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Van Morrison(ヴァン・モリソン)のレコードガイド|おすすめ盤と選び方

Van Morrison(ヴァン・モリソン)は、北アイルランド・ベルファスト出身のシンガーソングライターであり、ロック、ソウル、ジャズ、フォーク、ケルト音楽を独自に融合させた「ケルティック・ソウル」の創始者として知られています。その深く情感に満ちた歌声は、アナログレコードの温かみのある再生環境でこそ真価を発揮します。レコードに針を落とした瞬間から立ち上がる声の気配、バンドとの一体感、そしてスピリチュアルな高揚感は、デジタルでは決して味わえないものです。この記事では、Van Morrisonのレコードコレクションを始めたい方に向けて、おすすめアルバムやオリジナル盤の見分け方、中古盤の選び方を詳しくご案内します。

Van Morrisonとは?アーティストの概要

Van Morrison(本名 George Ivan Morrison)は、1945年に北アイルランドのベルファストに生まれました。音楽好きの父親が所有するブルース、ジャズ、カントリーのレコードコレクションに囲まれて育ち、幼少期からリードベリー、マディ・ウォーターズ、ハンク・ウィリアムズ、レイ・チャールズといったアーティストに親しみました。この多彩な音楽的ルーツが、のちの唯一無二のスタイルの基盤となっています。

キャリアの変遷

Van Morrisonの音楽キャリアは、60年以上にわたる長大なものです。

  • Them期(1964〜1966年) — ベルファストで結成したロックバンド「Them」のフロントマンとして活動。「Gloria」「Here Comes the Night」などのヒットを放ち、ブリティッシュ・インヴェイジョンの一翼を担いました。R&Bとガレージロックを融合させた荒削りなサウンドが特徴です
  • 初期ソロ期(1967〜1970年) — ニューヨークに渡り、プロデューサーのバート・バーンズのもと『Blowin' Your Mind!』でソロデビュー。「Brown Eyed Girl」が全米10位の大ヒットとなります。1968年にはWarner Bros. Recordsと契約し、『Astral Weeks』『Moondance』という2枚の傑作を立て続けにリリースしました
  • 黄金期(1970〜1974年) — 『His Band and the Street Choir』『Tupelo Honey』『Saint Dominic's Preview』『Veedon Fleece』など、充実した作品を次々と発表。音楽的にはR&B、フォーク、ジャズ、カントリーを自在に行き来しながら、詩的でスピリチュアルな歌詞世界を深めていきました
  • 探求期(1979〜1990年代) — 『Into the Music』以降、ケルト神秘主義やスピリチュアリティを前面に打ち出した作品が増えます。『Irish Heartbeat』ではアイルランドの伝統音楽グループ、ザ・チーフタンズと共演。ジャズ色の強い『Astral Weeks Live at the Hollywood Bowl』も話題となりました
  • 現在に至るまで — 40枚以上のスタジオアルバムをリリースし、ロックの殿堂入りも果たしています。即興的なライブパフォーマンスでも知られ、同じ曲でもステージごとにまったく異なるアレンジを披露することで有名です

音楽的特徴

Van Morrisonの音楽は、一つのジャンルに収まりません。その特徴を挙げると以下のようになります。

  • ケルティック・ソウル:アイルランドの伝統音楽とアメリカンR&B・ソウルミュージックを融合させた、彼だけの音楽スタイル
  • ジャズの即興性:ライブでの自由な即興演奏やスキャット、同じフレーズの反復による恍惚的な表現
  • 詩的な歌詞:ウィリアム・ブレイクやW.B.イェイツの影響を受けた文学的な歌詞。風景描写と内面の探求が一体となった独自の詩世界
  • 声そのものの表現力:ささやきから絶叫まで、声のダイナミクスを最大限に活用した歌唱スタイル。言葉にならない唸りやスキャットが楽器のように機能します

おすすめアルバム5選

Van Morrisonの膨大なディスコグラフィーの中から、レコードで聴く価値が特に高い5枚を厳選してご紹介します。

1. Astral Weeks(1968年)

レーベル:Warner Bros. Records

Van Morrisonの2ndソロアルバムにして、ロック史に残る不朽の名盤です。ジャズミュージシャンたちとの即興的なセッションから生まれた本作は、フォーク、ジャズ、クラシック、ブルースが渾然一体となった唯一無二の音世界を展開します。「Astral Weeks」「Cyprus Avenue」「Madame George」「Ballerina」など、すべての楽曲が一つの長い詩のようにつながり、アルバム全体が一つの芸術作品として成立しています。リチャード・デイヴィスのウッドベースとジェイ・バーリナーのアコースティックギターが織りなすサウンドは、レコードで聴くと驚くほど生々しく響きます。

