきました。

おすすめアルバム 5選

Sigur Rósのスタジオアルバムの中から、レコードで聴くべき5枚を厳選して紹介します。

1. Ágætis byrjun(1999年)

バンドの名を世界に知らしめた2ndアルバム。タイトルはアイスランド語で「良い始まり」を意味します。「Svefn-g-englar(眠遊する天使たち)」の10分を超える幻想的な旅に始まり、「Starálfur(見つめる妖精)」の繊細な弦楽アレンジ、「Viðrar vel til loftárása(空襲にはいい天気)」の壮大なクライマックスまで、全編が息をのむ美しさに満ちています。

レコードでは、弓弾きギターの倍音やストリングスの残響が豊かに広がり、デジタル音源では感じにくい空気の振動まで伝わってきます。Sigur Rós入門の1枚として、まずこのアルバムをおすすめします。

  • おすすめポイント: ポストロックの金字塔、弓弾きギターとストリングスの融合がレコードで最も美しく響く
  • 中古相場目安: UK盤(FatCat Records)5,000〜12,000円、アイスランドオリジナル盤(Smekkleysa)15,000〜40,000円

2. ( )(2002年)

タイトルも曲名もなく、全8曲が「Untitled」とだけ表記された異色作。歌詞はすべてホープランド語で、歌詞カードも白紙——リスナーが自由に言葉を書き込めるようになっています。音楽は極限まで削ぎ落とされたピアノやギターのアルペジオから始まり、轟音のクライマックスへと突き進む楽曲と、囁くような静謐な楽曲が交互に配置されています。

レコードの2枚組仕様は、この「静と動」の対比を4つの面で体験できる理想的なフォーマットです。針を落とすたびに訪れる静寂が、次の音の衝撃を増幅させます。

  • おすすめポイント: 言葉を超えた純粋な音楽体験、2枚組レコードのフォーマットとの相性が抜群
  • 中古相場目安: UK盤(FatCat Records)4,000〜10,000円、アイスランド盤 10,000〜25,000円

3. Takk...(2005年)

タイトルはアイスランド語で「ありがとう」。ファンやリスナーへの感謝を込めた3rdアルバムで、前作の内省的な世界観から一転、開放的で祝祭的なエネルギーに満ちています。「Glósóli」の後半で訪れる爆発的なクライマックスは、ライブでも最大のハイライトとして知られる名場面。「Hoppípolla」はCMやテレビ番組で多数使用され、バンド最大のヒット曲となりました。

180g重量盤でのプレスが施されたレコードは、「Hoppípolla」のピアノとグロッケンシュピールの繊細な響きから「Glósóli」の轟音ギターの壁まで、ダイナミックレンジの広さを余すことなく引き出します。

  • おすすめポイント: 祝祭的なエネルギーとダイナミクスの幅がレコードで際立つ、入門にも最適
  • 中古相場目安: UK盤(EMI / FatCat)3,000〜8,000円、再発盤 4,000〜7,000円

4. Valtari(2012年)

「ローラー(蒸気船)」を意味するタイトルの通り、ゆっくりと水面を進むような穏やかなアルバムです。過去の作品にあった轟音のクライマックスは影を潜め、全編がアンビエント的な静けさに包まれています。「Ekki múkk」「Varúð」など、囁くように歌われる楽曲が並び、深夜にヘッドフォンで聴くのに最適な1枚です。

レコードの針が溝をなぞる微かな音さえも音楽の一部となるような、静謐なリスニング体験が得られます。

  • おすすめポイント: アンビエント色の強い瞑想的作品、レコードの静けさとの親和性が極めて高い
  • 中古相場目安: UK盤(Parlophone / XL)3,000〜6,000円

5. Kveikur(2013年)

タイトルはアイスランド語で「灯心(ろうそくの芯)」。キャータン脱退後の3人編成で制作された作品で、これまでのSigur Rósにはなかったダークでアグレッシブなサウンドが特徴です。「Brennisteinn」の激しいドラムビートと歪んだベースは、バンドの新たな側面を示しました。一方で「Var」のような美しい楽曲も収録されており、光と闇の対比がアルバム全体を貫いています。

