フォノイコライザーとは?役割・種類・選び方をわかりやすく解説¶
フォノイコライザー(フォノアンプ)は、レコードの再生に欠かせない機器です。レコードから読み取った微弱な信号を増幅し、カッティング時に施された周波数補正を元に戻す役割を担っています。本記事では、フォノイコライザーの仕組み、種類、選び方を初心者にもわかりやすく解説します。
フォノイコライザーの役割¶
なぜフォノイコライザーが必要なのか¶
レコードの音溝からカートリッジが読み取る信号には、2つの問題があります。
- 信号が非常に微弱: カートリッジの出力はMM型で約5mV、MC型では約0.5mV程度。CDプレーヤーやスマートフォンの出力(約2V)と比べて数百〜数千分の1の音量しかありません
- 周波数バランスが偏っている: 低音が小さく、高音が大きい状態で記録されている
フォノイコライザーは、この2つの問題を同時に解決します。
RIAA補正とは¶
レコードは製造時にRIAAカーブと呼ばれる特殊な周波数補正が施されています。
- カッティング時: 低音を約20dB小さく、高音を約20dB大きく記録する
- 再生時: フォノイコライザーで逆の補正をかけ、元のフラットな周波数バランスに戻す
なぜこのような処理が必要なのでしょうか。理由は物理的な制約にあります。
- 低音をそのまま刻むと: 溝の振幅が大きくなりすぎて、隣の溝と重なってしまう
- 高音をそのまま刻むと: 溝の振幅が小さすぎて、ノイズに埋もれてしまう
RIAA補正により、限られた溝の幅の中で効率的に音楽を記録できるようになっています。レコードの音がデジタルと異なる理由でも、このRIAA補正について詳しく解説しています。
フォノイコライザーの種類¶
MM型対応とMC型対応¶
フォノイコライザーには、対応するカートリッジの種類によって入力仕様が異なります。
| 項目 | MM型対応 | MC型対応 |
|---|---|---|
| 入力感度 | 約2.5〜5.0mV | 約0.1〜0.5mV |
| 入力インピーダンス | 47kΩ(標準) | 10〜1,000Ω(可変のものが多い) |
| 増幅量 | 約35〜40dB | 約55〜70dB |
| 対象カートリッジ | MM型 / VM型 | MC型 |
| 価格帯 | 比較的安価 | 高価な傾向 |
初心者はMM型対応のフォノイコライザーで十分です。MC型対応が必要になるのは、MC型カートリッジを使用する場合のみです。MM/MC両対応の機種を選べば、将来カートリッジをアップグレードした際にも対応できます。
内蔵型と外付け型¶
フォノイコライザーには、他の機器に内蔵されているものと単体の外付け型があります。
ターンテーブル内蔵型¶
最近のエントリーモデルのターンテーブルには、フォノイコライザーが内蔵されているものがあります。
- メリット: 別途機器を用意する必要がなく、手軽にレコード再生を始められる
- デメリット: 音質は控えめ。内蔵フォノイコライザーの品質はコストの制約を受けやすい
アンプ・ミキサー内蔵型¶
プリメインアンプの「PHONO入力」や、DJミキサーのPHONO端子にはフォノイコライザーが内蔵されています。
- メリット: 追加投資なしでレコード再生が可能
- デメリット: アンプの価格帯によって品質に差がある
外付け型(単体フォノイコライザー)¶
フォノイコライザー専用の単体機器です。
- メリット: 音質にこだわった設計が可能。レコードの音質を最も大きく改善できる機器の一つ
- デメリット: 別途購入費用と設置スペースが必要
フォノイコライザーの選び方¶
予算別のおすすめ方針¶
| 予算 | 方針 | 特徴 |
|---|---|---|
| 〜5,000円 | ターンテーブル内蔵で代用 | まずはレコードを聴き始めることが最優先 |
| 5,000〜15,000円 | エントリークラス外付け | 内蔵型からのステップアップに最適 |
| 15,000〜50,000円 | ミドルクラス外付け | MM/MC両対応、音質に明確な差が出る |
| 50,000円〜 | ハイエンド外付け | 真空管式やディスクリート回路など、本格的な音作り |
選ぶ際のチェックポイント¶
- 対応カートリッジ: 使用中のカートリッジがMM型かMC型か確認する
- ゲイン調整: MC型を使う場合、カートリッジの出力電圧に合わせてゲインを調整できると便利
- インピーダンス設定: MC型カートリッジの推奨負荷インピーダンスに合わせられるか
- サブソニックフィルター: レコードの反りによる超低音ノイズをカットする機能。あると便利
- 電源方式: ACアダプター、内蔵電源、バッテリー駆動など。バッテリー駆動はノイズが少ない傾向
接続方法¶
フォノイコライザーの接続は以下の順番です。
注意点:
- フォノイコライザーの出力をアンプのPHONO入力に接続しないこと。PHONO入力にはアンプ内蔵のフォノイコライザーが含まれているため、二重に補正がかかり音が極端に歪みます
- アンプのPHONO入力を使う場合は、外付けフォノイコライザーは不要です(アンプ内蔵のものを使用)
- ターンテーブルにフォノイコライザーが内蔵されている場合は、内蔵のON/OFFスイッチを確認してください
フォノイコライザーで音はどう変わるか¶
フォノイコライザーを内蔵型から外付けの単体機に変えると、以下のような変化が期待できます。
- 解像度の向上: 楽器の分離が良くなり、細かい音が聞き取りやすくなる
- 低音の締まり: ぼやけていた低音が引き締まり、輪郭がはっきりする
- S/N比の改善: 背景のノイズが減り、静寂感が向上する
- 音場の広がり: ステレオイメージが広がり、音に立体感が出る
同じカートリッジでもフォノイコライザーを変えるだけで音の印象がまったく異なることがあり、レコード再生の奥深さを実感できるポイントです。
よくある質問¶
フォノイコライザーなしでレコードは聴けますか?¶
聴けません。フォノイコライザーを通さないと、音量が極端に小さく、かつ低音がスカスカで高音がキンキンした不自然な音になります。ただし、ターンテーブルやアンプに内蔵されている場合は、別途用意する必要はありません。
真空管式と半導体式はどちらがいいですか?¶
好みの問題です。真空管式は温かみのある厚い音が特徴で、半導体式は正確で解像度の高い音が特徴です。レコードの「温かい音」を重視するなら真空管式、原音に忠実な再生を求めるなら半導体式が向いています。
アンプのPHONO入力と外付けフォノイコライザー、どちらが良いですか?¶
アンプの価格帯によります。高価格帯のプリメインアンプであれば、内蔵フォノイコライザーの品質も高いことが多いです。エントリークラスのアンプなら、外付けの単体フォノイコライザーに変えることで明確な音質向上が期待できます。
まとめ¶
- フォノイコライザーはレコード再生に必須の機器で、微弱な信号の増幅とRIAA補正という2つの役割を担っています
- MM型とMC型で入力仕様が異なるため、使用するカートリッジに合った機種を選ぶことが重要です
- 初心者はMM型対応のエントリーモデルから始めるのがおすすめ。予算は5,000〜15,000円程度で十分です
- 外付けフォノイコライザーへのアップグレードは、レコードの音質を大きく改善できるコストパフォーマンスの高い投資です
- 接続時はPHONO入力との二重接続に注意 — フォノイコライザーの出力はアンプのLINE入力に接続します
用語集では、本記事で登場した専門用語の詳しい解説もご覧いただけます。
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