  • おすすめポイント: ジャズ的な即興演奏の空気感がアナログの温かみで再現される。A面・B面の切り替えが作品の「起承転結」と見事に対応
  • 中古相場目安: 国内盤 3,000〜7,000円、US Warner Bros.オリジナル盤 15,000〜50,000円

2. Moondance(1970年)

レーベル:Warner Bros. Records

『Astral Weeks』の内省的な世界から一転、明るくポップなR&Bサウンドへと舵を切った3rdアルバムです。タイトル曲「Moondance」をはじめ、「Into the Mystic」「Crazy Love」「Caravan」「And It Stoned Me」など、Van Morrisonの代表曲が惜しみなく収録されています。ホーンセクションとストリングスを効果的に配したアレンジは華やかでありながら洗練されており、何度聴いても新しい発見があります。レコードで聴くと、各楽器の配置が立体的に浮かび上がり、まるでスタジオの中にいるような臨場感が味わえます。

  • おすすめポイント: ホーンセクションの艶やかな響きがアナログの太い音で堪能できる。入門盤として最適
  • 中古相場目安: 国内盤 2,000〜5,000円、US Warner Bros.オリジナル盤 8,000〜30,000円

3. His Band and the Street Choir(1970年)

レーベル:Warner Bros. Records

『Moondance』の成功を受けてリリースされた4thアルバムで、より軽快でロックンロール色の強い作品です。「Domino」が全米9位のヒットとなり、Van Morrisonにとって「Brown Eyed Girl」以来の大きな商業的成功をもたらしました。「Blue Money」「Call Me Up in Dreamland」「I've Been Working」など、ゴスペルやR&Bのグルーヴが心地よい楽曲が並びます。バンドとの一体感あふれるライブ感覚のレコーディングは、アナログ盤で聴くとその熱気がダイレクトに伝わってきます。

  • おすすめポイント: ゴスペル的なコーラスワークの厚みがレコードの音で際立つ。リラックスした空気感が心地よい
  • 中古相場目安: 国内盤 1,500〜4,000円、US Warner Bros.オリジナル盤 5,000〜15,000円

4. Tupelo Honey(1971年)

レーベル:Warner Bros. Records

当時の妻ジャネット・プラネットとの幸福な生活を反映した、Van Morrisonの最もロマンティックなアルバムです。カントリーとソウルが溶け合ったサウンドに乗せて、「Tupelo Honey」「Wild Night」「(Straight to Your Heart) Like a Candle」「Old Old Woodstock」「Starting a New Life」といった愛と自然への賛歌が綴られます。特に「Tupelo Honey」の甘くたゆたうようなメロディは、レコードの針がゆっくりと溝をなぞる感覚と見事にマッチしています。

  • おすすめポイント: カントリー調のアコースティックサウンドとレコードの相性が抜群。穏やかな休日のリスニングに最適
  • 中古相場目安: 国内盤 1,500〜4,000円、US Warner Bros.オリジナル盤 5,000〜15,000円

5. Veedon Fleece(1974年)

レーベル:Warner Bros. Records

アイルランドに一時帰国した時期に制作された、Van Morrisonの隠れた傑作として近年再評価が進んでいるアルバムです。ケルトの風景と神秘主義が色濃く反映された楽曲群は、静謐でありながら深い情感をたたえています。「Fair Play」「Linden Arden Stole the Highlights」「Who Was That Masked Man」「Cul de Sac」「Country Fair」など、アコースティックギターとフルートを基調とした牧歌的なサウンドが全編を貫きます。派手さはありませんが、レコードで静かに向き合うと、その奥深さに引き込まれる一枚です。

  • おすすめポイント: 静謐なサウンドスケープがレコードの静けさの中で美しく映える。通好みの一枚として所有する喜び
  • 中古相場目安: 国内盤 2,000〜5,000円、US Warner Bros.オリジナル盤 5,000〜20,000円

オリジナル盤の見分け方

Van Morrisonの主要作品は、Warner Bros. Records(ワーナー・ブラザース・レコード)からリリースされています。オリジナル盤再発盤を見分けるためのポイントを押さえておきましょう。

US Warner Bros.オリジナル盤のチェックポイント

Van MorrisonのUS盤は、Warner Bros.のレーベルデザインの変遷によってプレス時期を判別できます。

チェック項目 初期盤の特徴
レーベル 緑色の「WB」ロゴ(通称グリーンレーベル)が初期プレスの目印。1970年代中期以降は「バーバンク・パームツリー」デザインに移行
マトリクスナンバー ラン・アウト・グルーヴ(デッドワックス)に手彫りの刻印。末尾のアルファベットや数字が若いほど初期プレスの可能性が高い
カタログ番号 「WS」で始まるWarner Bros.番号。『Astral Weeks』は WS 1768
ジャケット 初期盤は厚手のボール紙にラミネート加工。後期プレスは薄手の紙質になる傾向