レコードでは低音域の力強さが際立ち、ダークなサウンドスケープが部屋全体に広がる迫力ある体験ができます。

  • おすすめポイント: ダークでアグレッシブな異色作、力強い低音がレコードで真価を発揮する
  • 中古相場目安: UK盤(Parlophone / XL)3,000〜6,000円

オリジナル盤の見分け方

Sigur Rósのレコードは、リリース時期やプレス国によって流通経路が異なります。コレクターとして押さえておきたいポイントをまとめます。

レーベルの違い

Sigur Rósの作品は、主に2つのレーベルから流通しています。

レーベル 拠点 特徴
Smekkleysa(Bad Taste) アイスランド・レイキャヴィク バンドの母国レーベル。初期作品のアイスランド国内盤をリリース。プレス数が少なく希少
FatCat Records イギリス 『Ágætis byrjun』以降の国際流通を担当。UKプレス盤がコレクター市場で最も流通量が多い

後期作品(『Valtari』『Kveikur』以降)はParlophoneやXL Recordingsからもリリースされています。

アイスランド盤の希少性

1stアルバム『Von』(1997年)と『Ágætis byrjun』のSmekkleysa盤は、プレス数が極めて少なく、中古市場で高値で取引されます。特に『Von』のオリジナルアイスランド盤は、数百枚しかプレスされなかったとされ、状態の良いものは非常に希少です。

マトリクス番号の確認方法

オリジナル盤かどうかを判断するには、レコード盤面の内周(デッドワックス)に刻印されたマトリクス番号を確認します。

  • Smekkleysa盤: カタログ番号が「SMR」で始まる(例: 『Ágætis byrjun』は SMR-27)
  • FatCat盤: カタログ番号が「FATLP」で始まる(例: 『Ágætis byrjun』は FATLP09)
  • 再発盤との区別: 再発盤はカタログ番号が異なるほか、「180g」や「Reissue」の表記がジャケットやインサートに記載されていることが多い

Discogsなどのオンラインデータベースでマトリクス番号を照合すると、プレス情報を正確に把握できます。

中古レコードの注意点

Sigur Rósのレコードを中古で購入する際に気をつけたいポイントを紹介します。

盤の状態を必ず確認する

Sigur Rósの音楽は、静寂から轟音までのダイナミックレンジが非常に広いのが特徴です。静かなパートではレコードのスクラッチやノイズが目立ちやすいため、盤質はVG+(Very Good Plus)以上のものを選びましょう。オンラインで購入する際は、グレーディングの表記を必ず確認してください。

2枚組・特殊仕様に注意

『( )』や『Takk...』は2枚組仕様でリリースされています。中古品の場合、片方のディスクが欠品していたり、付属のブックレットやインサートが欠けていたりすることがあります。購入前にセット内容を確認しましょう。

再発盤という選択肢

純粋に音楽を楽しむ目的であれば、オリジナル盤にこだわる必要はありません。近年の再発盤は180g重量盤でプレスされ、リマスタリングが施されたものも多く、音質面ではオリジナルを上回ることもあります。まずは手に入りやすい再発盤から始め、気に入ったらオリジナル盤を探すのがおすすめです。

ブートレグ盤に注意

Sigur Rósは海外での人気が高いため、非公式のブートレグ盤が出回っていることがあります。ジャケットの印刷品質が粗い、レーベル面の情報が不完全、異常に安価——といった特徴が見られる場合はブートレグの可能性があります。信頼できるショップやDiscogsの認定セラーから購入するのが安全です。

レコードの購入場所については、レコードの購入場所ガイドも参考にしてみてください。

まとめ

  • Sigur Rós(シガー・ロス)はアイスランド・レイキャヴィク出身のバンド。弓弾きギター、ホープランド語、壮大なサウンドスケープで唯一無二の音楽世界を築いた
  • 最初の1枚には『Ágætis byrjun』がおすすめ。弓弾きギターとストリングスの美しい融合をレコードで堪能できる
  • Smekkleysa(アイスランド)盤は希少で高額。FatCat Records(UK)盤がコレクター市場の中心
  • オリジナル盤の判別にはマトリクス番号の確認が有効。Discogsでの照合が確実
  • 再発盤は180g重量盤で音質が優秀。入門用には再発盤から始めるのが賢い選択
  • 静寂から轟音までのダイナミクスはレコードのアナログ再生でこそ真価を発揮する

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