Selling England by the Pound|ガブリエル期最高傑作¶
リード文¶
1973年11月に発表されたGenesisの4枚目のスタジオアルバム『Selling England by the Pound』は、ピーター・ガブリエル率いるバンドが到達した最高峰の傑作です。プログレッシブ・ロックの美学を極限まで追い詰めた楽曲群、そして詩情と複雑な楽曲構成を融合させた音世界は、今なお色褪せることのない輝きを放っています。本レビューでは、このアルバムの本質と、Charisma UK盤レコードで聴くべき理由を紹介します。
アルバム概要¶
『Selling England by the Pound』は、Genesis黄金期を象徴する傑作です。前作『Foxtrot』(1972年)での実験的なアプローチを継承しながらも、さらに洗練された楽曲世界へと進化を遂げています。
ピーター・ガブリエルの詩的で複雑な歌詞、Tony Bankのキーボード・アレンジメント、Phil Collinsのドラミング、そしてMike Rutherfordのギター・アレンジメントが融合し、9分を超える組曲が複数収録されています。
このアルバムは、プログレッシブ・ロックというジャンルの本質——複雑性、詩情、楽器テクニック、そしてアルバム全体としての統一感——を完璧に実装した傑作として位置付けられます。
また、商業性と芸術性のバランスが取れた作品でもあります。イギリスで高い評価を受け、バンドの代表作の一つとなりました。
収録曲の聴きどころ¶
「Firth of Fifth」¶
アルバムのハイライトの一つが「Firth of Fifth」です。この楽曲は、Mike Rutherfordのアコースティック・ギターで始まる、まさに詩情の結晶です。
ギター・ソロの美しさ、複雑な音階を使いこなすガブリエルのボーカル、キーボードのアレンジメントの豪華さ——これらすべてが融合し、9分近い時間を感じさせない傑作に仕上がっています。
この曲は、プログレッシブ・ロックの本質を理解する上で、必聴の楽曲です。
「Cinema Show」¶
アルバムを代表するもう一つの楽曲が「Cinema Show」です。これは11分近い大作で、複数の楽曲セクションが組み合わされた組曲構造を持ちます。
ピアノとシンセサイザーの絡み、複雑なリズム・パターン、ガブリエルの表現力豊かなボーカルが、聴き手を幻想的な世界へと導きます。
後半では、ロック的なビート感が強くなり、バンドのアンサンブル能力が遺憾なく発揮されます。このダイナミクスの変化が、この楽曲を傑作たらしめています。
その他の収録曲¶
「Dancing with the Moonlit Knight」で幕を開けるアルバムは、イングリッシュ・フォーク的な要素を取り込みながらも、プログレッシブな展開をみせます。
「I Know What I Like (In Your Wardrobe)」はポップ・ロック寄りの楽曲で、アルバムの中では最もアクセシブルな作品です。しかし、その内部にはプログレッシブな要素が隠されています。
「The Battle of Lochnagar」「Aisle of Plenty」「Firth of Fifth」「More Fool Me」「The Lamia」「Twilight Alley」「Pigs (Three Different Ones)」など、各楽曲がそれぞれに個性を持ちながら、全体として統一された世界観を構築しています。
オリジナル盤の特徴¶
Charisma UK盤について¶
本レビューで取り上げるCharisma UK盤は、1973年11月のオリジナル・リリース盤です。このプレッシングは、Genesisレコーディングの音質を最も忠実に再現しています。
イギリスのCharismaレーベルでのプレッシングは、Virgin Records傘下の高品質なプレッシング技術を活用しており、ジャケット・アートワークもオリジナルデザインのままです。
ジャケットには、John Pasche(ローリング・ストーンズのロゴでも知られた著名なグラフィック・デザイナー)によるアート・ワークが施されており、イギリスのシュールな街並みが表現されています。
アナログ・マスターの音質¶
1970年代初頭のアナログ・レコーディングのピーク期に制作されたこのアルバムは、マスターテープの音質が極めて高いことで知られています。
Genesisのレコーディング・エンジニアリングのレベルの高さが、このアルバムの全体を通じて貫かれており、各楽器のセパレーションが明確です。
レコードで聴く魅力¶
ヴァイナルの温かみ¶
デジタル・フォーマットで聴く場合、細かなディテールが強調されすぎることがあります。しかし、レコード再生では、このアルバムの本来の音質——つまり、温かみを帯びた豊かなアナログサウンド——を体験することができます。
楽曲構成の理解¶
このアルバムは、Side A・Side Bそれぞれで異なるテーマを持つように構成されています。Genesisが意図した流れに従って聴くことで、アルバムの真の価値が見えてきます。
レコード鑑賞では、この流れを自然に追体験することができます。
マスターの深い解像度¶
1973年のアナログ・レコーディングが持つダイナミック・レンジは、現代のデジタル・マスタリングでもなかなか再現できません。レコード再生では、その深さと広がりを実感できます。
キーボード・サウンドの層の厚さ、ドラムの音圧、ガブリエルのボーカルの表情——すべてが一段と立体的に聴こえます。
収集家向けの情報¶
グレーディング評価¶
Charisma UK盤のコンディションは、保存状態によって大きく左右されます。音溝の状態を確認し、ジャケットのダメージをチェックする必要があります。
Mint Condition(新品同然)のコピーは稀であり、Very Good(非常に良好)以上を狙うことをお勧めします。
レコード用語の理解¶
オリジナル・プレッシング、プレス・マーク、マトリックス・ナンバーなど、レコード収集における専門用語を理解することで、真正性の確認が可能になります。
まとめ¶
『Selling England by the Pound』は、Genesisの最高傑作であり、プログレッシブ・ロックの歴史に永遠に刻まれる傑作です。
ピーター・ガブリエル期のバンドが到達した芸術的な高さは、このアルバムに集約されています。「Firth of Fifth」と「Cinema Show」という2つの9分超の大曲は、今日のリスナーにおいても、その詩情と複雑性で感動を与えます。
Charisma UK盤のレコードで聴くこのアルバムは、1970年代のロック・ミュージックの本質を理解するための必須の体験です。ヴァイナル・ハント好きなら、このアルバムを見つけたときは、ためらわずに手に入れるべき傑作です。
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