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The Strokes(ストロークス)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方

2001年、ニューヨークから現れた5人の若者が、ロックンロールの原点回帰を鮮烈に宣言しました。The Strokes(ストロークス)は、デビューアルバム『Is This It』でガレージロック・リバイバルの幕を開け、2000年代のロックシーンを根底から揺さぶった存在です。ガレージロックの荒削りなエネルギーと、ニューウェイヴ由来の洗練されたメロディセンスを融合させた彼らのサウンドは、アナログレコードで聴くことでその魅力がいっそう引き立ちます。本記事では、バンドの概要からおすすめアルバム5選、オリジナル盤の見分け方、中古レコードの購入時に押さえておきたいポイントまで、詳しくご紹介します。

バンドの概要

The Strokesは、1998年にニューヨーク・マンハッタンで結成されました。ジュリアン・カサブランカス(ボーカル)、ニック・ヴァレンシ(リードギター)、アルバート・ハモンドJr.(リズムギター)、ニコライ・フレイチュア(ベース)、ファブリツィオ・モレッティ(ドラムス)の5人は、いずれもニューヨークの私立学校やスイスの寄宿学校で出会った仲間です。上流階級の出自でありながら、ダウンタウンのライブハウスで泥臭くキャリアを積み上げたという二面性が、バンドの独特なカリスマ性を形作っています。

バンドが最初に注目を浴びたのは、2001年1月にRough Trade Recordsからリリースされた3曲入りEP『The Modern Age』でした。イギリスの音楽メディアが熱狂的に反応し、リリース前からロンドンのインディーシーンで話題が沸騰します。同年7月にはデビューアルバム『Is This It』がRough TradeからUK先行でリリースされ、全英チャート2位を記録。10月にはRCA Recordsから北米盤が発売され、全世界的なヒットとなりました。

The Strokesの登場は、当時ポストロックやエレクトロニカが主流だったインディーシーンに衝撃を与えました。The Velvet Undergroundのローファイな質感、Television(テレヴィジョン)の絡み合うツインギター、The Clashのパンク的な衝動を2000年代のフィルターを通して再解釈したサウンドは、「ロックは死んだ」という言説を一蹴するものでした。彼らの成功はWhite Stripes、The Libertines、Arctic Monkeysといった同時代のバンドとともにガレージロック・リバイバルという大きなムーブメントを形成し、2000年代のロックの方向性を決定づけました。

これまでに6枚のスタジオアルバムをリリースしており、活動ペースこそゆるやかになりましたが、2020年の『The New Abnormal』ではグラミー賞最優秀ロックアルバムを受賞。20年以上にわたって第一線で存在感を示し続けるバンドです。

おすすめアルバム5選

1. Is This It(2001年)

ロック史に燦然と輝くデビューアルバムにして、2000年代を代表する名盤です。プロデューサーのゴードン・ラファエルとともに、ニューヨークのTransporterammschlagスタジオで録音されました。意図的にローファイに抑えられたプロダクションが、楽曲の生々しいエネルギーを引き立てています。

「Last Nite」「Someday」「Hard to Explain」など、シンプルなリフとタイトなリズムで構築された楽曲群は、一聴してキャッチーでありながら絶妙な緊張感を孕んでいます。ジュリアン・カサブランカスのけだるいボーカルと、ヴァレンシとハモンドJr.のツインギターの絡みは、何度聴いても新鮮な魅力があります。全11曲36分という簡潔さも、レコードのA面・B面構成と相性が抜群です。

  • おすすめポイント: レコードで聴くと、意図的に削ぎ落とされたローファイ・サウンドがアナログの温かみと合致し、まるでライブハウスの最前列にいるかのような臨場感が味わえます。
  • 中古相場: UK盤(Rough Trade)のオリジナルは8,000円〜20,000円程度。US盤(RCA)は5,000円〜12,000円程度。再発盤であれば3,000円前後で入手可能です。

2. Room on Fire(2003年)

デビュー作の延長線上にありながら、楽曲の構成力とメロディの洗練度を大幅に引き上げた2ndアルバムです。プロデューサーにナイジェル・ゴッドリッチ(Radiohead、Beck等で知られる)を迎え、サウンドのレイヤーがより精緻になりました。

「Reptilia」の切り裂くようなギターリフ、「12:51」のシンセサイザーを取り入れたニューウェイヴ的アプローチ、「Under Control」の美しいバラードなど、バンドの表現力の幅広さが如実に表れた作品です。デビュー作の熱狂と比較されがちですが、時間が経つにつれ再評価が進み、ファンの間ではデビュー作と並ぶ最高傑作との声も少なくありません。

