レコードを回したまま入れ替える方法|DJテクニックと自宅再生の注意点¶
レコードを回したまま入れ替える操作は、DJプレイでは基本テクニックのひとつですが、自宅リスニングでは盤や針を傷めるリスクがあります。この記事では、ターンテーブルが回転している状態で安全にレコードを入れ替える正しい手順と、絶対にやってはいけないNG操作を解説します。
なぜ「回したまま入れ替え」が必要になるのか¶
レコードを回したまま盤を入れ替えたい場面は、大きく分けて2つあります。
ひとつはDJプレイの現場です。クラブやイベントでは、曲と曲の間を途切れさせずにつなぐことが求められます。片方のターンテーブルで曲を再生している間に、もう片方のターンテーブルで次の曲を準備する――この流れのなかで、プラッターが回転したまま盤を素早く入れ替える操作が日常的に行われます。
もうひとつは、自宅でレコードを聴いているときに「いったん止めずに次の盤に替えたい」と思う場面です。A面からB面への裏返しや、別のレコードへの交換で、回転を止めるのが面倒に感じることがあるかもしれません。しかし、この場合は回転を止めてから入れ替えるのが正解です。その理由も後半で詳しく説明します。
DJプレイにおける盤の入れ替え手順¶
DJの現場では、ターンテーブルのプラッターを止めずに盤を入れ替えるのが標準的な操作です。ここでは、スリップマットを使ったDJ向けの基本手順を紹介します。
スリップマットの役割¶
スリップマットとは、プラッターとレコードの間に敷く滑りやすい素材のマットです。通常のターンテーブルマットはゴムやフェルトで盤をしっかり固定しますが、スリップマットはプラッターが回転していても盤を手で止めたり自由に動かしたりできるように設計されています。DJプレイではこのスリップマットが入れ替え操作の要になります。
スリップマットの素材と特徴は以下のとおりです。
| 素材 | 滑りやすさ | 耐久性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| フェルト(薄手) | 高い | やや低い | スクラッチ・ミックス全般 |
| ナイロン / ポリエステル | 非常に高い | 高い | スクラッチ重視のDJ |
| ワックスコーティング付き | 非常に高い | 中程度 | 競技用・バトルDJ |
| バター・ラグ(多層構造) | 極めて高い | 高い | プロフェッショナル用途 |
ターンテーブルマットの素材選びについて詳しく知りたい方は、ターンテーブルマットの素材別ガイドも参考にしてください。
入れ替えの具体的な手順¶
DJプレイでプラッターを回したまま盤を入れ替える手順は次のとおりです。
- トーンアームを上げてアームレストに戻す — 再生が終わった盤、またはミックスを終えた盤から針を上げます。必ずキューイングレバーを使い、手で直接持ち上げないようにします
- 盤を片手で軽く押さえて回転を止める — スリップマットの上でレコードだけが停止し、プラッター自体は回り続けます
- 盤のエッジとレーベル面を持って取り外す — 溝面には絶対に触れないように注意します
- 次のレコードをスリップマット上に載せる — センタースピンドルに合わせて静かに置きます
- 頭出し(キューイング)を行う — 盤を手で逆回転させながら、曲の先頭を探します
- 盤を手で押さえたまま待機し、ミックスのタイミングで手を離す — 手を離した瞬間にプラッターの回転が盤に伝わり、再生が始まります
この一連の操作において、プラッターの回転を一度も止める必要がないのがスリップマットの最大の利点です。
自宅リスニングで回転中に入れ替えるリスク¶
自宅のリスニング環境では、DJプレイとは状況がまったく異なります。家庭用のターンテーブルにはスリップマットではなくゴム製のターンテーブルマットが敷かれているのが一般的で、盤とマットの間に適度な摩擦があります。この状態で回転中に無理に盤を外そうとすると、以下のようなトラブルが起こりえます。
- 盤面にキズがつく — マットとの摩擦で盤が滑らず、無理に引き抜こうとして溝面をこすってしまう
- スタイラス(針)の損傷 — 針を上げ忘れた状態で盤を動かすと、針先が溝を横断して折れたり曲がったりする
- プラッターやスピンドルへの負荷 — 回転中に盤を傾けて外そうとすると、センタースピンドルに横方向の力がかかり、軸受けにダメージを与える可能性がある
