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プログレッシブロックとは?歴史・代表バンド・おすすめレコードを解説

プログレッシブロック(Progressive Rock / プログレ)とは、1960年代後半から1970年代にかけて隆盛したロックの発展形です。クラシック音楽やジャズの要素を取り入れた複雑な楽曲構成、変拍子、長尺の組曲、コンセプトアルバムが特徴で、レコードのA面・B面という物理的な制約を芸術的に昇華させたジャンルです。

プログレッシブロックの定義と音楽的特徴

プログレッシブロックとは何か

プログレッシブロック(Progressive Rock)は、「前進的な」「進歩的な」という意味の通り、ロック音楽の可能性を追求したジャンルです。1960年代のサイケデリックロックから発展し、ロックという枠組みの中でより高度で複雑な音楽表現を目指しました。

プログレッシブロックの主な特徴は以下の通りです。

  • 長尺の楽曲: 3分間のポップソングの枠を超え、10分〜20分を超える組曲形式の楽曲が多い
  • 複雑な楽曲構成: 複数の楽章からなる組曲形式、頻繁な曲調の変化、予測不可能な展開
  • 変拍子: 7拍子、9拍子、13拍子など、ポップミュージックでは珍しい拍子の使用
  • クラシック音楽の影響: オーケストラ楽器(フルート、ヴァイオリン、チェロなど)の使用、クラシカルな和声進行
  • 高度な演奏技術: メンバーは音楽学校出身者や楽器の名手が多く、技巧的なソロパートが多い
  • コンセプトアルバム: アルバム全体で一つのストーリーやテーマを描く作品が多い
  • 幻想的・文学的歌詞: 神話、SF、ファンタジー、哲学などをテーマにした歌詞
  • アートワークへのこだわり: ロジャー・ディーン、ヒプノシスといったアーティストによる芸術的なジャケットデザイン

「プログレ」と略されることも多く、日本では「進歩的ロック」と呼ばれた時代もありました。

プログレッシブロックのルーツ

プログレッシブロックは、以下のジャンルから影響を受けて成立しました。

影響元 プログレッシブロックへの影響
クラシック音楽(バッハ、ストラヴィンスキー等) オーケストラアレンジ、複雑な楽曲構成、組曲形式
サイケデリックロック(Pink Floyd初期等) 実験精神、長尺のインストゥルメンタル、音響実験
ジャズ(マイルス・デイヴィス等) 即興演奏、変拍子、高度な演奏技術
ブリティッシュフォーク アコースティック楽器の使用、牧歌的な雰囲気
現代音楽(20世紀クラシック) 前衛性、無調音楽、電子音響

プログレッシブロックの歴史

黎明期(1967〜1969年)

プログレッシブロックの源流は、1967年前後のサイケデリックロックにあります。Pink Floydの『The Piper at the Gates of Dawn』(1967年)、Procol Harumの「A Whiter Shade of Pale」(1967年)、The Moody Bluesの『Days of Future Passed』(1967年)などが、ロックとクラシックの融合を試みた先駆的作品です。

1969年にはKing Crimsonがデビューアルバム『In the Court of the Crimson King』をリリース。この作品はプログレッシブロックというジャンルの事実上の誕生を告げるマスターピースとなりました。

黄金期(1970〜1976年)

1970年代前半は、プログレッシブロックの黄金期です。イギリスを中心に次々と傑作アルバムが生まれ、世界中で商業的にも成功を収めました。

この時代を代表するバンドとアルバムをまとめます。

| バンド | 代表作 | 特徴 | |---|---| | Pink Floyd | 『The Dark Side of the Moon』(1973年) | サイケデリック色を残しつつ、コンセプトアルバムの完成形。史上最も売れたプログレアルバム | | King Crimson | 『In the Court of the Crimson King』(1969年) | プログレの原点。暗く重厚なサウンド、ロバート・フリップのギター | | Yes | 『Close to the Edge』(1972年) | 超絶技巧と複雑な楽曲構成。リック・ウェイクマンのキーボードワーク | | Genesis | 『Selling England by the Pound』(1973年) | ピーター・ガブリエル時代の最高傑作。演劇的でファンタジックな世界観 | | Emerson, Lake & Palmer | 『Tarkus』(1971年) | クラシックの編曲とオルガンの超絶技巧。キース・エマーソンのムーグシンセサイザー | | Jethro Tull | 『Thick as a Brick』(1972年) | LP片面をまるごと一曲にした組曲。フルートロック | | Gentle Giant | 『Octopus』(1972年) | 複雑な変拍子とコーラスワーク。実験的なプログレ | | Camel | 『Moonmadness』(1976年) | 叙情的で美しいメロディが特徴のシンフォニックプログレ |