  • おすすめポイント: ナイジェル・ゴッドリッチのプロダクションが生む空間性と、各楽器の分離の良さがレコードで際立ちます。特にベースラインの存在感はアナログ再生ならではです。
  • 中古相場: US盤(RCA)のオリジナルは5,000円〜10,000円程度。比較的流通量が多く、手頃な再発盤も見つけやすい一枚です。

3. First Impressions of Earth(2006年)

前2作のミニマルな美学から一転、音の厚みとスケール感を大胆に拡張した3rdアルバムです。全14曲52分という収録時間は、バンドにとって最長のアルバムとなりました。「Juicebox」のヘヴィなベースリフ、「Heart in a Cage」のポストパンク的な緊迫感、「Ize of the World」の壮大な展開など、野心的な楽曲が並びます。

リリース当初は賛否両論でしたが、The Strokesが「ガレージロック・バンド」という枠に収まらないことを示した重要な転換点であり、現在では再評価の機運が高まっています。

  • おすすめポイント: 音圧の高いミックスが特徴のアルバムですが、レコードではデジタル特有の音の圧迫感が和らぎ、各パートの立体感が浮かび上がります。重量感のあるサウンドをアナログで体感できる一枚です。
  • 中古相場: US盤(RCA)で4,000円〜8,000円程度。プレス数が前2作に比べて少なく、状態の良い盤はやや見つかりにくい傾向があります。

4. The New Abnormal(2020年)

約7年ぶりの復帰作にして、グラミー賞最優秀ロックアルバムに輝いた6thアルバムです。プロデューサーにリック・ルービンを迎え、Shangri-La Studiosで録音されました。「Bad Decisions」「Brooklyn Bridge to Chorus」のキャッチーなシングル群に加え、「At the Door」のシンセを主体とした内省的なバラード、「Ode to the Mets」の壮麗なフィナーレなど、成熟したソングライティングが光ります。

初期の衝動的なエネルギーとは異なる、円熟味のある味わいが魅力です。20年のキャリアを経て到達した境地を、レコードでじっくりと味わっていただきたい作品です。

  • おすすめポイント: リック・ルービンらしい温かくオーガニックなプロダクションがアナログ盤と好相性。ヴォーカルの生々しさと楽器の豊かな倍音が存分に楽しめます。
  • 中古相場: Cult Records / RCA盤で4,000円〜7,000円程度。比較的新しいリリースのため、新品・中古ともに入手しやすい状況です。

5. Angles(2011年)

約5年ぶりとなった4thアルバムで、シンセポップやレゲエ、ファンクなど、多彩なジャンルの要素を取り込んだ意欲作です。「Under Cover of Darkness」はThe Strokes流のギターロック・アンセムとして高い人気を誇り、「Machu Picchu」の陽性なグルーヴ、「Life Is Simple in the Moonlight」の美しい余韻など、アルバムを通じてバンドの新たな一面が垣間見えます。

メンバー間の緊張関係が伝えられた時期の作品ですが、音楽的にはむしろその葛藤が創造性に転化されており、聴きどころの多いアルバムに仕上がっています。

  • おすすめポイント: 多彩な音楽要素が盛り込まれたサウンドスケープは、レコードの温かい再生環境でこそバランスよく響きます。特にシンセサイザーの音色がアナログの質感で心地よく耳に届きます。
  • 中古相場: RCA盤で3,000円〜6,000円程度。流通量が多く、比較的手頃な価格で見つかります。

オリジナル盤の見分け方

The Strokesのレコードコレクションにおいて最も重要なのは、デビューアルバム『Is This It』のオリジナル盤の判別です。リリース経緯が複雑なため、整理して解説します。

Is This It のUK盤とUS盤の違い

『Is This It』はUKとUSで異なるレーベルからリリースされており、収録曲にも違いがあります。

UK盤(Rough Trade Records)

  • カタログナンバー: RTRADELP 030
  • 2001年7月リリース(世界初リリース)
  • 「New York City Cops」を収録
  • ジャケット: 女性のヒップにグローブを置いた写真(コリン・レーンによる撮影)
  • レーベル面: Rough Tradeの白地にロゴのデザイン

US盤(RCA Records)

  • カタログナンバー: 07863 68045-1
  • 2001年10月リリース
  • 9.11同時多発テロの影響で「New York City Cops」を「When It Started」に差し替え
  • ジャケット: UK盤の写真がアメリカでは物議を醸したため、素粒子の軌跡をモチーフにしたデザインに変更
  • レーベル面: RCAのロゴ

この2つの違いは、コレクターにとって非常に重要なポイントです。特にUK盤のRough Tradeオリジナル・プレスは初回流通数が限られており、希少価値が高くなっています。

