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Soundgarden『Superunknown』- ヘヴィネスと芸術性が融合した最高傑作

Soundgardenの4thアルバム『Superunknown』は、1994年3月にリリースされ、グランジムーブメントの頂点を示す作品として評価されています。「Black Hole Sun」をはじめとする名曲群と、実験的な音楽性が見事に融合した、バンドの最高傑作です。

アルバム概要

『Superunknown』は、SoundgardenがメジャーレーベルのA&M Recordsでリリースした4作目のスタジオアルバムです。前作『Badmotorfinger』(1991)で確立したヘヴィなサウンドをさらに発展させつつ、より複雑な楽曲構造とサイケデリックな要素を取り入れた野心的な作品となりました。プロデューサーには、マイケル・バインホーンとバンド自身がクレジットされています。

バインホーンは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやホール&オーツなど、幅広いジャンルのアーティストを手がけてきたプロデューサーで、彼の手腕により、Soundgardenの生々しいエネルギーと洗練されたプロダクションが両立されています。録音は、ミネソタ州のバッド・アニマルズ・スタジオとシアトルのシアトル・スタジオで行われ、約4ヶ月という長期間をかけて丁寧に制作されました。

アルバムタイトルの『Superunknown』は、フロントマンのクリス・コーネルが作った造語で、未知のもの、あるいは理解を超えたものという意味が込められています。この言葉が示すように、アルバムは既存のロックの枠組みを超えた実験的なアプローチを取りながらも、商業的な成功も収めるという稀有なバランスを達成しました。

リリース直後からビルボードチャートの初登場1位を獲得し、最終的に500万枚以上を売り上げました。グラミー賞では2部門を受賞し、批評家からも絶賛されるなど、芸術性と商業性を両立した90年代ロックの金字塔となっています。Nirvanaの『In Utero』やPearl Jamの『Vs.』と並び、グランジの成熟期を代表する作品と言えるでしょう。

収録曲の聴きどころ

アルバムは「Let Me Drown」で幕を開けます。この曲は変則的なチューニングとヘヴィなリフが特徴で、クリス・コーネルの力強いヴォーカルが曲全体を引っ張ります。4分半を超える長尺の楽曲ですが、中盤のブレイクダウンから再び盛り上がる構成は、アルバム全体のドラマティックな展開を予感させます。

「My Wave」は、キム・タイールの印象的なギターリフとベン・シェパードのグルーヴィーなベースラインが際立つ楽曲です。「Don't come over here and piss on my gate」という挑発的な歌詞は、個人の境界を尊重することの重要性を訴えており、バンドの自立したスタンスを表現しています。

「Fell on Black Days」は、アルバムからの最初のシングルで、憂鬱なムードと美しいメロディが共存する名曲です。クリス・コーネルの感情的なヴォーカルパフォーマンスは、彼のキャリアの中でも特に印象的なもののひとつで、孤独と喪失のテーマが心に響きます。ドラマーのマット・キャメロンの繊細なビートも、曲の雰囲気を支える重要な要素です。

「Mailman」は、パラノイアと被害妄想をテーマにした激しい楽曲で、7/4拍子という変則的なリズムが特徴です。キム・タイールのワウペダルを効かせたギターサウンドと、クリスの叫びに近いヴォーカルが、狂気じみた雰囲気を作り出しています。

「Superunknown」は、タイトル曲でありながらシングルカットされなかった隠れた名曲です。ダウンチューニングされた重厚なサウンドと、サイケデリックなギターワークが印象的で、歌詞は実存的な不安と探求をテーマにしています。中盤のブレイクダウンセクションは、まるで音の深淵に落ちていくような感覚を与えます。

「Black Hole Sun」は、アルバムを代表する楽曲であり、Soundgardenの最も有名な曲のひとつです。ダークでシュールな歌詞と、美しくもどこか不穏なメロディが特徴で、ミュージックビデオも話題となりました。アコースティックギターとエレクトリックギターが絡み合うアレンジは、バンドの音楽的成熟を示しています。

「Spoonman」は、シアトルのストリートパフォーマーであるアーティス・ザ・スプーンマンに捧げられた曲で、実際に彼がスプーンを使ったパーカッションで参加しています。グラミー賞でBest Hard Rock Performanceを受賞したこの曲は、キャッチーなリフとパワフルなエネルギーが魅力です。

「Limo Wreck」はクリス・コーネルとベン・シェパードの共作で、ヘヴィメタルとパンクが融合したような攻撃的なサウンドが特徴です。「4th of July」は、変則的な15/8拍子で書かれた実験的な楽曲で、バンドの音楽的挑戦を象徴しています。アルバムを締めくくる「Like Suicide」は、8分近い長尺のバラードで、クリスの繊細なヴォーカルとアコースティックギターが美しい余韻を残します。