この時期、プログレバンドは大規模なステージセットとライティングを駆使したライブパフォーマンスも行い、「ロックの芸術化」を推し進めました。

衰退とパンクの台頭(1977〜1979年)

1977年、パンクロックが登場します。短く直截的なパンクの美学は、長尺で難解なプログレと真っ向から対立しました。Sex Pistolsのメンバーは「I hate Pink Floyd」と書かれたTシャツを着て登場し、プログレは「肥大化した恐竜」として批判の対象となりました。

この時期、多くのプログレバンドは解散または活動休止に追い込まれました。GenesisやYesはよりポップな方向に舵を切り、商業的には成功しましたが、プログレ的な要素は薄れていきました。

再評価とネオプログレ(1980年代〜1990年代)

1980年代に入ると、Marillion、IQ、Pendragonといった「ネオプログレ」バンドが登場し、プログレの精神を継承しました。これらのバンドは初期Genesisの影響を色濃く受けつつ、現代的なサウンドプロダクションを取り入れました。

1990年代には、Dream Theater、Porcupine Treeなどの新世代のプログレッシブロックバンドが登場。特にDream Theaterはメタルとプログレを融合した「プログレッシブメタル」というサブジャンルを確立しました。

現代のプログレッシブロック(2000年代〜現在)

2000年代以降、プログレッシブロックは多様化が進みました。Steven Wilson(元Porcupine Tree)のソロプロジェクト、Tool、Opeth、Mastodonなどのプログレッシブメタルバンド、Radiohead、Arcade Fireといったプログレの要素を取り入れたオルタナティブロックバンドなど、ジャンルの境界は曖昧になっています。

また、ヴァイナルレコードの復権により、1970年代のオリジナル盤市場も活発です。特に初回プレス盤、ゲートフォールドジャケット、ポスター付きといった希少なアイテムは高値で取引されています。

プログレッシブロックのレコード おすすめ入門盤5選

プログレッシブロックをレコードで体験したい方のために、入門に最適な5枚を紹介します。

1. Pink Floyd『The Dark Side of the Moon』(1973年)

プログレッシブロック史上最も有名で、最も売れたアルバム。「Time」「Money」「Us and Them」など、人間の精神性をテーマにした楽曲が、アルバム全体で一つの物語を紡ぎます。プリズムのジャケットアートも象徴的です。レコードのA面・B面がそれぞれ完璧な構成になっており、オリジナル盤はコレクターの間で非常に人気があります。レコードで聴くと、その音の広がりと深みに圧倒されます。

2. King Crimson『In the Court of the Crimson King』(1969年)

プログレッシブロックの原点にして頂点。バリー・ゴドバーによるジャケットアート「スキゾイド・マン」の強烈なインパクト、ロバート・フリップのギター、メロトロンの幻想的な音色。「21st Century Schizoid Man」から「The Court of the Crimson King」まで、アルバムの流れはまさに芸術作品です。

3. Yes『Close to the Edge』(1972年)

超絶技巧とメロディの美しさが融合した名盤。A面全体を占める18分を超えるタイトル曲は、プログレ史上最高の組曲の一つです。リック・ウェイクマンのキーボードソロ、ジョン・アンダーソンの天使的なヴォーカル、スティーヴ・ハウのギターワークは圧巻。レコードのA面・B面の構成が作品の意図を最もよく表現しています。

4. Genesis『Selling England by the Pound』(1973年)

ピーター・ガブリエル在籍時のGenesisの最高傑作。イギリスの田園風景や社会風刺をテーマにした文学的な歌詞、複雑なアレンジ、ファンタジックな世界観が魅力です。「Firth of Fifth」のピアノイントロとギターソロは必聴。ヒプノシス(Hipgnosis)によるジャケットアートも美しい作品です。

