コンテンツにスキップ

T. Rex(T・レックス)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方

T. Rex(T・レックス)は、1970年代のグラムロック・ムーブメントを牽引したイギリスのロックバンドです。中心人物マーク・ボランが奏でるファズの効いたギターリフと甘いヴォーカルは、レコードの温かみあるサウンドでこそ真価を発揮します。デジタル音源では伝わりにくい独特のブギーのグルーヴ感やアナログならではの空気感を、ぜひヴァイナルで体感してみてください。

T. Rexとは?バンドの概要

T. Rexは、マーク・ボラン(Marc Bolan, 1947〜1977年)を中心に結成されたイギリスのロックバンドです。グラムロックの代名詞的存在として、デヴィッド・ボウイと並び1970年代前半のUK音楽シーンを席巻しました。

フォーク期——Tyrannosaurus Rexとしての出発

バンドの前身は、1967年にマーク・ボランとパーカッショニストのスティーヴ・ペレグリン・トゥックによって結成された Tyrannosaurus Rex(ティラノザウルス・レックス)です。当初はアコースティックギターとボンゴを中心としたサイケデリック・フォーク路線で、妖精や魔法使いが登場する幻想的な歌詞が特徴でした。『My People Were Fair and Had Sky in Their Hair... But Now They're Content to Wear Stars on Their Brows』(1968年)をはじめ、4枚のアルバムをリリースしています。

1969年にトゥックが脱退し、ミッキー・フィンがパーカッション担当として加入。この時期のアルバム『A Beard of Stars』(1970年)で、ボランは初めてエレキギターを本格的に導入し、バンドの音楽的転換点となりました。

エレクトリック期——グラムロックの爆発

1970年、バンド名を T. Rex に短縮し、エレクトリック路線へと大きく舵を切ります。ベーシストのスティーヴ・カーリーを迎え、よりロック色の強いサウンドへ変貌を遂げました。

1971年のシングル「Hot Love」が全英1位を獲得すると、続く「Get It On」(米タイトル「Bang a Gong (Get It On)」)も大ヒット。アルバム『Electric Warrior』は全英チャート1位に輝き、イギリスではビートルマニアになぞらえて「T. Rextasy(T・レクスタシー)」と呼ばれる社会現象を巻き起こしました。

ボランはラメの衣装にグリッターを散りばめたメイクで登場し、グラムロックの視覚的アイコンとなります。1972年の『The Slider』、1973年の『Tanx』と立て続けにアルバムをリリースし、バンドの全盛期を築きました。

主要メンバー

メンバー 担当 在籍期間
マーク・ボラン ヴォーカル、ギター 1967〜1977年
スティーヴ・ペレグリン・トゥック パーカッション、ヴォーカル 1967〜1969年
ミッキー・フィン パーカッション、ベース 1969〜1975年
スティーヴ・カーリー ベース 1970〜1977年
ビル・レジェンド ドラムス 1971〜1973年

後期と突然の終焉

1974年以降、パンクの台頭やボラン自身の健康問題などもあり、バンドの人気は徐々に低下していきます。しかしボランは創作を止めず、『Zinc Alloy and the Hidden Riders of Tomorrow』(1974年)や『Futuristic Dragon』(1976年)ではファンク・ソウルの要素を大胆に取り入れ、音楽的な実験を続けました。

1977年にはテレビ番組「Marc」のホストを務めるなど再ブレイクの兆しを見せていましたが、同年9月16日、交通事故により29歳で急逝。グラムロックの伝説は突然幕を閉じました。

音楽的特徴

T. Rexの音楽を特徴づける要素は以下の通りです。

  • ブギーロック: シンプルな繰り返しリフを基調としたグルーヴィーなロック。チャック・ベリー直系のロックンロールを独自に解釈したスタイル
  • ファズギター: ボラン独特の「チープだけど甘い」ギターサウンド。歪みの質感がアナログ録音と絶妙にマッチする
  • ウィスパリング・ヴォーカル: 囁くように歌うボランの声は、レコードの柔らかい再生音と相性抜群
  • トニー・ヴィスコンティのプロデュース: 弦楽器やコーラスを効果的に配した豊かなサウンドプロダクション

