レコードは不便なのに楽しい!アナログだからこそ味わえる魅力とは¶
レコードは不便です。でも、その不便さこそが楽しいのです。 サブスクならワンタップで聴ける音楽を、わざわざ盤をジャケットから取り出し、ターンテーブルに乗せ、針を落として聴く。この一連の「手間」に、デジタルでは決して得られない豊かな体験が詰まっています。
レコードのどこが不便なのか?¶
まずは、レコードが「不便」と言われる理由を正直に整理してみましょう。デジタル音源に慣れた現代の感覚からすると、レコードには確かに多くの手間があります。
再生するまでの手順が多い¶
ストリーミングならスマートフォンで再生ボタンを押すだけですが、レコードの場合は以下のような手順が必要です。
- ジャケットから内袋ごとレコードを取り出す
- 内袋からレコードを取り出し、盤面に指紋がつかないよう縁を持つ
- ターンテーブルにレコードを乗せる
- 回転数(33回転か45回転か)を確認して設定する
- アームを持ち上げて、針を溝の始まりに慎重に落とす
レコードの回し方に慣れてしまえば自然にできますが、最初は緊張する方も少なくありません。
A面・B面をひっくり返す必要がある¶
レコードは片面の収録時間が約20〜25分です。A面が終わったら盤を裏返してB面を再生する必要があります。サブスクのように「アルバム全曲をシームレスに自動再生」とはいきません。途中で席を立ち、レコードをひっくり返すという物理的な作業が発生します。
場所を取る・重い・持ち運べない¶
LP(12インチ盤)は約31cm四方のサイズがあり、1枚あたり約130〜180gの重さがあります。10枚、20枚と増えれば棚のスペースも必要ですし、引っ越しのときは相当な重量になります。通勤電車の中で気軽に聴く、というわけにもいきません。
お手入れが欠かせない¶
レコードは静電気でホコリを吸着しやすく、溝に汚れがたまるとノイズの原因になります。レコードのお手入れは、良い音で聴き続けるために欠かせない習慣です。再生前のクリーニング、保管時の立て置き、直射日光の回避など、デジタル音源なら一切不要な配慮が求められます。
不便なのになぜ楽しい?その理由を深掘りする¶
ここからが本題です。これだけ不便なレコードが、なぜこれほど多くの人を惹きつけるのでしょうか。実は「不便だからつまらない」のではなく、「不便だからこそ楽しい」 という逆転の魅力がレコードにはあります。
手間をかけることで「聴く姿勢」が変わる¶
レコードに針を落とすまでの一連の手順は、いわば音楽を聴くための儀式です。ジャケットを手に取り、盤面を確認し、ターンテーブルに置いて針を落とす。この準備の過程で、自然と「これから音楽を聴くぞ」という意識が高まります。
サブスクでBGMのように流し聴きしていた曲も、レコードで聴くと不思議と新しい発見があるものです。それは音質の違いだけでなく、「能動的に聴く」という姿勢が、音楽体験そのものを深めてくれるからです。レコードの聴き方を意識するだけで、同じ楽曲がまったく違って聞こえます。
A面・B面の区切りがアルバムの構成を際立たせる¶
「ひっくり返す手間」は、実はアルバムの構成をより深く味わうための仕掛けでもあります。多くのアーティストは、A面とB面それぞれに起承転結を意識した曲順を組んでいます。A面の最後の曲で余韻に浸り、レコードを裏返し、B面の1曲目で新たな展開が始まる — この「間」がアルバム体験に奥行きを与えてくれるのです。
ストリーミングではトラック6からトラック7へ自動的に切り替わるだけですが、レコードではその切り替わりに自分の手が介在することで、アルバムの流れをより意識的に体験できます。
モノとしての存在感が所有の喜びを生む¶
場所を取るという不便さは、裏を返せば「そこに確かに在る」という実感です。棚に並んだレコードのジャケットは、自分の音楽遍歴を形にしたものであり、インテリアとしての美しさも持っています。
デジタルライブラリの楽曲数は表示できても「触れる」ことはできません。一方、レコードはジャケットアートの質感、盤のずっしりした重み、ライナーノーツの活字まで、五感で楽しめる音楽メディアです。この所有の実感こそ、レコードリバイバルを支える大きな要因のひとつです。