Room on Fire以降の作品

2ndアルバム以降はRCA Recordsからの統一リリースとなるため、判別はシンプルです。

  • Room on Fire: カタログナンバー 82876 56710-1(US盤)。初回プレスはゲートフォールド仕様のジャケットで、インナースリーブにバンドの写真が掲載されています。
  • First Impressions of Earth: カタログナンバー 82876 73718-1(US盤)。初回プレスのレコード盤は通常の黒色ですが、限定盤として赤色のカラーヴァイナルが存在します。

マトリクスナンバーの確認

すべてのアルバムに共通して、ランアウトグルーブ(盤面の最内周)に刻印されたマトリクスナンバーを確認することが、プレスの特定に有効です。初回プレスには特有の刻印やマスタリング・エンジニアのイニシャルが含まれることがあり、再発盤とは異なる番号が記録されています。Discogsなどのデータベースでカタログナンバーとマトリクスを照合すれば、手元の盤が初回プレスかどうかを正確に判定できます。

The Modern Age EP

デビュー前にRough Tradeからリリースされた3曲入り10インチEP(カタログナンバー: RTRADES 010)は、The Strokes関連で最も希少なアイテムの一つです。初回プレスはわずかな枚数しか製造されておらず、状態の良いものは高額で取引されています。レーベル面のRough Tradeロゴとカタログナンバーで正規盤を確認してください。

中古レコードの選び方と注意点

盤の状態を最優先で確認する

The Strokesのアルバムは2000年代以降のプレスが中心ですが、それでも20年以上が経過した盤は経年劣化が進んでいる場合があります。購入前には必ず盤質のグレーディングを確認し、VG+以上の状態を選ぶことをおすすめします。特に『Is This It』のように静かなイントロからスタートする楽曲が多いアルバムでは、盤面のスクラッチやダストによるノイズが目立ちやすいため、状態の良い盤を選ぶことが重要です。

ジャケットの状態にも注意してください。『Is This It』UK盤のジャケットはコーティングされた紙を使用しているため、スレや角の傷みが生じやすい傾向があります。リングウェアの有無もチェックポイントです。

オリジナル盤と再発盤の使い分け

コレクターとしてオリジナル盤を手に入れる喜びは格別ですが、純粋に音楽を楽しむ目的であれば、近年の再発盤も十分に高音質です。特に180g重量盤のリイシューはリマスタリングが施されているものもあり、音のクリアさではオリジナル盤を上回る場合もあります。まずはリーズナブルな再発盤で作品を楽しみ、気に入ったアルバムのオリジナル盤を少しずつ探していくのが、無理のないコレクションの進め方です。

限定盤・カラーヴァイナルの価値

The Strokesのアルバムには、カラーヴァイナルやインディーショップ限定盤が存在するものがあります。『First Impressions of Earth』の赤盤、『The New Abnormal』のインディーショップ限定カラー盤などは通常盤よりも流通量が少なく、コレクターズアイテムとして価値が上昇する傾向があります。ただし、カラーヴァイナルは黒盤と比べて音質がわずかに劣るという意見もあるため、リスニング重視かコレクション重視かで選び方が変わってきます。

信頼できる購入先を選ぶ

The Strokesは世界的に人気のあるバンドであるため、非公式なブートレグや海賊盤が出回る可能性もゼロではありません。オンラインで購入する際は、出品者の評価やレビューを必ず確認し、カタログナンバーやレーベル情報をDiscogsで照合しましょう。実店舗のレコードショップであれば、スタッフに状態やプレス情報を確認できるため、より安心して購入できます。

価格が極端な場合は疑う

相場から大きく外れた安値の場合は、状態が悪いか海賊盤の可能性があります。逆に高額すぎる場合も、適正価格をDiscogsの取引履歴で確認してから判断することをおすすめします。焦らず、自分が納得できる価格と状態の盤に出会えるまで待つのも、レコード収集の楽しみの一つです。

まとめ

The Strokes(ストロークス)は、2000年代のロックシーンに決定的な転換をもたらしたバンドです。The Velvet UndergroundやTelevisionといったニューヨークの偉大な先人たちの遺伝子を受け継ぎながら、独自のクールネスと疾走感で新しいロックの形を提示しました。デビューから20年以上が経った今も、その影響力は色褪せることがありません。

レコードで聴くThe Strokesの魅力は、ローファイなプロダクションとアナログ再生の親和性の高さにあります。ジュリアン・カサブランカスの声のざらつき、ツインギターの絡み合い、タイトなリズムセクションの一体感が、レコードの溝から立ち上がる瞬間は格別です。『Is This It』のUK盤オリジナルを手に入れるのはコレクターとしての目標の一つですが、まずは気軽に再発盤を手に取り、ターンテーブルに針を落としてみてください。2000年代ニューヨークの空気がそこに詰まっています。

一枚ずつアルバムを集めながら、バンドの進化の軌跡をたどる。それこそが、The Strokesのレコードを楽しむ醍醐味です。


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