おすすめアルバム5選

T. Rexの膨大なディスコグラフィーの中から、レコードで聴くべき5枚を厳選しました。

1. Electric Warrior(1971年)

T. Rexの最高傑作にして、グラムロックの金字塔。「Mambo Sun」の催眠的なリフで幕を開け、「Cosmic Dancer」の繊細なバラード、「Get It On」のキャッチーなブギーロック、そして「Life's a Gas」の浮遊感あるラストまで、全曲が輝いています。トニー・ヴィスコンティのプロデュースによるストリングスの使い方が絶妙で、レコードのA面・B面それぞれに異なる雰囲気が広がります。

  • おすすめポイント: T. Rex入門の決定盤。ブギーとバラードのバランスが完璧で、アナログの温かみがサウンドの魅力を最大限に引き出す
  • 中古相場目安: 国内盤 2,000〜5,000円、UKオリジナル盤(Fly) 8,000〜30,000円

2. The Slider(1972年)

『Electric Warrior』の成功を受けて制作された続編的アルバム。シングル「Telegram Sam」「Metal Guru」を含み、よりヘヴィでサイケデリックなサウンドが展開されます。パリとコペンハーゲンのスタジオで録音されており、ヨーロッパ的な空気感が漂う独特の音像が特徴です。ジャケットのボランのポートレートも印象的で、12インチサイズで眺める価値があります。

  • おすすめポイント: 『Electric Warrior』と双璧をなす名盤。「Metal Guru」のイントロは一度聴いたら忘れられない
  • 中古相場目安: 国内盤 2,000〜4,000円、UKオリジナル盤(EMI) 6,000〜20,000円

3. Tanx(1973年)

ソウルやファンクの要素を取り入れた意欲作。ゴスペル風のコーラスやリズムの実験が目立ち、前2作とは明らかに異なる方向性を示しています。「20th Century Boy」はシングルのみのリリースですが、この時期を象徴する代表曲です。アルバム収録の「Rapids」や「Tenement Lady」には、後のパンクを先取りしたような荒々しさがあります。

  • おすすめポイント: ボランの音楽的野心が詰まった挑戦作。ソウルフルなアレンジがレコードのアナログ感と好相性
  • 中古相場目安: 国内盤 1,500〜3,500円、UKオリジナル盤(EMI) 5,000〜15,000円

4. A Beard of Stars(1970年)

Tyrannosaurus Rex名義の最終作にして、エレクトリック期への橋渡しとなった重要作。フォーク路線を残しつつも、「Elemental Child」ではファズギターを全開にした激しいサウンドが炸裂します。アコースティックとエレクトリックが入り混じる過渡期ならではのユニークなサウンドは、T. Rexの進化を追う上で欠かせない1枚です。

  • おすすめポイント: フォーク期とエレクトリック期の架け橋。「Elemental Child」の覚醒的なギターソロは必聴
  • 中古相場目安: 国内盤 2,000〜5,000円、UKオリジナル盤(Regal Zonophone) 8,000〜25,000円

5. Bolan Boogie(1972年)

シングルA面・B面曲を中心に構成されたコンピレーション盤。「Ride a White Swan」「Hot Love」「Get It On」などの大ヒット曲がまとめて聴けるため、ベスト盤的な位置づけで楽しめます。個々の楽曲のシングルミックスがそのまま収録されているため、当時のラジオで流れていた音そのものを体験できるのが魅力です。

  • おすすめポイント: ヒット曲を網羅した入門に最適な1枚。シングルヴァージョンならではの鮮度の高いサウンド
  • 中古相場目安: 国内盤 1,000〜3,000円、UKオリジナル盤(Fly) 3,000〜8,000円

オリジナル盤の見分け方

T. Rexのレコードは時期によってリリース元のレーベルが異なるため、オリジナル盤を見分けるにはレーベルごとの特徴を押さえておく必要があります。

レーベル別ガイド

時期 レーベル 主なアルバム オリジナル盤の特徴
Tyrannosaurus Rex期(1968〜1970年) Regal Zonophone My People Were Fair〜, A Beard of Stars 青/銀レーベル
T. Rex初期(1970〜1972年) Fly T. Rex, Electric Warrior, Bolan Boogie Flyレーベル(白地にハエのロゴ)
T. Rex黄金期(1972〜1977年) EMI The Slider, Tanx, Zinc Alloy 以降 EMI レーベル(各種バリエーションあり)