5. Emerson, Lake & Palmer『Tarkus』(1971年)

キース・エマーソンのハモンドオルガンとムーグシンセサイザーが炸裂する超絶技巧アルバム。A面全体を占める20分を超える組曲「タルカス」は、戦車と犰狳(アルマジロ)を合体させた架空の生物の戦いを描いたコンセプト曲です。ウィリアム・ニールによるジャケットアートのタルカスも強烈な印象を残します。

プログレッシブロックのレコードを買うときの注意点

プログレッシブロックのレコードは、コレクター市場が非常に活発なジャンルです。

  • オリジナル盤の価値が高い: 1970年代の初回プレス盤、特にイギリス盤やドイツ盤は高値で取引されています。Pink Floydの初期盤、King Crimsonの初期盤などは数万円〜数十万円になることも
  • ゲートフォールド(観音開き)ジャケットが多い: プログレのレコードは、見開きジャケット、ポスター、歌詞カード、インサートなどが充実しています。これらの付属品が揃っているかが価格に大きく影響します
  • マトリクス番号を確認: 同じアルバムでも、どの工場でプレスされたかによって音質が異なることがあります。マトリクス番号やランアウトグルーヴの刻印を確認すると、より希少な盤を見つけられます
  • グレーディングを厳密にチェック: ゲートフォールドジャケットは経年劣化しやすいため、ジャケットの開閉部分の割れや擦れを確認しましょう
  • 再発盤も充実している: 近年、多くの名盤が高品質な再発盤として再リリースされています。入門用には再発盤から始めるのがおすすめです

レコードの購入場所については、レコードの購入場所ガイドも参考にしてみてください。

プログレッシブロックをレコードで聴く魅力

プログレッシブロックは、レコードというフォーマットのために作られた音楽と言えます。

  • A面・B面の構成が作品の一部: プログレッシブロックの多くは、レコードのA面に組曲を配置し、B面に関連する楽曲を並べるという構成を意図的に採用しています。ストリーミングで通して聴くのとは異なり、「A面を聴き終えたら、ジャケットを眺めながらレコードを裏返す」という行為自体が作品体験の一部です
  • ダイナミックレンジの広さ: プログレッシブロックは、静寂なアコースティックパートから爆発的なオーケストラパートまで、ダイナミクスの幅が非常に広いジャンルです。レコードのアナログ再生は、このダイナミクスを自然に再現し、デジタルのように圧縮された音では得られない臨場感をもたらします
  • ジャケットアートを鑑賞する喜び: ロジャー・ディーン(Yesなど)、ヒプノシス(Pink Floyd、Genesisなど)、バリー・ゴドバー(King Crimson)といったアーティストによる芸術的なジャケットアートは、12インチという大きなキャンバスで鑑賞してこそ真価を発揮します。ゲートフォールドを開く瞬間のワクワク感は格別です
  • アナログ時代の音楽: 1970年代のプログレッシブロックは、アナログテープで録音され、アナログミキシングで仕上げられた音楽です。制作者が意図した音を聴くためには、同じアナログメディアであるレコードで再生することが最も理にかなっています
  • 集中して聴く体験: プログレッシブロックの長尺の組曲は、「ながら聴き」ではなく、じっくり腰を据えて聴くことを前提に作られています。レコードプレーヤーの前に座り、ジャケットを眺めながら一曲一曲を味わう時間は、現代の忙しい生活の中で貴重な瞑想的体験となるでしょう

まとめ

  • プログレッシブロックは1960年代後半〜70年代のイギリスで生まれた、クラシックやジャズの要素を取り入れた前衛的なロック
  • Pink Floyd、King Crimson、Yes、Genesis、ELPが五大バンド。長尺の組曲、変拍子、コンセプトアルバムが特徴
  • パンクロックの台頭で一度は衰退したが、ネオプログレやプログレッシブメタルとして復活し、現在も影響力を持つ
  • オリジナル盤市場が活発で、ゲートフォールドジャケットやポスター付きの完品は高値で取引される
  • レコードのA面・B面の構成が作品の意図の一部であり、アナログで聴くことで制作者の意図した体験を最も忠実に味わえる

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テクノロジーとカルチャーの交差点から、共鳴を生み出す。Harmonic Society は、アナログの温もりとデジタルの可能性を掛け合わせ、音楽と文化の新しい体験を届けています。姉妹サイト Harmonic Society Philosophy では古代から現代までの哲学を、Post Web3 ではWeb3・ブロックチェーンの専門分析を発信しています。