UKオリジナル盤の特徴

Van Morrisonは北アイルランド出身のため、UKオリジナル盤にもコレクターの高い関心が寄せられます。

  • レーベル:UK Warner Bros.のグリーンとゴールドのレーベルデザインが初期プレスの特徴。後期はバーガンディ(えんじ色)に変わります
  • 音質の違い:UKプレスは独自のカッティングが施されており、US盤とは異なる音の傾向を持ちます。一般的にUK盤はやや引き締まった中域が特徴で、ヴォーカルが前に出る印象があります
  • 『Astral Weeks』UK初回盤:特にコレクター人気が高く、US盤とは異なるミックスバランスが楽しめるとして評価されています

マトリクス番号の読み方

レコードのラン・アウト・グルーヴ(最内周の音溝のない部分)に刻まれたマトリクス番号は、プレス情報を知る重要な手がかりです。

  • 手彫り刻印:初期プレスに多い。カッティングエンジニアのイニシャルが入っていることもあります
  • 機械刻印:後期プレスや再発盤に多い。整然とした文字が特徴です
  • 末尾の記号:「1A/1B」のように面ごとに番号が振られ、数字が若いほど初期のマザー盤から作られたスタンパーである可能性が高くなります

日本盤の特徴

Van Morrisonの国内盤は、ワーナー・パイオニア(のちのワーナーミュージック・ジャパン)からリリースされました。

  • 付き:帯の有無で中古価格が大きく変動します。初版帯は特に希少価値が高い傾向です
  • ライナーノーツ:日本語の解説・歌詞対訳が付属し、資料的価値があります
  • 音質:日本盤はプレス品質が安定しており、状態の良いものはUS盤に匹敵する音質を持っています

中古レコードを買うときの注意点

Van Morrisonのレコードは世界中で長年にわたりプレスされてきたため、中古市場にはさまざまなバージョンが流通しています。購入時に気をつけたいポイントをまとめます。

盤質の確認が特に重要

Van Morrisonの楽曲はアコースティック楽器やヴォーカルの繊細なニュアンスが生命線です。盤面の傷やノイズは聴取体験に大きく影響しますので、グレーディングをしっかり確認しましょう。VG+以上であれば十分に楽しめますが、特に『Astral Weeks』や『Veedon Fleece』のような静謐な作品では、できるだけNM(ニアミント)に近い盤を選びたいところです。

盤質グレーディングの基準を知る

中古レコードの状態は、一般的に以下のグレードで評価されます。

  • M(Mint):未開封・未使用。シュリンク未開封のみ該当
  • NM(Near Mint):ほぼ新品同様。開封済みだが目立つ傷やスレがない
  • VG+(Very Good Plus):軽微なスレがあるが、再生時のノイズはほぼ気にならない
  • VG(Very Good):表面に傷やスレが確認できるが、音楽再生に大きな支障はない

盤質とジャケットの状態は分けて評価されます。「盤質NM / ジャケットVG+」のように表記されるのが一般的ですので、両方を確認するようにしましょう。

プレス違いによる音質差

同じアルバムでも、プレスの国や時期、カッティングエンジニアの違いによって音質が異なる場合があります。特に『Astral Weeks』はUS盤とUK盤で音の印象がかなり違うため、こだわる方は両方を聴き比べてみるのも面白いでしょう。Discogsなどのデータベースで事前にプレス情報を調べておくと、購入時の判断材料になります。

再発盤・リマスター盤も選択肢に

オリジナル盤が高額で手が出ない場合、良質な再発盤も十分な選択肢です。近年の公式リマスター盤は180g重量盤でリイシューされたものも多く、音質面で高い評価を得ています。予算や目的に応じて、オリジナル盤と再発盤を使い分けるのが賢い方法です。

まとめ

Van Morrison(ヴァン・モリソン)は、R&B、ジャズ、フォーク、ケルト音楽を融合させた「ケルティック・ソウル」という唯一無二のジャンルを切り拓いたシンガーソングライターです。その深い声と即興的な音楽表現は、アナログレコードの温かみある再生環境でこそ最大限に引き出されます。まずは『Moondance』や『Astral Weeks』から手に取り、レコードに針を落としてその音世界に身を委ねてみてください。一枚のレコードを通じて、ベルファストからアメリカへ渡った孤高のソウルマンの歌声に出会えるはずです。


関連ページ: 用語集 / レコードの取り扱いガイド / コレクション入門

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