オリジナル盤の特徴

オリジナルのA&M Records盤『Superunknown』は、1994年3月8日にリリースされました。カタログナンバーは0540-2(CD)、A&M 0540(LP)です。ヴァイナル版は2枚組で、ゲートフォールドジャケット仕様となっています。70分を超える収録時間のため、LPでは各面に3〜4曲ずつ配分され、音質を保つための配慮がなされています。

ジャケットアートワークは、アーティストのケビン・ウェスタンバーグが撮影したモノクロ写真で、抽象的でありながらも力強いビジュアルです。シンプルながらインパクトのあるデザインは、アルバムの持つ重厚さと神秘性を視覚化しています。内袋には歌詞とバンド写真が印刷され、各メンバーのクレジットも詳細に記載されています。

マトリクスエリアには「Sterling Sound」の刻印が見られることが多く、これはニューヨークの名門マスタリングスタジオでカッティングされたことを示しています。初期プレスは、特に低音域の再現性が高く、ヘヴィなリフやベースラインがしっかりと聞こえるのが特徴です。ダウンチューニングされたギターサウンドを正確に再現するためには、高品質なプレスが不可欠です。

レコード用語集で解説されているように、2枚組アルバムの場合、各面の収録時間が短くなるため、グルーブの幅を広く取ることができ、音質的に有利になります。『Superunknown』のオリジナル盤は、この利点を最大限に活かした高音質プレスとして知られています。

2014年には20周年記念盤がリリースされ、オリジナルアルバムに加えて未発表曲やデモ音源が収録されました。2016年にはChris Cornellの監修による高音質リマスター盤もリリースされていますが、音質面では初期プレスのオリジナル盤が最も評価が高いという意見が多数です。

レコードで聴く魅力

『Superunknown』をレコードで聴く最大の魅力は、バンドの持つヘヴィネスと音楽的な複雑さを余すことなく体験できることです。キム・タイールとクリス・コーネルの2本のギターが織りなす重厚なサウンドは、アナログ盤で聴くと各ギターの位置関係や音色の違いが明瞭に聞こえ、立体的な音場が形成されます。

クリス・コーネルのヴォーカルは、4オクターブにも及ぶ広い音域を持ち、繊細なウィスパーから力強いシャウトまで自在に操ります。アナログ盤で聴くと、この声の多様性がより生々しく感じられ、「Black Hole Sun」のような静かな曲では声の温かみが、「Mailman」のような激しい曲では叫びの迫力が際立ちます。

ベン・シェパードのベースラインは、デジタル版ではしばしば埋もれがちですが、良質なアナログプレスでは楽曲の土台としての存在感が明確になります。「My Wave」や「Spoonman」のようなグルーヴィーな曲では、ベースのうねりが体に響き、音楽全体のダイナミクスを支えていることが実感できます。

マット・キャメロンのドラムは、テクニカルでありながらもパワフルで、変則的な拍子やポリリズムを巧みに操ります。アナログ盤で聴くと、スネアの「パン」という乾いた音、タムの「ドン」という深い音、シンバルの「シャーン」という金属的な響き、これらが空間的に配置されて聞こえることで、ドラムキット全体の存在感が増します。

2枚組ヴァイナルという物理的な形態も、聴取体験に影響を与えます。各サイドが15〜20分程度で区切られることで、アルバムの長大な流れが自然に分節化され、それぞれのセクションを集中して聴くことができます。盤を裏返す行為や、次のレコードに交換する時間が、音楽と向き合うための間を提供してくれるのです。

Soundgardenというバンドの音楽的頂点を、オリジナルのアナログフォーマットで聴くことは、90年代ロックシーンの豊かさを再発見することにつながります。レコード購入ガイドも参考にしながら、グランジの名盤コレクションを充実させていきましょう。

まとめ

Soundgardenの『Superunknown』は、グランジムーブメントの中でも特に音楽的野心と実験性が際立った作品です。ヘヴィなリフとサイケデリックな要素、変則的なリズムとキャッチーなメロディ、これらすべてが高度にバランスされたこのアルバムは、90年代ロックの最高到達点のひとつと言えるでしょう。

A&M Recordsオリジナル盤のヴァイナルは、この複雑で重厚な音楽を最も豊かに再現できるメディアです。2枚組という形態による音質の向上、ダイナミックレンジの広さ、そして何よりも「Black Hole Sun」「Spoonman」「Fell on Black Days」といった名曲を、バンドが意図した形で体験できることが最大の価値です。

このアルバムを起点に、NirvanaPearl Jamといった同時代のシアトルバンド、あるいはSoundgardenの他のアルバムへと掘り下げていくのもおすすめです。グランジというムーブメントの多様性と奥深さが、あなたを待っています。


Digital & Analog in Harmony.

テクノロジーとカルチャーの交差点から、共鳴を生み出す。Harmonic Society は、アナログの温もりとデジタルの可能性を掛け合わせ、音楽と文化の新しい体験を届けています。姉妹サイト Harmonic Society Philosophy では古代から現代までの哲学を、Post Web3 ではWeb3・ブロックチェーンの専門分析を発信しています。