The Jesus and Mary Chain(ジーザス・アンド・メリー・チェイン)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方¶
The Jesus and Mary Chain(ジーザス・アンド・メリー・チェイン)は、フィードバックノイズの嵐の中に甘く切ないポップメロディを忍ばせた、唯一無二のサウンドで知られるスコットランド出身のバンドです。1980年代半ばに登場し、シューゲイザーやオルタナティブロックの礎を築いた彼らの作品は、レコードで聴くことでノイズの質感とメロディの美しさが一段と際立ちます。本記事では、バンドの概要から代表アルバム、オリジナル盤の見分け方、中古盤を購入する際の注意点まで、コレクターの視点から詳しく解説します。
バンド概要¶
リード兄弟とバンドの結成¶
The Jesus and Mary Chainは1983年、スコットランド・イースト・キルブライドでウィリアム・リードとジム・リードの兄弟を中心に結成されました。
- ジム・リード(ヴォーカル、ギター) — クールで気だるいヴォーカルスタイルが特徴。バンドの「声」として、ノイズの奥に佇む甘いメロディを歌い上げる
- ウィリアム・リード(ギター、ヴォーカル) — フィードバックとディストーションを駆使した轟音ギターの設計者。バンドのサウンドの核を担う
- ボビー・ギレスピー(ドラムス、初期) — 初期メンバーとして立ったまま叩くミニマルなドラムスタイルで知られる。後にPrimal Screamで成功を収める
- ダグラス・ハート(ベース、初期) — 初期のライブやレコーディングに参加し、バンドのリズムセクションを支えた
メンバーは時期によって流動的でしたが、リード兄弟の二人がバンドの創作の核であり続けました。
音楽的特徴¶
The Jesus and Mary Chainの最大の特徴は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやラモーンズ譲りのシンプルなポップソングを、フィードバックノイズの壁で覆い尽くすというアプローチです。フィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」をノイズで再解釈したかのような音作りは、当時のインディーロックシーンに衝撃を与えました。
デビュー当初はわずか15〜20分のライブで暴動が起きることもあり、ステージ上でのカオスなパフォーマンスとともに、瞬く間に話題のバンドとなりました。Creation Recordsのアラン・マッギーに見出され、同レーベルから初期作品をリリースしたことでも知られます。その後Blanco y Negroレーベルに移籍し、メジャーフィールドで活動を展開しました。
彼らのサウンドはポストパンクのDIY精神とポップメロディの融合であり、後のシューゲイザームーブメントやグランジシーンに多大な影響を及ぼしています。My Bloody Valentine、Ride、Slowdiveといったバンドが彼らの後に続き、「ノイズの中の美」を追求する流れを作り上げました。
おすすめアルバム 5選¶
1. Psychocandy(1985年)¶
デビューアルバムにして、バンドの代名詞的作品。フィードバックノイズの洪水の中から「Just Like Honey」「Never Understand」「You Trip Me Up」といった珠玉のポップメロディが浮かび上がります。プロダクションはローファイながらも、その荒々しさこそがこのアルバムの核心です。NMEが選ぶオールタイムベストアルバムの常連であり、ノイズポップというジャンルの出発点となった歴史的名盤です。
レコードで聴くと、フィードバックノイズのテクスチャーが格段に豊かに響き、ヴォーカルとノイズの溶け合い方がデジタル音源とは別次元の体験になります。最初の1枚に迷ったら、まずこのアルバムをおすすめします。
- おすすめポイント: ノイズポップの金字塔、バンドの原点にして最高傑作との呼び声が高い
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Creation / Blanco y Negro) 15,000〜40,000円、再発盤 3,000〜6,000円
2. Darklands(1987年)¶
2ndアルバム。前作のフィードバックノイズを大幅に削ぎ落とし、メロディそのものを前面に押し出した作品です。ドラムマシンを多用し、ジム・リードの甘く物憂げなヴォーカルが際立つサウンドは、バンドの新たな一面を示しました。「April Skies」「Happy When It Rains」「Nine Million Rainy Days」といった楽曲は、ノイズなしでも彼らのソングライティングの才能が卓越していることを証明しています。
レコードでは、ドラムマシンの乾いた質感とアコースティックギターの響きが美しく再現されます。Psychocandyとは対照的なアプローチを楽しめる一枚です。
- おすすめポイント: メロディの美しさを堪能できる名盤、ノイズが苦手な方への入門盤にも
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Blanco y Negro) 5,000〜15,000円、再発盤 3,000〜5,000円
3. Automatic(1989年)¶
3rdアルバム。ドラムマシンとファズギターを軸に、よりリズミカルでダンサブルなサウンドへと進化した作品です。「Head On」「Blues from a Gun」はバンドのライブでも定番の人気曲で、ストレートなロックンロールのエネルギーに満ちています。Pixiesのブラック・フランシスが「Head On」をカバーしたことでも知られ、オルタナティブロックファンからの支持も厚い一枚です。
- おすすめポイント: ドライブ感のあるロックンロールとノイズの融合、聴きやすさと攻撃性の絶妙なバランス
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Blanco y Negro) 4,000〜10,000円、再発盤 3,000〜5,000円
4. Honey's Dead(1992年)¶
4thアルバム。グランジ全盛期にリリースされた作品で、ヘヴィなギターリフとインダストリアルな質感が加わったサウンドが特徴です。「Reverence」の冒頭で「I wanna die just like Jesus Christ」と歌い出す挑発的な歌詞は物議を醸しましたが、楽曲の完成度は極めて高く、バンドのキャリアの中でも屈指のオープニングトラックです。「Far Gone and Out」「Almost Gold」などポップな楽曲も充実しています。
