コンテンツにスキップ

アナログDJのキュー出しができない原因と対処法|初心者が押さえるべき基本

アナログDJでキュー出しができない原因は、ヘッドフォンモニタリングの設定ミス、ミキサーの操作不足、スリップマットの選び間違い、そして手動でのキューポイント探しに慣れていないことの4つに大別できます。この記事では、それぞれの原因を具体的に解説し、初心者がすぐに実践できる対処法をお伝えします。

キュー出しとは何か

キュー出し(Cueing)とは、次に流したい曲の再生開始位置をヘッドフォンであらかじめ確認し、ベストなタイミングでフロアに送り出す技術のことです。アナログDJでは、回転するレコードの溝を手動で操作してキューポイントを見つけるため、デジタルDJのようにボタンひとつでは完結しません。

キュー出しの大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 次にかけたい曲のレコードをターンテーブルにセットする
  2. ミキサーのCUEボタンまたはPFLスイッチを使い、ヘッドフォンでその曲だけをモニタリングする
  3. レコードを手で前後に回し、曲の頭(キューポイント)を正確に見つける
  4. キューポイントで盤を押さえたまま待機し、タイミングを合わせてリリースする

この一連の操作のどこかでつまずくと「キュー出しができない」という状態に陥ります。以降のセクションで、つまずきやすいポイントを一つずつ潰していきましょう。

ヘッドフォンモニタリングの設定を確認する

キュー出しができない原因として最も多いのが、ヘッドフォンモニタリングの設定ミスです。ミキサーのヘッドフォンセクションには複数のツマミやスイッチがあり、これらが正しく設定されていないとキュー音がまったく聴こえません。

チェックすべきポイント

項目 確認内容 正しい状態
CUE / PFLボタン モニタリングしたいチャンネルのCUEボタン 押されている(点灯)
CUE/MIXツマミ ヘッドフォンに送る音のバランス CUE側に寄せるとキュー音のみ聴こえる
ヘッドフォンボリューム ヘッドフォン出力レベル 十分な音量に上げる
ヘッドフォン端子 ケーブルの接続先 ミキサーのHEADPHONE端子に挿す
チャンネルフェーダー キュー用チャンネルのフェーダー位置 キュー時は下げた状態(フロアに音を出さない)

特に初心者が見落としがちなのは CUE/MIXツマミ の存在です。このツマミがMIX側(フロア側)に回りきっていると、ヘッドフォンからはフロアと同じ音しか聴こえず、次の曲を事前に確認できません。まずはCUE側に全振りして、キュー音だけが聴こえる状態を作ってください。慣れてきたらCUEとMIXをブレンドして、フロアの音と次の曲を同時にモニタリングする方法も試せます。

ミキサーの信号の流れを理解する

ヘッドフォン設定が正しいのにキュー音が聴こえない場合、ミキサー全体の信号経路を見直す必要があります。

DJミキサーでは、各チャンネルの信号は以下の順序で流れます。

  1. INPUT(入力セレクター) — PHONO / LINE を選択
  2. TRIM / GAIN — 入力レベルを調整
  3. EQ(イコライザー) — 高域・中域・低域を調整
  4. CUE / PFL — ヘッドフォンモニタリングへ分岐
  5. チャンネルフェーダー — フロアへの出力量を調整
  6. クロスフェーダー — チャンネル間のミックス

キュー出しで重要なのは、CUE / PFLの分岐ポイントがチャンネルフェーダーの 手前 にあるという点です。つまり、チャンネルフェーダーを下げていてもCUEボタンさえ押していればヘッドフォンで音が聴こえるのが正常な状態です。

もし音が聴こえない場合は、入力セレクターが PHONO になっているか確認してください。ターンテーブルからの信号はPHONOレベルで出力されるため、LINEに設定しているとフォノイコライザーを通さない極端に小さな音しか出ません。ターンテーブルの接続とフォノイコライザーの仕組みについても併せて確認しておくと安心です。

キューポイントの見つけ方

ヘッドフォンで音が聴こえるようになったら、次は曲の頭出し(キューポイント探し)です。アナログDJでは、レコードの溝を目と手で探る技術が求められます。

溝の目視で大まかな位置を把握する

レコードの盤面をよく観察すると、曲と曲の間にわずかな隙間(無音部分)が見えます。この隙間は溝の間隔が広く、光の反射具合が周囲と異なるため、慣れると目視で各曲の始まりを判別できます。まずは目視で「この辺りが曲の頭だろう」という大まかな位置に針を落としましょう。

手動逆回転で正確な頭出しをする

大まかな位置に針を落としたら、レコードを手で逆方向にゆっくり回します。曲の最初の音が「ぐっ」と鳴る瞬間を見つけたら、そこから少しだけ(4分の1回転ほど)戻したポイントがキューポイントです。

この作業のコツは以下のとおりです。

  • ヘッドフォンの音量をやや大きめにする — 小さな音の立ち上がりを聴き逃さないため
  • レコードをゆっくり回す — 速く回すと正確な位置がわかりにくい
  • 最初の音の「アタック」を意識する — ドラムのキックやベースの立ち上がりなど、曲の最初に鳴る音を基準にする
  • 見つけたら盤を押さえたまま待機する — スリップマットの上でレコードだけを止め、プラッターは回り続けている状態にする