- 盤を落とすリスク — 回転の勢いで手が滑り、盤を床に落としてしまう事故が起きやすくなる
結論として、家庭用ターンテーブルではレコードの入れ替え時に必ず回転を止めるべきです。
自宅で安全にレコードを入れ替える正しい手順¶
ホームリスニングでレコードを入れ替える際は、以下の手順を守ることで盤・針・機器のすべてを守れます。
- キューイングレバーで針を上げる — 再生中の曲が終わったら、まず針を盤面から離します
- トーンアームをアームレストに戻し、クランプで固定する — アームが不用意に動かないようにします
- ターンテーブルの回転を止める — スタート/ストップボタンを押して、プラッターの回転が完全に止まるまで待ちます
- レコードを取り外す — 盤のエッジとレーベル面だけを持って、水平に持ち上げます
- 次のレコードをプラッターに載せる — センタースピンドルに穴を合わせ、静かに置きます
- 回転を再開してから針を落とす — 回転が安定したことを確認してから、キューイングレバーで針を下ろします
この手順であれば、溝にもスタイラスにもダメージを与えることなく安全に盤を入れ替えられます。再生手順をもう少し詳しく知りたい方は、レコードの回し方の正解もあわせてご覧ください。
やってはいけないNG操作一覧¶
レコードの入れ替え時に起こりがちなNG操作をまとめました。ひとつでも心当たりがある場合は、今日から改善しましょう。
| NG操作 | 起こりうるダメージ | 正しい対処 |
|---|---|---|
| 針を下ろしたまま盤を引き抜く | 針先の破損、溝の深いキズ | 必ず先にキューイングレバーで針を上げる |
| ゴムマットの上で盤を回しながら外す | 盤面の摩擦キズ、静電気の発生 | 回転を完全に止めてから外す |
| 盤を斜めに引き抜く | スピンドルの曲がり、盤の破損 | 水平に真上へ持ち上げる |
| 溝面を指で押さえて止める | 皮脂汚れ、指紋によるノイズ | エッジかレーベル面だけを触る |
| 回転中に別の盤を重ねて載せる | 下の盤のキズ、回転バランスの崩れ | 必ず1枚ずつ交換する |
| スリップマットなしで盤を手で止める | 盤裏面の摩擦キズ | DJ操作にはスリップマットを使う |
特に「針を下ろしたまま盤を引き抜く」は、カートリッジのカンチレバーを折ってしまう最も多い原因のひとつです。カートリッジの交換は安価ではないため、この一点だけは絶対に守ってください。
DJを始めたい方への機材選びのヒント¶
レコードを回したまま入れ替える操作を日常的に行いたい場合は、DJ向けの機材を揃えることが前提になります。機材選びのポイントを簡潔にまとめます。
ターンテーブルの駆動方式: DJ用途ではダイレクトドライブ方式が標準です。トルクが強く、手で盤を止めてもモーターに負荷がかかりにくい設計になっています。ベルトドライブ方式はリスニング向けに設計されているため、盤を手で止めたり逆回転させたりするDJ操作には適しません。
スリップマット: 先述のとおり、フェルトやナイロン素材のスリップマットはDJプレイの必需品です。既存のゴムマットの上にスリップマットを重ねるのではなく、ゴムマットを外してスリップマットだけを使用するのが正しいセッティングです。
針圧の設定: DJ用途ではスクラッチや急な頭出しで針が飛びやすいため、メーカー推奨の針圧範囲のなかでやや重めに設定するのが一般的です。ただし、重すぎる針圧は溝の摩耗を早めるため、推奨範囲を超えないようにしましょう。
まとめ¶
- レコードを回したまま入れ替える操作は、スリップマットとダイレクトドライブのターンテーブルを使うDJ環境で行うべきテクニックである
- DJプレイでは「針を上げる → 盤を止める → 外す → 次の盤を載せる → 頭出し → タイミングで手を離す」の手順が基本
- 家庭用ターンテーブル(ゴムマット+ベルトドライブ)では、必ず回転を止めてから盤を入れ替えるのが正しい手順
- 最も危険なNG操作は「針を下ろしたまま盤を引き抜くこと」であり、カートリッジの破損に直結する
- DJ操作を始めたい場合は、ダイレクトドライブのターンテーブルとスリップマットの導入が最低限必要
用語集では、本記事に登場した専門用語の詳しい解説もご覧いただけます。
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