UKオリジナル盤のチェックポイント

  • Flyレーベル: 白地にハエのイラストが描かれた特徴的なデザイン。『Electric Warrior』のUK初回プレスは、このFlyレーベルで、内袋にもFlyのロゴが入っている
  • マトリクス番号の読み方: レコード盤面のデッドワックス(音溝のない部分)に刻印された英数字を確認する。たとえば『Electric Warrior』のUK初回は「HIFLY 6」のカタログ番号で、マトリクス末尾が「1U」や「2U」などの若い番号であれば初期プレスの可能性が高い
  • ラミネートジャケット: 1970年代前半のUK盤は光沢のあるラミネート加工が施されたジャケットが多い。後年の再発盤ではマットな質感に変わっている
  • インナースリーブ: 初回プレスにはFlyやEMIのカタログが印刷された専用インナースリーブが付属していることが多い

日本盤について

T. Rexの国内盤は、東芝EMIからリリースされていました。日本独自のデザインが美しく、特に『Electric Warrior』や『The Slider』の帯付きは海外コレクターからも人気があります。帯の有無で価格が大きく変わるため、購入時は帯の状態もしっかり確認しましょう。

中古レコードを買うときの注意点

T. Rexのレコードを中古で探す際に気をつけたいポイントをまとめます。

盤質の確認

1970年代のレコードは発売から50年以上が経過しているため、盤面の状態確認は必須です。以下のグレーディング基準を参考にしてください。

  • Mint(M): 未使用・未開封の状態。ヴィンテージ盤でこの状態は極めて稀
  • Near Mint(NM): ほぼ新品同様。目に見える傷やスレがない
  • Very Good Plus(VG+): 軽微なスレはあるが再生に影響なし。実用的に楽しむならこのグレード以上を狙いたい
  • Very Good(VG): 表面にスレや軽い傷あり。多少のノイズが入る可能性がある

購入時のチェックリスト

  • 盤面: 光にかざして傷やスレの程度を確認する。特にA面1曲目の冒頭部分は針の落とし跡がつきやすい
  • ジャケット: 角のダメージ、リングウェア(盤の形状がジャケットに浮き出た跡)、水シミの有無をチェック
  • 帯(国内盤の場合): 帯の有無と状態は価格に大きく影響する。破れや色褪せがないか確認
  • インナースリーブ: オリジナルのインナースリーブが残っているかどうかもコレクターズアイテムとしての価値に関わる
  • 再発盤との区別: カタログ番号やレーベルデザインを確認し、オリジナル盤と再発盤を間違えないように注意する

リマスター再発盤という選択肢

オリジナル盤にこだわらないのであれば、近年リリースされたリマスター再発盤も優れた選択肢です。音質の改善に加えてボーナストラックが収録されているものもあり、コストパフォーマンスに優れています。まずは再発盤で音楽そのものを楽しみ、気に入ったらオリジナル盤を探すという段階的なアプローチもおすすめです。

まとめ

T. Rexは、マーク・ボランの天才的なソングライティングとカリスマ性によってグラムロックの時代を切り拓いたバンドです。シンプルなブギーのリフと甘い歌声が織りなすサウンドは、レコードのアナログな質感でこそ最も美しく響きます。まずは『Electric Warrior』を1枚手に取り、針を落としてみてください。50年以上前の音楽が、いまも鮮やかに輝いていることに驚くはずです。


関連ページ

  • 用語集 — オリジナル盤、グレーディング、帯など、レコード用語の解説はこちら

Digital & Analog in Harmony.

テクノロジーとカルチャーの交差点から、共鳴を生み出す。Harmonic Society は、アナログの温もりとデジタルの可能性を掛け合わせ、音楽と文化の新しい体験を届けています。姉妹サイト Harmonic Society Philosophy では古代から現代までの哲学を、Post Web3 ではWeb3・ブロックチェーンの専門分析を発信しています。