スリップマットが合っていない場合の対処

キューポイントを見つけても、レコードをリリースした瞬間にスムーズに再生が始まらない。この問題はスリップマットに原因があることが多いです。

通常のリスニング用ターンテーブルには、盤をしっかり固定するゴムマットが付属しています。しかしDJプレイでは、プラッターを回したままレコードだけを手で止めたり逆回転させたりする必要があるため、盤とプラッターの間に適度な「滑り」が不可欠です。

マットの種類 滑りやすさ DJ適性 備考
ゴムマット(付属品) 低い 不向き 盤が固定されて手で動かしにくい
フェルトスリップマット 高い 最適 DJ用の定番。軽量で滑りが良い
コルクマット 中程度 やや不向き 静電気は少ないが滑りが足りない
専用DJスリップマット(低摩擦素材) 非常に高い 最適 バターラグなど。スクラッチにも対応

DJ用途であれば、フェルト製のスリップマット への交換が最優先です。ゴムマットのままキュー出しをしようとすると、盤を逆回転させるのに大きな力が要り、針飛びの原因にもなります。ターンテーブルマットの素材ごとの違いはターンテーブルマットの素材別ガイドでも詳しく解説しています。

また、ダイレクトドライブ方式のターンテーブルを使っているかどうかも重要なポイントです。ベルトドライブ機はトルクが弱く、手で盤を止めるとベルトが滑って回転が不安定になるため、DJ用途にはダイレクトドライブが適しています。

初心者がつまずきやすい5つの落とし穴

ここまでの内容を踏まえて、初心者が特にハマりやすいポイントを整理します。

1. 片耳モニタリングに慣れていない DJはヘッドフォンを片耳にあて、もう片方の耳でフロアの音を聴きます。最初は両方の音が混ざって混乱しますが、CUE/MIXツマミを調整しながら練習を重ねれば自然と慣れます。

2. キューポイントを探すのに時間がかかりすぎる 最初は1曲の頭出しに何十秒もかかるのは普通です。練習では同じレコードを繰り返し使い、溝の見た目と音の位置関係を体で覚えましょう。

3. リリースのタイミングがずれる キューポイントで盤を押さえた状態から手を離すとき、一瞬の遅れが生じます。これを補うために、キューポイントから4分の1回転ほど手前で盤を止めておき、リリース時の「助走」をつける方法が有効です。

4. 針圧が適切でない DJ中にレコードを手で動かす操作は、通常のリスニングよりも針に大きな負荷をかけます。針圧がメーカー推奨値の範囲内で、やや重めに設定されているか確認してください。軽すぎると針飛びが頻発します。

5. そもそもターンテーブルがDJ向きでない リスニング向けのベルトドライブ機やポータブルプレーヤーでは、トルク不足でキュー出し自体が困難です。DJ用途には、Technics SL-1200シリーズに代表されるダイレクトドライブ・ターンテーブルを選びましょう。

練習方法と上達のステップ

キュー出しは頭で理解するだけでは身につかない、手と耳の感覚が重要な技術です。以下のステップで段階的に練習すると効率よく上達できます。

ステップ1:1台のターンテーブルで頭出しを繰り返す まずはミキサーを使わず、ターンテーブル1台とヘッドフォンだけで、好きなレコードの各曲の頭出しを練習します。溝の目視と手動逆回転に慣れることが最優先です。

ステップ2:ミキサーを接続してCUEモニタリングを練習する ターンテーブル2台とミキサーを接続し、片方で曲を流しながらもう片方でキューポイントを探す練習に進みます。CUEボタンの操作とヘッドフォンモニタリングの切り替えを体に染み込ませましょう。

ステップ3:BPMを合わせてリリースする キューポイントが素早く見つけられるようになったら、再生中の曲のテンポ(BPM)に合わせてリリースする練習に入ります。最初はBPMが近い2枚のレコードを選ぶと成功しやすいです。

ステップ4:実際のセットを想定して通しで練習する 30分程度のセットを想定し、4〜5枚のレコードを順番につないでいく練習をします。キュー出しだけでなく、選曲や曲順の判断も含めた総合的なスキルが鍛えられます。

まとめ

  • アナログDJのキュー出しができない原因は、ヘッドフォンモニタリングの設定・ミキサーの信号経路・スリップマットの選択・手技の未熟さの4つに分類できる
  • ミキサーのCUEボタンとCUE/MIXツマミの設定を最初に確認し、キュー音がヘッドフォンに届いている状態を作ることが第一歩
  • 入力セレクターがPHONOになっているか、ヘッドフォン端子に正しく接続されているかといった基本的な配線ミスも見落としやすい
  • キューポイントは溝の目視で大まかな位置を把握し、手動逆回転で正確な頭出しをする
  • ゴムマットではなくフェルト製のスリップマットを使い、ダイレクトドライブのターンテーブルを選ぶことがDJプレイの前提条件
  • 練習は1台での頭出しから始め、段階的にミキサー操作・BPM合わせ・通しセットへとステップアップしていく

用語集では、本記事で登場した専門用語の詳しい解説もご覧いただけます。


Harmonic Society Records — アナログレコードの知識ベース。ホームに戻る


!!! quote "Digital & Analog in Harmony." テクノロジーとカルチャーの交差点から、共鳴を生み出す。Harmonic Society は、アナログの温もりとデジタルの可能性を掛け合わせ、音楽と文化の新しい体験を届けています。姉妹サイト Harmonic Society Philosophy では古代から現代までの哲学を、Post Web3 ではWeb3・ブロックチェーンの専門分析を発信しています。