The Verve(ザ・ヴァーヴ)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方¶
イギリスが生んだ壮大なサウンドスケープの魔術師、The Verve(ザ・ヴァーヴ)。「Bitter Sweet Symphony」の鳴り出しを一度耳にすれば、その圧倒的なスケール感は忘れられません。シューゲイザー的な音の壁とソウルフルなボーカルが融合した彼らの音楽は、アナログレコードで聴くことでその真価が発揮されます。本記事では、The Verveのおすすめレコードとオリジナル盤の見分け方、中古盤購入時の注意点まで詳しく解説します。
The Verveとは?バンドの概要¶
The Verveは1990年にイングランド北西部ウィガン(グレーター・マンチェスター)で結成されたロックバンドです。主要メンバーは以下の通りです。
| メンバー | 担当 | 備考 |
|---|---|---|
| リチャード・アシュクロフト | ボーカル | バンドのフロントマン、主要ソングライター |
| ニック・マッケイブ | リードギター | 独創的なギターサウンドの核 |
| サイモン・ジョーンズ | ベース | 重厚なリズムセクションを支える |
| ピーター・ソールズベリー | ドラムス | ダイナミックなリズムワーク |
| サイモン・トング | リズムギター | 1999年以降のメンバー |
結成当初は「Verve」という名義で活動していましたが、ジャズレーベルのVerve Recordsとの名称問題から、1995年に「The Verve」へと改名しています。
彼らの音楽的特徴は、シューゲイザーやスペースロックの影響を受けた広大な音響空間と、リチャード・アシュクロフトの感情を揺さぶるボーカルの融合にあります。初期はサイケデリックでトランス的な長尺ジャムを特徴としていましたが、次第にソングライティングを重視した楽曲構成へと進化。ブリットポップ全盛期に活動しながらも、OasisやBlurとは異なるスケール感と深遠さで独自の立ち位置を築きました。ニック・マッケイブのギターワークは「ギターのジミ・ヘンドリックス」とも評され、エフェクトペダルを駆使した幻想的なサウンドはThe Verveの音楽の根幹を成しています。
度重なるメンバー間の衝突と解散・再結成を経験し、スタジオアルバムは4枚と決して多くはありませんが、その一枚一枚がUKロック史に深い足跡を残しています。
おすすめレコード5選¶
1. Urban Hymns(1997年)¶
The Verveの最高傑作にして、全世界で1000万枚以上を売り上げた3rdアルバムです。「Bitter Sweet Symphony」「The Drugs Don't Work」「Lucky Man」「Sonnet」など、バンドの代表曲がずらりと並ぶ、90年代UKロックを代表する名盤中の名盤。オーケストラルなアレンジとニック・マッケイブの繊細かつダイナミックなギターが絶妙に絡み合い、壮大でありながら親密な空間を作り出しています。
レコードで聴くと、アナログならではの温かみがストリングスの響きを一層豊かにし、アシュクロフトのボーカルが空間いっぱいに広がる感覚を味わえます。2LP仕様のため、曲間で盤を裏返す行為も作品の壮大さを体感する一部となるでしょう。
中古相場: Hut RecordingsのUKオリジナル盤(HUTDLP 45)は状態にもよりますが、8,000円〜20,000円程度。近年の180g重量盤リイシューは3,000円〜6,000円程度で入手可能です。
2. A Storm in Heaven(1993年)¶
デビューアルバムにして、The Verveの原点とも言えるスペースロックの傑作。プロデューサーにジョン・レッキーを迎え、リバーブとディレイを多用した幻想的なサウンドスケープが全編を覆います。「Star Sail」「Blue」「Slide Away」など、音の海に身を委ねるような没入感のある楽曲が並び、シューゲイザーやサイケデリック・ロックのファンにも強くおすすめできる一枚です。
レコードならではのアナログの質感が、この作品の霧がかったような音像をより自然に、より深く表現してくれます。CDやストリーミングとは明らかに異なる響きの豊かさを感じられるアルバムです。
中古相場: UKオリジナル盤(HUTLP 10)は6,000円〜15,000円程度。初回プレスは特に希少性が高く、状態次第ではさらに高額になります。
3. A Northern Soul(1995年)¶
バンド内の緊張関係がピークに達する中で制作された2ndアルバム。前作の浮遊感を保ちつつも、よりダークでエモーショナルな方向へ舵を切った作品です。「History」「On Your Own」「Life's an Ocean」など、苦悩と解放が交錯する楽曲群は、アシュクロフトとマッケイブの化学反応が生んだ奇跡的な成果と言えます。
制作後にバンドは一度解散を宣言しており、崖っぷちの緊迫感が音楽に凝縮されています。レコードで聴くと、ギターの歪みやフィードバックの微細なニュアンスが際立ち、スタジオでの生々しい空気感をダイレクトに感じ取ることができます。
中古相場: UKオリジナル盤(HUTLP 27)は5,000円〜12,000円程度。リイシュー盤も出回っていますが、初回プレスの方が音の厚みに優れるとの評価があります。
4. Forth(2008年)¶
2007年の再結成を経てリリースされた、11年ぶりの4thアルバム。「Love Is Noise」「Rather Be」など、成熟したバンドサウンドが堪能できます。『Urban Hymns』の延長線上にありながらも、より落ち着いた大人のロックへと進化した印象で、年月を経たメンバーの深みが感じられる作品です。
再結成アルバムにありがちな「過去の焼き直し」ではなく、きちんと現在進行形のThe Verveを提示している点が評価に値します。レコードでは重量盤でのリリースもあり、音質の良さに定評があります。