- おすすめポイント: 90年代ロックの空気をまとったヘヴィかつキャッチーな一枚
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Blanco y Negro) 5,000〜12,000円、再発盤 3,000〜5,000円
5. Munki(1998年)¶
リード兄弟の不和が深刻化する中で制作された5thアルバム。兄弟が別々にレコーディングしたトラックが交互に並ぶ構成になっており、バンドの緊張関係がそのまま作品に反映されています。にもかかわらず、「I Love Rock 'n' Roll」「Perfume」「Cracking Up」など楽曲のクオリティは高く、ローファイな質感と実験的なプロダクションが独特の魅力を放っています。リリース後にバンドは解散(2007年に再結成)しており、一つの時代の終わりを告げる作品です。
- おすすめポイント: 解散前最後のオリジナルアルバム、兄弟の個性が対比的に楽しめる
- 中古相場目安: UKオリジナル盤(Creation Records) 8,000〜20,000円、再発盤 3,000〜6,000円
オリジナル盤の見分け方¶
The Jesus and Mary Chainのレコードをコレクションする際、オリジナルプレスの見分け方を知っておくと、適正な価格で希望の盤を手に入れやすくなります。基本用語については用語集もあわせてご覧ください。
Creation RecordsとBlanco y Negro¶
The Jesus and Mary Chainのレコードは、時期によってリリース元のレーベルが異なります。
| 時期 | レーベル | 主な作品 |
|---|---|---|
| 初期シングル(1984〜1985年) | Creation Records | 「Upside Down」「Never Understand」「You Trip Me Up」 |
| 1stアルバム以降(1985〜1998年) | Blanco y Negro(WEA傘下) | 『Psychocandy』『Darklands』『Automatic』『Honey's Dead』 |
| 5thアルバム(1998年) | Creation Records(復帰) | 『Munki』 |
初期のCreation Recordsからリリースされた7インチシングル「Upside Down」(CRE 012)は特にコレクターの人気が高く、初回プレスは希少価値があります。
マトリクス番号の確認¶
オリジナル盤を見分ける上で最も確実な方法は、デッドワックス(盤面の中心付近の溝がない部分)に刻まれたマトリクス番号の確認です。
| アルバム | カタログ番号 | マトリクス番号の特徴 |
|---|---|---|
| Psychocandy | BYN 7(Blanco y Negro) | UK初回プレスはマトリクスに「A-1/B-1」の刻印 |
| Darklands | BYN 14 | Porky / Peckoによるカッティング刻印が入るものが初回 |
| Automatic | BYN 23 | 同様にカッティングエンジニアの刻印を確認 |
マトリクス番号に「A-1」「B-1」といった若い番号が刻まれている盤は、初回プレスである可能性が高いです。また、カッティングエンジニアのイニシャルやメッセージが刻まれていることもあり、これもオリジナル盤の証拠になります。
ジャケットとインサートの確認¶
UKオリジナル盤のジャケットは、厚手のカードボードに光沢コーティングが施されているものが多く、再発盤と比較すると紙質の違いがわかります。また、初回プレスにはインナースリーブにBlanco y NegroやCreation Recordsのカタログが印刷されている場合があり、これもオリジナル盤を判別する手がかりになります。
中古レコードの注意点¶
The Jesus and Mary Chainの中古レコードを購入する際は、以下のポイントに注意しましょう。
グレーディングの確認¶
中古レコードの状態はグレーディングで表されます。NM(Near Mint)やVG+(Very Good Plus)といった基準を理解しておくことで、期待する音質の盤を適切な価格で購入できます。特にPsychocandyのようなノイズの多い作品は、盤面のキズによるノイズと音楽としてのノイズを混同しやすいため、できれば試聴してから購入するのがベストです。
保管状態に注意¶
1980〜90年代のインディーレコードは、保管状態にばらつきがあることが少なくありません。以下のポイントを購入前にチェックしましょう。
- 盤面: 目視で深いキズやスクラッチがないか確認する
- ジャケット: 角の折れ、リングウェア(盤の跡がジャケットに浮き出る現象)、水シミの有無
- インナースリーブ: 破れや欠品がないか。オリジナルのインナースリーブが残っていることはコレクター的価値に影響する
再発盤という選択肢¶
オリジナル盤にこだわらないのであれば、近年リリースされている再発盤は音質面でも優れた選択肢です。特にPsychocandyは複数回にわたってリマスター再発されており、180g重量盤のリイシューはオリジナル盤に匹敵する音質との評価もあります。まずは手頃な再発盤で作品を楽しみ、気に入ったらオリジナル盤を探すというアプローチもおすすめです。
信頼できる店舗での購入¶
特にオリジナル盤を狙う場合は、信頼できるレコードショップやDiscogsなどのマーケットプレイスで購入するのが安心です。出品者の評価や返品ポリシーを事前に確認し、不明な点があれば遠慮なく質問しましょう。レコードの購入場所についてはレコードの購入場所ガイドも参考にしてください。
まとめ¶
- The Jesus and Mary Chain(ジーザス・アンド・メリー・チェイン)は、フィードバックノイズと甘いメロディの融合で音楽史に革命を起こしたバンド。最初の1枚には『Psychocandy』を強くおすすめします
- 2ndアルバム『Darklands』はメロディ重視の名盤で、ノイズが苦手な方にも入りやすい作品です
- オリジナル盤はCreation RecordsとBlanco y Negroの2レーベルに分かれるため、時期ごとのレーベル情報を把握しておくことが重要です
- 中古盤購入時はグレーディングの確認を忘れずに。再発盤も音質面で優れており、入門には最適です
- ノイズの質感とメロディの美しさを最大限に味わうなら、レコードでの再生がおすすめです
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