お手入れが「愛着」を育てる¶
クリーニングや保管への配慮は確かに手間ですが、その手間が盤への愛着を深めてくれます。自分の手で丁寧にケアしたレコードから澄んだ音が出たとき、その満足感はデジタルでは味わえないものです。
料理に例えると、出来合いの総菜と自分で作った料理のどちらが心に残るか、ということに近いかもしれません。手間をかけた分だけ、音楽との距離が縮まるのです。
不便さを「楽しさ」に変える具体的なコツ¶
レコードの不便さを前向きに楽しむために、実践的なコツをご紹介します。
再生の手順を「リラックスタイム」にする¶
レコードを聴く時間を、あえて日常のスイッチを切り替える儀式として位置づけてみましょう。仕事が終わった夜、ターンテーブルの電源を入れ、今日聴きたい1枚を棚から選ぶ。この時間そのものが、デジタルデトックスとリフレッシュの時間になります。
「1枚通して聴く」をルールにする¶
サブスクではスキップが当たり前ですが、レコードではアルバム1枚を最初から最後まで通して聴くことを意識してみてください。アーティストが意図した曲順で聴くことで、シャッフル再生では見えなかったアルバムの物語が浮かび上がります。
レコードを選ぶ過程も楽しむ¶
レコードショップで棚を1枚1枚めくりながら掘る「ディグ」の楽しさは、検索窓にアーティスト名を入力するのとはまったく異なる体験です。ジャケットのデザインに惹かれて手に取った1枚が、生涯の愛聴盤になることもあります。試聴マナーを知っておけば、お店でも気兼ねなく音を確認できます。
お手入れを習慣化する¶
クリーニングや保管に必要な手間は、ルーティン化してしまえば負担ではなくなります。再生前にクリーニングクロスで盤面を軽く拭く、聴き終わったらすぐに内袋に戻す — この2つだけでも、盤のコンディションを長く保てます。
デジタルとアナログは「対立」ではなく「共存」¶
レコードの楽しさを語ると「デジタルはダメなのか」と思われがちですが、そうではありません。普段はストリーミングで幅広く音楽を楽しみ、特にお気に入りのアルバムはレコードで深く味わう — こうした使い分けをしている愛好家はとても多いです。
サブスクで出会った音楽をレコードで買い直す、という流れも珍しくありません。むしろサブスクがあるからこそ、「この1枚を手元に置きたい」という気持ちが明確になるのです。レコードの音がデジタルと違う理由を理解すると、使い分けの楽しさがさらに広がります。
不便さを受け入れたその先にあるもの¶
レコードの不便さは、現代の「効率」や「便利さ」とは正反対の価値観です。しかし、すべてが効率化された日常の中で、あえて手間をかけて音楽と向き合う時間は、想像以上に豊かなものです。
初めてレコードを買う方には、まず1枚、本当に好きなアルバムをレコードで手に入れてみることをおすすめします。ジャケットを眺め、針を落とし、スピーカーから流れる音に耳を傾ける。その体験が、「不便なのに楽しい」の意味を実感させてくれるはずです。
まとめ¶
- レコードは再生の手間・裏返しの手間・お手入れの手間など、確かに不便です。しかし、その不便さが音楽体験を深める大きな要因になっています
- 針を落とすまでの儀式的な準備が、「能動的に聴く姿勢」を自然に生み出します
- A面・B面の区切りは、アーティストが意図したアルバムの構成を際立たせる仕掛けです
- モノとしての存在感やお手入れの手間が、レコードへの愛着と所有の喜びを育てます
- デジタルとアナログは対立するものではなく、使い分けることで音楽生活がより豊かになります
用語集では、本記事で登場した専門用語の詳しい解説もご覧いただけます。
Digital & Analog in Harmony.
テクノロジーとカルチャーの交差点から、共鳴を生み出す。Harmonic Society は、アナログの温もりとデジタルの可能性を掛け合わせ、音楽と文化の新しい体験を届けています。姉妹サイト Harmonic Society Philosophy では古代から現代までの哲学を、Post Web3 ではWeb3・ブロックチェーンの専門分析を発信しています。