中古相場: 3,000円〜8,000円程度。流通枚数が比較的少ないため、状態の良い盤は徐々に価格が上昇傾向にあります。
5. Bitter Sweet Symphony(1997年・12インチシングル)¶
The Verveを語る上で外せないのが、この12インチシングルです。アンドリュー・オールダム・オーケストラによるローリング・ストーンズ「The Last Time」のオーケストラ・カバーをサンプリングした象徴的なストリングスリフは、90年代ロックを代表するイントロのひとつ。12インチシングルにはアルバム未収録のB面曲やリミックスが収録されており、コレクターズアイテムとしての価値も高い一枚です。
The Verveの12インチシングルはいずれもジャケットデザインが美しく、A面・B面のバランスが良いため、アルバムとあわせて揃えたいところです。
中古相場: UKオリジナル盤(HUT T 88)は2,000円〜6,000円程度。プロモ盤や限定カラー盤はさらに高値がつくこともあります。
オリジナル盤の見分け方¶
The Verveのレコードをコレクションする上で押さえておきたいのが、Hut RecordingsのUKオリジナル盤の見極め方です。Hut RecordingsはVirgin Records傘下のレーベルで、The Verveの初期3作品はすべてここからリリースされました。4thアルバム『Forth』はParlophoneからのリリースとなっています。
レーベル面の確認¶
UKオリジナル盤のレーベル面には「Hut Recordings」のロゴとカタログナンバーが印刷されています。主なカタログナンバーは以下の通りです。
| アルバム | カタログナンバー |
|---|---|
| A Storm in Heaven | HUTLP 10 |
| A Northern Soul | HUTLP 27 |
| Urban Hymns | HUTDLP 45(2LP) |
レーベル面にVirginのロゴが併記されている場合はUK盤の可能性が高いですが、ヨーロッパの他国盤にもVirginロゴが入ることがあるため、カタログナンバーとの照合が重要です。
マトリクス番号の読み方¶
盤面の内周(デッドワックス部分)に刻印されたマトリクス番号は、プレスの版を特定する手がかりになります。初回プレスには「-1」や「-A」といった末尾の記号が確認できることが多く、数字が若いほど初期プレスである可能性が高まります。また、手書きの刻印(ハンドエッチング)がある盤は、マスタリングエンジニアの手によるもので、コレクター間で高く評価されます。
ジャケットと付属品¶
オリジナル盤はジャケットの印刷品質が高く、紙質もしっかりしています。特に『Urban Hymns』はゲートフォールド(見開き)ジャケットの内側にメンバー写真やクレジットが記載されており、リイシュー盤と比較すると印刷の精緻さに差があります。インナースリーブやライナーノーツが揃っているかどうかも、オリジナル盤を判別する重要なポイントです。
中古レコードを購入する際の注意点¶
The Verveのレコードは、特に『Urban Hymns』を中心に人気が高く、中古市場でも活発に取引されています。購入時には以下の点に注意しましょう。
盤面のコンディション¶
中古レコードの購入では、盤質の確認が最も重要です。盤面を光にかざして傷の有無をチェックし、深い傷やカビがないか確認しましょう。The Verveの楽曲はダイナミクスの幅が広く、静かなパートではノイズが目立ちやすいため、状態の良い盤を選ぶことが大切です。
リイシュー盤とオリジナル盤の価格差¶
『Urban Hymns』は近年180g重量盤でリイシューされており、音質も良好です。初めてThe Verveのレコードを購入する方は、まずリイシュー盤で音楽を楽しみ、コレクションへの理解が深まってからオリジナル盤を探すのも賢いアプローチです。一方、『A Storm in Heaven』のオリジナル盤はリイシューの頻度が低く、見つけたときが買い時と言えるかもしれません。
著作権問題に関する注意¶
「Bitter Sweet Symphony」はサンプリング元のローリング・ストーンズ側との著作権問題で有名です。この問題は2019年にミック・ジャガーとキース・リチャーズがクレジットを返還する形で決着しましたが、初期プレスと後期プレスではクレジット表記が異なる場合があります。コレクションとしてはどちらにも歴史的価値がありますので、自分の好みで選んでください。
オンライン購入のコツ¶
海外のレコード通販サイトを利用する場合、送料や関税も考慮に入れましょう。UKオリジナル盤はイギリスのセラーから購入するケースが多いため、国際送料が加算されます。また、盤質の表記(Mint、Near Mint、VG+など)は販売者ごとに基準が異なることがあるため、詳細な写真の確認と、不明点の事前問い合わせを心がけてください。レコードショップでの対面購入も安心できる方法です。
まとめ¶
The Verveは、スペースロック的な壮大さとソングライティングの繊細さを兼ね備えた、90年代UKロックの中でも唯一無二の存在です。スタジオアルバムは4枚と少ないものの、その一枚一枚がレコードで聴く価値のある名盤揃い。特に『Urban Hymns』と『A Storm in Heaven』は、アナログの音質で聴くことで楽曲の持つ空間的な広がりと情感がより鮮明に伝わります。
Hut RecordingsのUKオリジナル盤はコレクターズアイテムとしても魅力的ですが、リイシュー盤でもThe Verveの音楽の素晴らしさは十分に堪能できます。まずは一枚手に取り、ターンテーブルに針を落として、リチャード・アシュクロフトの歌声とニック・マッケイブのギターが織りなす音の宇宙に身を委ねてみてください。
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